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2ヶ月

あと1週間もすれば、ここに来て2ヶ月になる。
‘’高校卒業後、上京”
字面を見れば自ら人生を切り拓こうとしているかのように見えるけれど、そうじゃない。ここ2ヶ月、私は、本当に遣る瀬無い毎日を過ごしている。まるでただ1日1日をただ捨て続けているみたいに。

毎朝、国立駅から超満員の中央線に乗って新宿に向かう。東京という街は、そう甘くなくて、単語帳を出そうとトートバッグの中をあさる私を容赦なく中年サラリーマンの舌打ちと茶髪OLの睨みが襲う。私と一緒に満員電車に揺られる人達は、みんな必死で虚ろな目をしている。大阪よりも、赤シートをかざしている学生、新聞を読んでるサラリーマンが多い。年配の人でさえ、韓国語や会計を勉強している。きっとこの場所では、こうでもしないと生き残れないんだと思う。硬水を飲み続けているようなストレスが、ある。

新宿駅の西口を出て、予備校に向かう。この街の朝特有の気怠げな雰囲気の中、人の流れと多さに酔いそうになる。梅田や難波の比じゃない。

予備校に着く。挨拶をしても返ってこないとわかりながら、警備員のおっちゃんにおはようございますと言う。当然無視。(懲りずに毎日言いまくってたら最近返してくれるようになった。)ここからが恐怖との戦いになる。
1限の授業が行われる教室に着く。教室はもう半分ほど埋まっていて、金髪ギャルも赤髪グラサン男も、みんな、すごい勢いで勉強している。ボロボロの参考書を見ている。当たり前だ。浪人生なのだから。でも、情けない話、正直、ここで私はすごく怖くなる。言いようのない不安に襲われる。その場から逃げ出したくなる。逃げ出してしまったこともある。それでもイヤホンをして席に向かう。その席に座るまでが、今の私には本当にキツい。マラソンのスタートを切る前みたいな感覚。情けないね。

こんなはずじゃなかったって、最近ずっと思う。
都庁の辺りを散歩していると、高層ビルたちが「ほらあなたが夢見た大都市生活ですよ、このキラキラしたビルの中では何百人ものキャリアが動いています。いつまでしょうもない受験に費やすんですか?もう20歳ですよ?」と私を煽っているように感じる。
小学生の頃夢見たキラキラキャリアウーマン。なれると信じて疑わなかった。いつからおかしくなっちゃったんだろうね。そんな人がいっぱいいるんだろうね、このビルたちの中には。

正直ボロボロになっている。
予復習も思うように進まない。処理速度も人より遅い。
きょどって質問にもいけない。人が怖い。標準語が怖い。もう辞めたい。正直もうやりたくない。逃げたい。
オーストラリアのブルーベリー農場で働きたい。

でも夢があるな、約束もあるな
記者になる夢はここにきてより強くなった
どうしようもない環境に置かれている人たちの手掛かりになるものを作りたい
南海の先生たちに合格を伝えなきゃいけないし、
合格しないと親孝行がどうこうなんて言える資格ないし
友達とバンドを組む約束もした
早慶戦も行かなきゃやし、ディズニーの約束もした
江ノ電も乗らなあかんし、二十歳のお祝いもしなきゃ

夢を追いかけないで、目標を持たないで、このまちでは生きていけないと思う。諦めたり妥協した瞬間に本当に死に向かってしまうと感じる。このまちは。
自分がこれからどう生きていくのかを考えざるを得ない日々だ。
気が遠くなるけど、怖いけれど、生き延びないと。


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