mother’s history No.43 自分の人生を、精一杯生きる
勉強嫌いや、遅刻は困るね。
もっと、自分を律しないと。
読書癖は、何も悪いことではないよ。
ただ、誘惑にに流されるのは、最大の欠点だね。
計画性に目覚めて欲しいなあ。
生まれ持った、本性があるのは否定しないけど、
それを、変更していくのも一つの生き方だと思うな。
11月22日
自分が、もっと背が高かったらな‥‥‥あと十センチいや、五センチでも三センチでもよい。アア‥‥もうそんなこと考えないことにしよう。
店員さんの中で、とても親切な人と、いやな感じのする人がいる。もし、私が店員さんになったら、人にはとても親切にしてあげたい。
ひとりの、乞食の男の人を見た。寒い風の中をぼろをまとって、じっと座っているのだ。この人はこうなる前にもっと、どうにかならなかったのだろうか。
くず拾いでもいい。何か仕事があったはずであろうに。見たところ目も見え、歩けもしたようだったのに。一日、どれくらいのお金が要るのだろうか‥‥‥みんな、こんな人なんか無頓着に歩く。
同じ人間同士なのに。私も、なんてあわれな人だろうと思いながら、横目でちらりと見て歩いてしまった。
かわいそうなあの人、私達人間同じ一生を生きるのに、楽しい一生、苦しい一生、本当にいろいろある。
私は、美人でなく生まれた。そして、そのままで一生を終わるであろう。でも、私はできるだけ楽しく、この人間に与えられた一生を過ごしたい。
私は、偉い人になりたいとも思わない。いや、なり得ない人間だと思う。ても、楽しく優しい思いやりのある人間にはなれるのだ。
人を楽しませ、あたたかくする自分は、この世に生まれ出た甲斐があると言うものだ。
今日一日は、私にとって大へんよい勉強になった。
11月23日
勤労感謝の日で休み。アッという間に過ぎた今日である。
兄ちゃんは、下のおじちゃんどこへ地づきに行き、真っ赤な顔して帰って来た。
今、私は伸ちゃんへのクリスマスプレゼントを思案中だが、中々よさそうなのが見あたらない。毛糸で何か編もうと思っても、
毛糸が高くて、予算超過になってしまう。アア、いいアイデアないかしら。
私は、この冬何か編もうと思う。
大きくなっても、何か編めると言うことはどんなに楽しいだろう。
やれクリスマス、やれ誕生日だ、赤ちゃんの生まれたお祝い、
など、自分で編んだのを贈り物にした場合、喜ばれるのは決まっている。フフフ‥‥。
私は、本当に臆病だ。今(十時二十分)ガタガタとお勝手の方で、音がしたので、「猫だ」と思ってわざわざ大きな音をたてて、下へ降りて行った。(これはなるべく、猫がにげてしまうように)下へおりて、シーッと言ったらニャーとにらんだ。
私は、ゾーッとしてしまい、「母ちゃん、猫や」と言って母を起こした。
猫を、自分で追っ払えないなんて、と思っても、やっぱり怖い。ネコも、ネズミも大の大嫌いだ。魚がかじられなかったので、すーっとした。
明日、英語の試験のために一時間と、数学の宿題に一時間、それから古典の予習に三十分ほどかけねばならない。
今は、十時、三十分すると寝るのが一時になってしまうわけだ。
これも、二日もあった休日を遊んでしまった報いであると考えて、我慢しよう。
11月24日
私は、ずいぶん馬鹿である。本当の大ばかである。
学校で授業中も、家に帰ってからずっと夜九時まで「丘は花ざかり」をむさぼり読んでいた。石坂洋次郎の恋愛小説だ。
もう少しで定期試験があると言うのに、宿題もしないで寝てしまった芳美。
きのう(今は、明日の六時三十分)も、ぜんぜん勉強しなかった芳美は、本当に本当に馬鹿である。
国語の時間、先生は「句や歌は、百作ったら中にいいのが出てくるし、小説は原稿用紙五十枚のを三編作ったら、いいのが出てきます」て、おっしゃった。よし、冬休みには手に豆が出来るほど書くつもりである。娯楽として。
電車の中などで、人物の材料を集めてやろう。それに、名作を一度写しとってからするとよい、と聞いている。一度写してみよう。句なんかもうんと作るんだ。
もう、昨日の事はすんだ事だから、気にかけないで今から、もうれつに勉強するぞ。
芳美ガンバレ。これから、では決心を固めます。
1. 定期試験が終わるまで、ぜったい本をかりて来ないこと。(どんなおもしろそうな本でも)
2. 学校がひけたら、すぐ帰って来て炬燵に入らないで、自分の机に座ること。
3. 他の事を考えないで、眠くなっても寝ないで、十一時までは、絶対起きていること。
4. ノソノソしないで、いっしょうけんめい、サッサッとすること。
絶対、これだけは死んでも守るんだ。
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