ハロウィンの夜に


ハロウィンの夜に

 今夜は月が綺麗だ。
 人間たちは何やら浮かれてはしゃいでいるな。
 
 街はかぼちゃで彩られている。
 でっかいやつもいれば小さいヤツもいる。
 
 なぁ、ジャック。
 お前は人気もんだなぁ。
 
 おい、無視か? お前はいつもおしゃべりだったじゃぁないか?
 
 あぁ、お前はジャックじゃないのか。
 
 なぁ、ジャック。
 今年もお前に似たかぼちゃ達が所狭しと並べられてるぜ。
 いいなぁ、お前は。人間たちに好かれてさ。
 
 そういや、ちいせぇ人間どもが昼間に色んな格好してたな。
 魔女に狼男、幽霊なんかもいたな。
 
 そういやぁ見かけなくなったよなぁ。
 昔は魔女が空を飛んではお供のカラスが俺をバカにしやがった。
 こんな綺麗な夜には我慢できなくて狼男は遠吠えを上げてたっけ。
 
 アイツら、どこいったんだろうなぁ。
 昔はこの時期になれば人間に混ざって酒やお菓子に楽しんだもんさ。
 いつからこの日はあいつら人間の為の日になったのかなぁ。
 アイツらと飲んだ酒は美味かったなぁ
 なぁ、ジャック。お前もそう思うだろ?
 
 あ、お前はジャックじゃなかったな。
 俺の頭は藁だらけだからどうもいけねぇ。
 
 あぁ、そうだ。魔女は火炙りに。狼男は銀の弾に、ゴーストはエクソシストに、ゾンビは火葬されちまった。
 
 なんで俺はそんな大事なこと、忘れちまったのかな。
 なぁ、ジャック。お前が偽物のジャックでも構わねぇよ。
 俺の話を聞いてくれ。アイツらを思い出す為に。アイツらを忘れないために。
 
 俺はカカシ。
 畑にたってるだけの能無しさ。頭の中は藁しかないから脳なしか?
 ハハっ、笑えよ。いやお前は笑っているな。そのまま笑って聞いてくれ。酒も用意してやるから…
 
 こうして、孤独なカカシと物言わぬカボチャのランタンのハロウィンは夜を深めていく。



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こちらは朗読用に書いたフリー台本です。
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