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『桜の雨』

『桜の雨』

君と帰る日は何故かいつも雨

手を繋ぐこともない 一つの傘に二人で入ることもない

二つの傘を並べて歩くだけ

口数の少ない帰り道 だけど居心地がいい

お互いのことはそんなに知らないけれど一つだけ知ってる

二人とも同じものを抱えていたこと

口に出さなくても言葉にしなくてもわかるんだ

春なのに冷たい空気が支配する世界

そんな中でも桜は咲く 弱々しくも少しずつ咲く

だけど今日も雨が降ってる

小さな桜の花びらが私と君の足元に散る

私は何だかそれが切なかった

強さが全てを動かしているように見えたんだ

雨と共に降る桜を見て君は呟いた

まるで桜の雨だね、と

その時の君の姿はどこか寂しそうだった

今でもあの時の君を覚えているよ

君はあの日を覚えているかな

何年も経ってお互いに別の道を歩いている

だけど私は忘れないよ

二人で歩いた帰り道

春なのに冷たい空気が支配する世界

咲いた桜は雨に濡れている

歩く私の隣に君はいないけど空を見上げながら呟いた

”まるで桜の雨だね”