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私がフランス好きな理由

気がついたらフランス語を専攻し、フランスに何度も行き留学までした私。日本でもアンスティチュに毎週通い、フランスかぶれになっていた。今は昔ほどではないけど、たまにフランス語のラジオを聴いたり、気になるニュースを見つけるとフランス語の新聞の元ネタを見てたりする。フランスと聞くと興味が持てる。このフランス好きの理由は何?自分でもよくわからないが、20年以上考えてきた壮大すぎるテーマについて書いてみたい。

理由その1 単純に臭い

とにかくフランスにはあらゆる匂いがある。
パリで歩道を見ると…見事な犬のフンやらいろいろゴミが落ちていて呆れるほど汚いし、地下鉄もあまり綺麗じゃない。特に地下鉄の排気口からはすえた匂いというのか、確かパリの地下鉄開通は1900年と記憶しているが100年という長い年月の間に、蓄積された体臭や香水、スパイス、糞尿…?あらゆる臭いがする。
食べ物も例えばブルーチーズは独特の匂いがするし、それぞれがそれぞれの匂いがある。
私の動物のカンがそのクサさというのかフェロモンみたいなものを嗅ぎつけて癖になったのか。
匂いは良い匂いもあれば嫌な臭いもあり、物事の良い面と悪い面の両面を感じさせるものでもある。
短所あってこその長所で、一見嫌なものの中にも人の心を捉えて忘れさせない不思議な魅力がある。

理由その2 人間臭い

文明国らしくそれなりに機械はあるけど、いくつかあると必ず一つは壊れている(気がする)。電話機、自販機、エスカレーター、メトロの改札…。壊れていることを恥じる様子もなく、単に故障中と表示されているだけ。順調に動いていた機械が不条理にも途中で壊れることもあって、人はうまくいかないことに悪態をつく。
merde(クソッ)、chiant(ムカつく)、putain(淫売)、ça m’énerve(イライラする)…など悪態の表現は多彩。
こういうとき、フランス人はあんまり感情を隠さない。ある意味素直。
もちろん交渉するし、理路整然とめんどくさくジタバタする。意外なほど粘り強い。
日本だと人の前でイライラしてることやうまくいかないことは出さないし、あまり状況を説明したり話し合ったりしないまま自分の要求が受け入れられないと一方的にキレて終わる場合が多いけど、フランスでは何もなかったかのようにすることはあまり価値がないみたい。そんなところには変なプライドは発揮しない。
逆に雄弁やウィットの見せ所とばかり、張り切って自分なりの意見を押し倒す。要は正しいか間違っているかは別として、自分の信じる主張を堂々と理路整然とする。ドタバタ劇には色んな人が関与して変な連帯感が生まれる。とにかく言ってみる、やってみる、自分の思ったことはちゃんと言う。もちろん、その分マナーというしつけが厳しいので、その中での最大限で。なんかありのままをみんなが受け入れるような感じで。

理由その3 言葉がクサイ

なんというのかみんな詩人!?で、普通に聞くとキザなんだけど、とても素敵な言葉をかけてくれる。すっと腑に落ちて、心に残る決め台詞をみんな持ってると思う。ゆきずりの相手にも惜しげもなく名言をくれるのがフランス流。と言ってうれしかった言葉がすぐに思い出せないのだが。
フランス語の響きも明るくやさしい。母音の響きが多いのでやはり明るい雰囲気。文法は条件法や虚辞などが独特でこれによりニュアンスやゆらぎが出る。この辺は英語の「〇〇だ」「〇〇しろ」という文句のない断定、議論の余地のない明確さとは一線を画する。

私はフランス語をしゃべる自分が結構好きだ。というのが、日本語では自己主張ができなくて、どちらかというと書き言葉に依存している。喋るとき話したいことが多すぎて筋がわからなくなりがち。また、つい人の反応を見てしまうために、言いたいことを取っておきすぎて最後に言えなくなってしまう。そう、日本語って最後に言いたいことの結論が来る。なので、日本語で喋る時は言い負けることが多い。でも、フランス語では話せる言葉が少ない分、表現もシンプルだし、最初にズバッと言いたいことが言える。それに内容の妥協が必要。なので迷いようがない。

こうやって考えると私にとってのフランスの魅力とは光と影、ゆらぎ、複雑さ、人間臭さ…ということになろうか。最近気づいたのは、フランスではみんなありのまま。ありのままの私でいられる場所、サンクチュアリだったのかなと思う。親の干渉が強かった私は日本ではいつもビクビクして、特に人との距離が近い地方都市ではいつどこで誰に見られているかわからない感覚があった。まぁ自意識過剰なのだが…。現実逃避というのもあるかもなぁ。
最近は少しずつ日本でもありのままの自分を出せるようにと思っている。

真剣に生きるってことは人間臭いもので、カッコよくなくても、必死、一生懸命は素敵だと思う。その生きてきた人生が言葉に現れていくだろう。歳を重ねて成熟していくことに対して、もっとオープンになりたい。自分は歳だからダメと思わずに、自分たちを認めてあげないと誰も認めてくれない。特に若さ信仰のあるこの国、日本では。

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