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映画 太陽の子の美しさと13回めの月命日

昨日までの雨模様の天気とは一変、雲が勢いよく流れる晴れやかな空。

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映画 太陽の子が全米で上映されることになったのを喜んでるのかな(^^)と思わせられる13回めの月命日の空でした。

そんな日に太陽の子を鑑賞してきました。2度目です。
今回は黒崎監督がインタビューでおっしゃっていることを意識しながらスクリーンで味わいたいなと思って、せっかくなので月命日に行きました。

戦争映画のトーンではなく、日々をどう生きているのか?
悲惨な人たちの生活ではない、当時の京都の美しい日常を生きようとしている人たちを描く。美しい映画にしたかった。

この『太陽の子』という映画は、太平洋戦争末期に存在した「F研究」と呼ばれる“日本の原爆開発”。その事実をベースに描かれた“科学と戦争”、“戦時下での人々の暮らしや心”を、若者たちの葛藤しながらも懸命に生きたエネルギーを描いた作品です。⇒映画太陽の子公式サイト

私は戦争映画がダメで、観たあと1ヵ月ぐらいは脳裏に焼き付いた悲惨なシーンがフラッシュバックして寝られなくなってしまうのです。時代劇は大丈夫なのですが戦争映画が近代だからかもしれません。
でも、この『太陽の子』と『永遠の0』は大丈夫なのです。そんな作品に春馬がキャスティングされていることも私にとっては大きな意味があるようにも思います。

ノベライズも読んで、主役である石村修視点の理解も深まったので、私の心に響いたことを綴らせて頂きますね。

美しい日常を表現した色彩

黒崎監督のお話でアメリカのカラリスト、アロン・ピーク氏とのセッションの前にひとつの質問があったそうです。
『緑が好きか?それとも紫が好きか?』
監督は映画の中でも原子が作り出す色として緑をとりあげているので、グリーンとお答えになったとのこと。
まさに、その答えが反映された映像になっているなと感じました。

裕之が帰ってくるこの山門のシーン、とにかく美しいです。

◤#映画太陽の子◢ 📸場面写真📸 戦地で負った心の傷を見せない裕之。 故郷への帰郷で思うのは、家族や大切な人。 #太陽の子 #8月6日公開🎬 #柳楽優弥 #有村架純 #三浦春馬 #黒崎博 監督・脚本

Posted by 映画 太陽の子 on Wednesday, July 21, 2021

生き生きと新緑の色に近い生命力の溢れる緑の樹々。
それに対比するかのように際立つ軍服のベージュ。
裕之の歩く姿勢の美しさをさらに浮き立たせるようなシーンでした。

これは予想ですが、アロン氏が尋ねたのは画の色を整えるためのアンダートーンの色ではないかと思うのです。それによって画面全体から伝わる印象が違ってくるので、監督が好きでイメージしている映像に寄せようとしたのではないかと。パーソナルカラー診断で、有彩色をイエローベースかブルーベースの2つに分けますが、それに近い分類じゃないかなと思います。実際、有名な絵画も自然とベースカラーが統一されていますから、訴える力が強くなりますね。

それを意識してみると、とにかく随所にある緑が生き生きとした色になっていました。1回めに観たときは全体で捉えているので目立たなかったのですがアンテナをはると目が自然と探すものですね(笑)

このシーンもそうですよね。遠くに生い茂る緑が生き生きと。

石村家の玄関先でも、比叡山でも、緑が映えていました。
戦時下でも自然は形を変えることなく生きていて、そんな日常の美しさが平和であることの大切さを感じさせてくれました。

緑だけでなく、海や空のシーンもベースに緑が入っているなと思います。

空も海も緑みのあるセルリアンブルーがかっていますよね。

こういう緑色のない場面でも、木の色のベースが黄緑がかっていて、温かみのある映像になっているのかなとも感じました。

まさに監督のおっしゃる通り、本当に美しい映画だなと思います。
蝉の声や波の音、そして効果的な音楽も素晴らしい。映画に対するすべてのクリエイティビティが一致すると、派手さがなくてもスッと心に入ってくる。こうした部分まで考えて映画を観たことありませんでしたが、とてもよい勉強にもなりました。

そして、こんな風に映画の映像を味わうことができるようになったのも、春馬のおかげです。春馬のヴィジュアルがバランスがとれててあまりにも美しいのでそれをもっと感じようと画面全体をじっくりと見るようになりました。予算が少なかった天外者でも、田中監督のセンスがうかがえますし、真夜中の五分前にいたっては情緒的な独特の雰囲気があります。そういった発見ができるようになって、ここ1年で自分のセンスを多少は磨くことができたのかもしれません。なので1年前のTVドラマの太陽の子とは全く違う印象となりました。


