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古の怪作ロボゲ「電脳戦機バーチャロン マーズ」

前にやりかけのまま放置していたのを思い出したので、最初からもう一度プレイすることにした。(学生時代に2度ほど全クリ済み)

スクショを撮れてるのはPC上のエミュレータでプレイしたから。もちろん正規品のディスクを使っている。

発売から20年、購入からは15年程

電脳戦機バーチャロンシリーズについて

間違いなくマニアックではあるが、「マニアックな作品」として有名で、散々語りつくされているので下に譲る。

マーズを語る上で抑えておきたいのは以下の点。

・基本的にアーケード用(発売当時。今は家庭用でオンライン対戦可能)
・初見では見当もつかない特殊な操作性
・独特な背景設定はあるが、ゲーム中においてストーリーは語られない

つまりは(当時は)ゲーセンの難しくて硬派(?)な対戦ロボゲーだ。

マーズについて

今回紹介する「電脳戦機バーチャロン マーズ」(以下マーズ)は、2003年にPS2用向けに発売された作品で、対戦でなくストーリーに沿って進む「ドラマチック・モード」がメインになっている。完全な新作ではなく前作の「電脳戦機バーチャロン フォース」(以下フォース)を基とした外伝的作品といえるだろう。

実際のところ、総合的な評価は芳しくなくゲームカタログWikiでも「シリーズファンから不評」判定とされている。

正直、私も発売前から「新規を取り込むため家庭用に作る」というコンセプトが安直に見えて、あまり期待していなかったので予想通りといったところだ。そもそも通信対戦未対応という時点で「バーチャロンの最新作」を担うのは無理がある。

だがこの作品は単なる「対戦ゲーのガッカリ移植」に留まらないと思っている。スパロボなど外部出演で異彩を放つようになるきっかけとなった、独特すぎる「怪作」というべきだろう。

ロボが喋ってる?

まず気になるのがこれ。

最初のミッションでいきなり喋る。ボイス有りをアピールしたかったのか

台詞が書いてある吹き出しの元に、顔グラが配置されている。よくある構成だが、顔グラがパイロットではなくVR(ロボット)。イベントシーンでの動きも異様に人間臭いが、別に人格があるロボットとかそういう設定ではなく、あくまでも生身の人間が搭乗する機体だ。

発売当時、バーチャロンシリーズでは小説や設定資料集でパイロットの名前や台詞が書かれることはあっても、公式にビジュアルが描かれることはなかった(PS4版マスターピース発売時に、公式サイトで一部主要キャラのイラストが公開されている)。今作のためにキャラデザを用意できなかったのだろうが、それでもこれはかなり斜め上だろう。

名物キャラのハッター軍曹。初出は小説の「One-Man Rescue」

ただ性質が悪いことに(?)、戦闘中パイロットの精神は機体とリンクしているという設定があるため、この演出はあながち間違いとも言い切れない。スパロボでもこの形式て出演しているため、これが公式ということになる(今後マスターピース準拠のキャラデザで出演する可能性がないわけではないが)。

一部妙なテンションの演技

独特の世界を作っている今作だが、キャラそれぞれの性格設定は結構普通だったりする。ひときわ目立つハッター軍曹も、スーパーロボット系の作品ならよくいる部類だろう。

声優陣も商業作品にふさわしい豪華なもので、黒幕に若本規夫氏、女性オペレーターにゆかな氏と、配役も納得のいくものだ。

耳には残るが、これはある意味いつもの若本節

なのだが、演技がときどき妙なテンションになっていて、やたらと印象に残る。まずナレーションの立木文彦氏。

画だけ見ると北斗の拳みたいだが、落ち着く声

ミッション開始前のタイトルコールをしたり、ボスキャラ登場時に名称を読み上げたりするのだが、非常に声色が穏やか。これからロボットで戦う、という場面であまり見られない演出だ。

防衛対象のトレーラーや基地も、ボイス付きで被害状況を報告してくれるのだが、耐久力が減ってくると見苦しいほど必死に。

この時点では普通だが、瀕死になると…

そして私のお気に入り、MARZ一般隊員(テムジン搭乗)。台詞は普通なのだが、敵を倒した時の「やった!」が凄く爽やかで、当時ツボにはまってしまって「やった」と聞くたびに思い出し笑いをしていた。

右の人。「やった!」は撮れず

なんというか、細かい所に普通のロボゲーにはしないという意志が感じられる。セガらしいというべきかもしれない。

ファンすら置き去りにするシナリオ

始めに書いたように、バーチャロンシリーズには電脳歴という世界観が設定されているものの、ゲーム中ではほとんど描写されず、設定資料集や小説で語られるに留まっていた。

今作はボイス付きのストーリーモードということで、詳しい描写が見られると期待していたファンを待っていたのは、説明なしに出てくる用語を全部予習済みでもついていけないほどの急展開なシナリオ。設定の知識がないプレイヤーには意味不明だろう。

まずプレイヤーが所属するMARZは、スポーツ化したとはいえ戦争をやっている二大陣営DNAとRNAの間で違反行為を取り締まる組織である。煙たがられる立場なのは分かるが、行く先々で襲撃を受け説得も試みず相手を全滅させる。後々のシナリオ的に、黒幕の妨害の結果こうなったとも考えられるが、プレイヤーからすれば完全に説明不足だ。

登場人物の行動も唐突で、特にハッター軍曹の離脱・敵対に関してはフォローを諦めたのか劇中で「ハッター軍曹の造反は不可解だ。(中略)それはそれとして、」とか言われる始末。

なぜ赤いのかも説明なし。勝っても負けても進む

また、設定資料内のみだった重要人物がボイス付きで登場するのは素晴らしいのだが、変に捻った出し方をするので盛り上がるというより困惑した記憶がある。

最終局面で配属される謎のオペレーター。その正体は?

エンディングに至っては、よく分からない長々としたナレーションの後、火星が青くなる。情報化により人類が堕落するっぽいこと言ってたような気がするが、それと火星のテラフォーミングはどう関係するのか、分かったような分からないような終わり方。

ハッピーエンドだとは思う

今作の存在意義

ここまであまり好意的には書いていないが、当時のバーチャロン最新作であるフォースはアーケードの2on2であり、対戦はもちろんのこと単にVRを動かしてみるだけでも敷居は非常に高かった。CPU台のある都心でもないと経験者に乱入される可能性があるし、そもそもCPUがかなり強い。

そういう点では、強力な機体(テムジンばっかだけど)で動きの甘い敵機を倒していく本作は、「バーチャロンをやってみたい」という人にはピッタリだったのではないだろうか。(実際、同級生がTWIN操作で練習した結果フォースでも動けるようになっていた)

何より、スパロボで本作の設定が使われていることから、ロボットものとしての掘り下げには成功しており、間違っても黒歴史などではないのは確かだろう。残念ながらバーチャロンシリーズの展開自体が細々としているので本作のようなストーリーメインの作品がまた出るとは思っていないが、万が一リリースされることがあれば購入するつもりだ(十中八九ヘンなゲームになるからイジるけど)

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