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名作フリーロボゲ「Silver Knights」が復活してた

去年の初めに、個人制作かつ無料、いわゆるフリーゲームのロボゲを集めた記事を公開した。

この中で最有力にも関わらず残念ながら起動不可だった「Silver Knights」、なんと記事を書いた3か月後に10年の時を経て更新され、今の環境でプレイ可能になっていた。

9ヶ月もスルーしてしまって悔しいので色々書いておくことにする。


入手方法

作者がX(旧Twitter)で直接配布している。以下は現時点での最新版だが、更新されたり期限切れになる可能性があるので、作者のアカウントをチェックすること。

公式サイトは停止しており、有志のサポートページも更新されていない。

ゲームジャンルと入力デバイス

3人称後方視点の照準無しチーム対戦アクション。近いとするならガンダムvs.シリーズだろう(後述するがゲームバランスは全然違う)。シナリオモードは製作が始まったばかりで実質通信対戦のための作品だが、COMもかなり強い。

マウスやアナログスティックは未対応というか不要で、キーボードかパッドでの操作になる。パッドのPOVに反応しないのでDualShock3等の場合JoyToKeyがほぼ必須。

通信対戦の環境

さっそく通信対戦をやろうとするも、残念なことに相手を探す方法を見つけられなかった。公式のホスト管制室が停止していてメニューからも選択できなくなっており、有志が立てたDiscordサーバーも招待URLのリンクが切れてしまっていて入れない。

シナリオモードの進捗が上がっているほか、新作の構想もあるとのことなので、マッチングサーバーよりはそちらに期待するべきか。

オリジナリティとゲーム性の両立

なぜ今作をわざわざ単独の記事で取り上げたのかというと、フリーロボゲの中でもオリジナリティとクオリティの両立という点で図抜けているからだ。

メカニックデザインは完全オリジナルで、ボス機体や戦車を除いても15機用意されている。外見はもちろん、武装や挙動も商業作品の露骨なパクリは見当たらない(もちろん影響を受けてそうなものはある)。

ゲームバランスに関しても、前述したように独特なものだ。機動性に対して弾の速度と誘導性が高いので、相手の動きをしっかり見てないと避けることができない。ロボゲではとりあえず離れて飛び回っていれば安全なことが多く、今作のように手癖で動くと被弾するのは珍しいのではないか。

これだけの独自性を持った上で遊べるレベルになっており、かつてはぶらりと行っても対戦できるくらいの人が集まっていた。すなわち、れっきとしたロボゲが一から作られ、無料で配布されていたのである。

オーパーツじみた制作力

ここからは昔話のようになるが、確認できる一番古いバージョンは2002年末に公開されている。ガンダムvsシリーズやバーチャロンフォースなど、チーム戦のロボゲが登場し始めた時期と重なるので、これらに触発されて作られたのかもしれない。

作者のX曰く、Visual C++ 6.0で作られているとのこと。1998年に発売されたので20世紀の開発環境だ。

ReadmeによるとUDX Libraryというライブラリを使っていて、無料ソフトの MetasequoiaからエクスポートしたXファイルを表示させているようだ。この時代のフリーゲームとしては標準的といえるが、今時のBlender+Unityよりも敷居は間違いなく高かった。

特に、人型の機体にモーション付けしてゲームに取り込むのは当時の無料ツールでは不可能なはず。わざわざアニメーション制作ツールから自作したようで、その根気は真似できる気がしない。

他にも通信対戦のネットコード等、機能機能を一つ一つを自分で作ったりライブラリを拾ってきて繋げたりしなければならず、半ばオーサリングと化した現代のゲーム製作とはスタートラインに立つまでの工数が段違いだろう。

さらに、効果音の作成やWebサイトの運営に20人の有志が名を連ねており、かかったエネルギーの総量がうかがい知れる。こうなるとフリーゲームというよりは無料配布の同人ゲーというべきかもしれない。

そして当時と今の違いとして、開発にかかる労力や難易度以上に、ゲームを作ることに対する見返りの違いがあると思う。作品を収益に繋げる筋道が今ほど確立されておらず、個人によるゲーム製作はほぼ趣味の世界だった。その上、ロボゲというのは根強いファンがいる一方、コアなジャンルだ。

Silver Knightsの凄いところは、純粋な技術力というよりも、そんな時代に作りたいものを作った、いわば「制作力」なのではないか。この先動きがあるのかも分からないが、少なくとも一種のオーパーツとして注目すべき作品だとは思う。

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