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03_中野式除草機から学んだこと

除草で悩んでいたある時、手にとった農業全書にこう書いてありました。
「上農は草を見ずして草を取り、中農は草を見て草を取る、下農は草を見て草取らず」

僕らの活動を照らし合わせてみると、中の下。いや、下の時さえある。

でも、草を見ずして草を取り…とはどうゆうことなのか。
この言葉と出会い試したことが攪拌除草(八反ずり)でした。

①浮いてる小さな草は何?

 当初、田植えから1ヶ月を目処に圃場を攪拌させ濁らせることで光合成を遮断し雑草の生育を鈍らせることが目的でした。従来の除草方法とは目に見えて変化を感じたことを今でも鮮明に覚えています。
 その時、水面に浮かぶ”もやしみたいな何か”に目を配ります。
雑草とわかるのに時間がかかりましたが、今まで抜いてた草ってこんなに小さいんだ?と新しい気づきも発見。

草を抜かずに草を浮かす”
この視点がずっと頭の片隅に残り、除草の方法ではなく本質的な視点を検索してた時に目に止まったのが「中野式除草機(現代農業2017年5月号)」でした。

中野式除草機と除草後のコナギ

②草は小さいうちに取り除く?

 栃木県・茂木町「中野水田除草研究所」の中野英樹(なかの・ひでき)さん。中野式除草機の開発者です。

「草が見えるようになってから除草するのはタイミングが遅い。草が見える前に除草できる方法が中野式除草機です。」一番最初にコンタクトを取った時教えていただいた考えが上記の内容です。
 
詳しい方法はHP等で拝見していただくのが一番だと思います。

ピアノ線を張った専用具を水田で擦りながら、生える前地中に埋まる雑草の赤ちゃんを取り除いていくのが原理となります。一定の深さに埋まる雑草や種を浮かせ、それより深くに埋まる種は発芽させずに地中へ留めておく。
 
●田植えから5-7日後に1回目
●1回目から更に7日後、もう一度施す

たった2回の除草で今まで、6月〜8月まで幾度となく除草してきた苦労がなくなります。

③除草機を実践した結果

 過去4年間、中野式除草機を信用し江田集落で実践を重ねてきました。
最初は半信半疑。不安もありました

中野式除草機の除草結果

結果、見事に雑草の数が減り収穫まで草の生えない圃場が出てきました。
もちろん失敗もあります。年々、半分以上が失敗ですが、半分は成功です。

<成功の秘訣>
(1)中野式除草機の”正しい”使用を守る
(2)畔づくり
(3)毎日の水管理 ※水深5cm以上の深水
(4)除草のタイミング

<失敗の事例>
(1)水管理が粗雑 ※水深5cm以下の浅水
(2)焦りながら中野式をかける
(3)除草のタイミングが遅い ※田植え後10日以降は遅い
 
小さな積み重ねが5年後の今、除草回数1回(1.5回?)まで成長しました。

④草の生えない圃場から学んだこと

左:中野式除草機導入前の圃場 右:中野式除草機導入後の圃場
どちらも同じ時期・圃場・角度から撮影

 現代農業(2017年5月号)で紹介された中野式除草機の使用結果に関する写真。これは何度見ても衝撃的でした。草のない無農薬栽培の圃場、それ以上に美しい田んぼの景色に惚れ惚れしたことを今でも覚えています。 中野式除草機を使い始めた当初の目標は「同じ景色を見ること」草のない圃場を江田集落でも実現するために最初の3年間、とにかく丁寧に施してきました。

使用して4年目の6月、とある疑問が生じます。
「1回目を終えて全く草が生えない圃場に2回目の除草が必要なのか?」

 
正直に中野さんに質問してみました。
 
これから話すことは、中野さんのアドバイスを基に当農園が独自に考察した考えであり、中野式除草機の考え方ではありません。
その点、御留意いただきお読みください。


収穫後の無農薬圃場
中野式除草機を正しく使うと秋まで雑草が生えない

⑤草を全て取り除く必要を考える

 僕らが中野式除草機から学んだ本質的な価値が2つあります。

1. 稲の成長期(最高分けつ期前)に雑草に負けない環境を整える
2. 根の伸長に合わせた除草タイミング

田植え後、大体30日後に最高分けつ期が訪れ、それ以降は根の伸長が減退すると聞きます。その点から逆算すると田植え後21日までに除草を終える事がポイントになるのではと仮説を立てました。

⑥なぜ21日なの?

 除草していると、当たり前ですが足で根が切れますよね(笑)
 
僕は、なるべく根を痛めずに無農薬栽培(除草)できる方法を模索し続けています。その点考慮すると、大凡田植え後21-23日を目処に中野式除草機を終わらせ、田んぼに入る事なく管理を行えたらその後草も生えず根も伸長し最高分けつ期を迎えられます。
 
雑草に負けない稲の生育をお手伝いし、雑草に負けないデットラインを見極める事を中野式除草機から学びました。 
 
丁寧に施したら、その分本当に草が生えてきません。

収穫まで草がなく、収穫後の田んぼがとても美しいのを実証済みです。
 
しかし、草を除くことを頭で思い描きすぎると時間に追われ、焦り除草機の扱いが粗雑になります。掛けたつもりになり、中野式除草機の持つパワーを半分も出せないように感じています。
 
これは、僕らもこの焦りに苦難し失敗した年があるから。
 

⑦失敗も一つの成功(経験)

 中野式除草機は、1年1年の積み重ねが何年後かに成果として表れてきます。失敗も成功のうち。正しい使い方を大前提に、そこに至らない理由や失敗をどう改善していくか。
自分なりに考え、改善する楽しさも中野式除草機の醍醐味です!
 
水の溜めれない圃場で中野式除草機を試しても結果にはつながらないでしょう。田んぼをやる上で大切な”何か”を除草から学ばせてくれるその時間に感謝します。

●全国各地で無農薬栽培のお米が増えること
●家族や仲間がそれを頬張り美味しく楽しく地域の景観が守られていくこと
 
棚田の保全とは違う小さな夢ですが、中野式除草機はそれを叶えてくれると確かな希望を胸に今年も丁寧に除草を心がけたと思います。

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