サービス提供だけではない ソーシャルワーカーのための「面接技術」Plus Ultra 33
サービス提供だけではない
さて、筆者の「想い」についてはこれくらいにして、ソーシャルワークは「サービス提供」だけではないことは先に述べたとおりである。
それでは、このことについて、事例の面接場面を思い浮かべながら、読者の皆さまだったらどのように答えるか、考えてほしい。
事例は、これまでの事例と同様、架空事例(倫理的配慮の観点から、実際の事例を複数組み合わせて創作した事例)であることを先に述べておきたい。
相談者は、医療ソーシャルワーカーにところにやってきた45歳の男性、Dさんである。
難病の息子の介護を担いながら仕事に励むも「うつ状態」となってしまったようで、「不眠、食欲不振があり」来所された。
また医療ソーシャルワーカー(MSW)の回答は、先に述べたとおり「正解」というわけではなく、あくまで一つの例であることに注意したい。
Dさん 「インターネットで医療相談室のパンフレットを見て、『話を聴いてもらえる』と書いてあったので来ました。最近、あまりよく眠れず、食欲もなく、いろいろと悩んでいるので、ソーシャルワーカーさんに話を聴いてほしいと思っていて…」
MSW 「わかりました。どうぞ、おかけください。ただ、こちらで話を聴かせていただいて、一緒にどういった解決方法があるかを考えることは出来るのですが、お薬を出したり、治療をしたりということはできないので、話を聴かせていただくだけになってしまうかもしれないですがよろしいでしょうか?」
Dさん 「はい、ソーシャルワーカーさんに話を聴いてほしくてきました。」
MSW 「わかりました。精神科にはかかられたことはありますか?もしよければ、お話を伺った後、当院の精神科外来にかかっていただくことも可能ですが、いかがでしょうか?」
Dさん 「はい。精神科にもかかってみたいです。」
MSW 「それでは、先に精神科の予約状況を確認して、本日かかれるようであれば予約をとってきますね。少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
Dさん 「はい。お願いします。」
このようなやり取りがなされ、同日、午後から予約が取れたと仮定したい。
それでは、具体的な面接場面をみていこう。
面接場面① 「原因を知りたい」
MSW 「それでは、お話を聴かせていただきたいと思いますが、あまり眠れなかったり、食欲がないとのことですが、それはいつ頃からなんでしょうか?」
Dさん 「はい、実は今息子が二人いるのですが、下の息子が○○病で、△△病院で診てもらっているんですが、その介護とかでお世話をするために、会社に勤務体系の変更をしてもらって、つい2か月程前から、勤務体系の調整をしやすい部署に変えてもらったんです。以前は、現場というか、動いて汗をかく仕事だったんですが、現在は総務部で、1日中、パソコンの前にいる仕事なんです。今まで取り組んだことのない仕事で、今抱えている仕事を全部終わらせようと思うと、前の担当者だったら数週間で終わると思うんですが、自分だと数か月かかってしまうかもしれないと思ってしまって、そういった仕事のプレッシャーで、仕事をしてない時や休みの日でも1日中仕事のことを考えてしまうんです。」
MSW 「それじゃあ夜もあまりしっかり眠れないんじゃないですか?」
Dさん 「そうなんです。夜寝てるときも仕事のことを考えていて、夢にみたり、夜中に起きちゃったりするんです。それで、あんまりしっかり寝れなくて、食欲もないんです。」
MSW 「今まで、そういったことをどこかで相談されたことはあるんですか?」
Dさん 「実は、昨日違うところでカウンセリングを受けてきたんです。カウンセラーさんに話を聴いてもらって、『あまり無理をしないように』というアドバイスを受けました。あと、心理検査のようなものをしてもらって、自分はうつ病にはなりにくい性格だと言われたんですが、自分でネットとか本とかで調べると、今の自分の状態はうつ病だと思うんです。どうしてこんな状態になってしまったんでしょうか?その原因が知りたいんです。」
MSW 「 ① 」
さて、皆さまだったらどのように①を答えるか、考えてみてほしい。
、、、つづく
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