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『十年前の君へ』

『十年前の君へ』

時間が元に戻ることは無いけれど十年前の君に会いたい。

会って君に伝えたい。

宝物を、心の支えを、愛する人を失った君。

泣いて悲観して苦しみ絶望する君。

辛いだろう。苦しいだろう。悲しいだろう。

あの人のところに行きたいとまで思っているのも知っているよ。

今の君には周りを見ることは難しいかもしれない。

だけどね、君は一人じゃない。

君が気付いていないだけで、君を大切に想ってくれている人達がいるんだ。

君は掌一杯の薬を飲んで、腕や脚には包帯がある。

そうでもしなければ生きていられない。生きることに耐えられない。

それも知っているよ。その気持ちもわかるから否定はしない。

だけど、病院に連れて行ってくれたのは誰だろう。

夜中に君が泣き叫んだ時に声は掛けずとも心配し続けてくれていたのは誰だろう。

自分の時間の全てを君に寄り添うために使ってくれたのは誰だろう。

今は気付けなくてもいいよ。

大丈夫。時が経てば、いつか気付けるから。

君はあの人からの無償の愛に包まれ生きていたから

だから今はあの人を失ったことで自分の心も失ってしまったんだろう。

それでも、君はちゃんと愛されていた。

あの人だけじゃない。君が今は気付いていない人達から。

深く、深く。

大丈夫。君は十年経つと全てを受け入れられるようになるから。

そして気付くから。

一人じゃない。

気付けば次の一歩を踏み出せる。