家で今を撮るヒント。

コロナ禍による生活の変化で、できないことが増えていく状況に閉塞感を抱いている人は多いと思います。新型ウイルスが話題に上がった当初は「大丈夫でしょ」と高を括っていたけれど、徐々に明らかになる敵の正体におびえ「最悪を想定して最善をつくす」と唱えながら暮らしています。

写真を撮ることが外出や人と会うことと共にある人たちにとって、この春ほど悩ましいものはなかったでしょう。さほど行動的でない私でさえ「いつも通りやとあかんかな」と二の足を踏む機会は多かったです。

外へ出られない今こそ、と「おうちで撮影」についての記事を頻繁に見かけるようになりました。自宅や近隣で撮るのが日常の私にとってこれらの記事は、紹介されている撮影のコツと自分のそれとを照らし合わせる機会でもありました。

が、記事の内容はどれも大体似通っている。そして、みんな自然光を推す。めっちゃ推す。推しまくり。私の自宅は日当たりがよろしくないのです。そういう記事も次第に読まなくなりました。写真を撮るのにルールはないし、その場の状況にあわせてセットして撮ればいいのだ、と開き直るのも時間の問題でした。

家にあるものを撮って、近所を歩いていて気になるものがあれば撮って、そういうことの繰り返しです。私はこんな撮り方が好きで続けていますが、自分にとってそれが楽しくても、私でない誰かも同じように「楽しい」と感じるとは限りません。「草っていいよ!撮ってみて!どこにでもあるから!」と言いたいところですが、興味持つ人もいれば、「は?」で終わる人もいるし、でもそれで当然なのです。

私はこの春、いつもにも増して花や草を撮っています。「去年もここでこの花が咲いていた」という記憶の呼び戻しが自分の内で無意識に起こり、今年も同じ光景を見られたことに安堵しています。草も同じです。「この草、また出てきた」と分かるとほっとしています。

食糧の買い出しに行ったときのこと。短い時間で済ませなければならず緊張感をもってスーパーへ入り、メモを片手に必要なものをかごに入れていきます。野菜売り場にずらりと並んだアボカドを見たその一瞬で思い出したのは、お手伝いに行っていたシェフの「トマトとアボカドは青いうちに買って家で熟させるほうが美味しい」という決まり文句でした。

画像1

アボカドを一つ買って、台所の窓辺に置きました。作業するとき必ず目に入るので、アボカドがあるうちは一日に何度もシェフの顔が浮かびます。妙なんだけど憎めない。「元気にしてるかな?」と思います。そして「いま、このとき、こんなことがあった」という光景を残しておきたくて写真を撮りました。

Hasselblad 500C/M と Planar 80/2.8 T* とPRO160NS の組み合わせ、プロクサ一枚いれてるかも。出窓も大概暗いので蛍光灯をつけてます。現像とデータ化はフォトカノン戸越銀座店さんにお願いしました。

いつもと違う動きを強いられる環境にあってクリアに見えてきたものがあり、それが困難な状況で写真を撮るときにヒントになっています。このヒントは私だけでなく、誰の内にも湧き起こるんじゃないかなと想像しています。

「いつもと違う」という感情が生まれる仕組みには、過去との比較が必ずついてまわります。コロナ禍のなかで変わっていく「いつも」もあれば、変わらない「いつも」もある。私はどちらの「いつも」も気になれば見える形にしようと写真に残しています。

おそらく今の私にとって、撮る行為は自身の大切するものを確認することと同じ意味なんです。なんや、こういうとこ、前と何にも変わらへんやん。しんどい時でも変わらないことがあるんやな、って写真を通して分かりました。

コロナ、早くどうにかならないかな。できることをこなすのが精いっぱいだけど、今はきっとそれが最優先。いつか撮ったものを見返しながら「こんなとき、あったな」とのたりのたりと珈琲でも飲みたいです。


|||||||||||||||


おまけ
めっちゃ個人的な「 家で撮るときのコツ」

写真には光が必要なので明るい場所が良いにこしたことはないけど、暗い場所なら三脚にレリーズやタイマーを使って撮影するのも良いと思います。三脚がなければ、椅子や机にカメラを置けば固定されるからファインダー覗き放題。自宅だからおかしな体勢でファインダー覗いてても文句言われません。これ、とても強みである。

太陽光は時間帯によって差し込む方向が異なるから、撮るのを急がない被写体の場合は、好みの感じに撮れそうなときにデジタル機材でメモ代わりに一枚撮っておく。データに撮影時刻が残るから、次回はその時刻を参考にセッティング決めて撮影する。一日、二日程度なら大丈夫やと思う。私は外で影を撮影するときにスマートフォンの撮影時刻をメモ代わりにしています。

自宅だと機材を持ち歩かなくて良いので、家にあるカメラとレンズで色々撮り比べるのおすすめ。フィルムで撮ってデジタルで撮ってスマートフォンで撮って、被写体にあった好みの写真を選んでます。たとえフィルムで撮っていても違和感があればピックアップしません。

… でも、ぶっちゃけ一番のコツは「撮るものなければ無理に撮らなくて良いんだもーん」という自覚。はまった時に色々撮るのが楽しいもんだからね。


相変わらず取り留めなく書いて去っていくよ。それでは、また逢う日まで。



この記事が参加している募集