太陽と影、お国のためと人の幸せ、さまざまな相反する対比

ノベライズに裕之を形容する言葉として“太陽のような”と何度かありました。企画段階でキャストが決まったから、小説は当て書きなのかもしれませんが、とにかく春馬そのままが描かれているような錯覚に陥ります。

そんな春馬らしい、周囲をも照らすような裕之の笑顔や快活な声。

. ◤#映画太陽の子◢ 📸場面写真📸 ⁡ 笑顔の裏にあふれる 修と世津への優しい想い ⁡ #太陽の子 #8月6日公開🎬 #柳楽優弥 #有村架純 #三浦春馬 #黒崎博 監督・脚本

Posted by 映画 太陽の子 on Sunday, July 18, 2021

しかし本当の気持ちはそうじゃなく、戦場で目の当たりにした恐怖や不安で押しつぶされそうな心。それを表現していたのがこのキーヴィジュアルの裕之の表情だったんだと映画を観て思いました。

映画の中でこの表情が2回出てくるので、裕之の影の深さに胸を締め付けられました。太陽って光が強いほど、影の色が濃く、しかも影の部分は冷たいですよね。以前にメンターから、”光が当たっている人ほど影も暗いんだよ”と教えてもらいましたが、その複雑で繊細な対比もしっかりと表情で演じてくれるので心情がしっかりと伝わってきました。

ただ、現実のこともちょっと考えてしまうのが、この映画の辛いところでしょうか…。

修のさまざまな葛藤も柳楽君ならではの目が印象的でした。一瞬、HOKUSAIとだぶるようなシーンもありましたが、それだけ柳楽君の持ち味を生かすとそうなるのかもしれませんね。

そして修と裕之の、性格の違い、世津に対する態度、母親であるフミに対する接し方、それぞれが選んだ進む道、すべての対比が『戦争と科学』という大きなテーマの対比とも相まって、映画全体から伝わる問いかけになっているように思いました。

あと、印象的だったのが、裕之を戦場へ送り出すときのフミの態度。
これも相反する2つの感情が行き来していたように思います。

言葉をかけた裕之を腕を伸ばして抱きしめようとするのですが、すぐに手を下ろし、愛おしそうに顔を見つめながら、その形のよい耳を触ります。
赤ちゃんを抱いて、その頭や頬、耳を撫でて愛でているような、そんな風にも感じてしまうほどの母親の愛情。感情のままに抱きしめることを思いとどまり、軍人として送り出さなければいけないという母親の辛さが伝わってきました。
裕之も一瞬、子供に還ったような顔つきをしますが、キリッとして『では、行ってまいります!』と敬礼し、踵を返して歩いていきます。

こんな思いをした親子が、当時はどれだけいたのだろうか…。
そう思うと本当に2度とは繰り返してはいけないことだと思います。
そして、フミ役の田中裕子さんの演技の素晴らしさに圧倒されました。

心に残る3名の青春模様

大きなテーマや大切なメッセージはあるものの、私が心に残ったのは、修・裕之・世津のシーンで、3つあります。

まず、眠っている修の顔をじっと見つめる世津。この行動自体、世津が修のことを好きなのは分かりそうなものですが、違う方向に思い込んでいる修は気づかない(笑)
このあとの修が夢中になって原子の話をするのを、真剣に聴く世津というシーンも好きです。修の話し方は、甥が好きなものを話すときにそっくりで、すごくリアルに感じました。こういう青春ともいえる日常の一コマが際立ちました。

そして、縁側で3人が手を取り合うシーン。


世津が「裕之さんが無事に帰ってくること!」と手をぎゅっと握り、「怪我なんかしたら承知しませんよ!」と言われて、驚く裕之。
「わかりましたか?」と言われ、あっけにとられていた裕之が「は…、はい。」というこの表情がとても好きです。目がまん丸になってますよね。

もちろん、その後の「いっぱい、未来の話しよ。」というセリフ。
落ちついていて穏やかで、自分がこれから行うことも未来のためと確信できたからこそ、こんな風に言えるのかなと感じました。

そして何よりも、一番最後のシーン。
美しい情景の中、爽やかでエネルギーが溢れ、3人の関係性も性格もしっかりと感じられました。この時の裕之らしい話し方と笑い声がいつまでも耳に残っています。このシーンを映画に入れてくれた黒崎監督に心からありがとうと言いたいです。


作品の中の新しい春馬に出逢えるのは、この映画が最後になってしまいますが、この1年間で彼を見続けてきたからこそ気づくことができる感動や想いがたくさんありました。こういう意義のある作品に出てくれたことも嬉しいし、監督やプロデューサーが公の場で春馬を悼んでくれたことも、よい現場だったことがイメージできて嬉しかったです。

実は私、まだ観ていない作品がいくつかあります。もったいなくて急いで観れないというか…。
でもこれから、この映画がそうだったように自分自身の感じ方も違っていくと思うので、さらに新しい春馬を発見できるのかもしれませんね。

これからも大切にしたいと思います。



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