無敵なコドモ_タイトル_3

無敵な子ども

 子どもの頃は無敵だと思っていた。将来の夢なんでも叶うと思っていた。

 人間は齢を取るにつれて色々な事を考える。
無敵だと思っていた子どもから大人たちの言うこと、社会に出てからの挫折を経て今の自分になる。
 子どもの頃と同じように損得や周りの事など考えずに夢を追いかけられることは稀だろう。

 私が子どもの頃になりたかった職業は図書館司書。
幼児期から母に連れられ図書館に通ううちに、本に囲まれて暮らす仕事に憧れた。少々浮気もしたが、幼児期から高校まで一貫して図書館司書になりたかった。
 しかし大人になるにつれて、図書館司書は正規職としては狭き門である事、専門職として確立している自治体は少ない事、大抵は非常勤職員でそのため給料も少ない事を知った。

 次になりたかったものは作家や編集者など『本』に関わる人だった。
こちらも狭き門といえば狭き門だが、収入は良かった。
 色々調べた結果、編集者になるには学歴が必要だと知ったが勉強嫌い(試験が嫌い、大学もAOで入学)な私には中々の難題であった。
そのうちに編集者ではないが、『編集プロダクション』という存在を知り、そこに潜り込んだ。
 潜り込んだ先では広告制作とライター業務が主な仕事で、私はライター業務についた。
 その編集プロダクションは営業出のワンマン社長が経営しており、ほぼブラックに近かった。そのため、深夜残業は当たり前。また自分の文章力のなさから何度も何度もリテイクをくらい、精神はすり減り何事にもどんどん鈍感になっていった。ああ、これが『大人』になるっていうことなのかと実感した。
 結局、耐えられなくなり自律神経的にも異常をきたしたので退職をした。初めて本当の挫折を味わった。文章を書くことが怖くなり、嫌いになった。
 自分が無敵だと思っていたのに無敵ではなかった。

 だからなのか私は、無敵な子どもから無敵な大人になった人には一種の憧れがある。
子どもの時からの環境や外的・内的要因などをすべてクリアしているからその人は無敵な大人でいられるのだ。おそらくとても努力しているのだと思う。たとえそれが表に出ていなくても。

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