見出し画像

新型コロナウイルスと「自発的な協働」

テーマ:「自発的な協働」

今回の小論文のテーマは、「自発的な協働」です。前回は、共有地において「個人の合理的な判断が、集団の非合理になることがる」という「共有地の悲劇」を学びました。今回は、共有地の悲劇が起こらないようにするための対策として、「厳しいルールを設けるべき」と安易に考えるのではなく、「みんなで自発的に協力する」ことができないか考えてみましょう。今回は、「自発的な協働」が起こるための条件に付いて考えて書いてもらいました。

【解答例】

今、新型コロナウイルスの感染者数を減らすために、不要な外出の「自粛」が求められているが、各人が自分なりに解釈していて統一感のない自粛になってしまっているように感じる。それを不安視し、「厳しい罰則のついた法律が必要」と主張する人もいる。しかし、「新型コロナウイルスの感染者の減少」は、ルールによってではなく、自分たちの意志によって協力するという「自発的な協働」によっても達成できるはずだ。今回は新型コロナウイルス感染対策を例として、自発的な協働が成立するための条件を考える。そして私は、「明確な目標を共有すること」、「納得できる方法をとること」、「目標を達成するためのインセンティブがあること」の3つの条件が必要だと考える。

自発的な協働のために最初に必要となるのが「明確な目標の共有」だ。そもそも何のために協働を行うかがわからなければ協力することができない。今、東京をはじめとする日本各地では新型コロナ感染者数がなかなか減少していない状況だが、その原因は「何人まで減らせばいいのか」が明確になっていないことではないだろうか。例えば「新規感染者数を0人にすること」などと明確な目標が設定されれば、各人がどれくらい協力すればいいのかがわかり、協力をしやすくなるだろう。

次に必要なのが、目標を達成するためには何をすればいいのか「納得できる方法」がとられることだ。安倍首相は緊急事態宣言の際に、新型コロナウイするの感染者数を抑えるために「できれば8割、最低でも7割の人との接触を減らしてほしい」と国民に伝えた。しかし、「8割をどうやって計算するのか」や「7割でもいいのか」など、さまざまな混乱を生んでいる。「新規感染者を0人にするために、インフラを除くすべての会社や学校はリモート以外は1カ月禁止し、3人以上が集まることも禁止してようやく8割の接触を減らせる」など、計算の根拠なども公開しつつ、納得できる方法を提示すべきだろう。

最後に必要となるのが、「目標を達成するためのインセンティブがあること」だ。たとえ明確な目標があり、そのためにとるべき方法に納得ができたとしても、その目標を達成したところで個人にとって全くメリットがなければ人は協力しにくい。今回の新型コロナウイルスの場合、「自粛」が長期的に続く場合のデメリットは大きい。中途半端な自粛が続いた場合の損失と、みんなで協力して新規感染者を0人にした場合の損失をそれぞれ提示することで、個人にとってもどちらがいい結果になるのかを判断できるようにすべきだろう。

以上のような3つの条件を揃えることによって、ルールで厳しい制限を設けずとも、個人の判断によって協力するという「自発的な協働」が生じると考える。現在の日本においては、明確な目標や、目標達成のための方法が曖昧な状況であり、インセンティブとしての補償の話ばかりが注目されてしまっている。しかしすべての条件がそろわない限り、一丸となって新型コロナウイルスのような課題を解決することはできないだろう。今後「明確な目標」を定め、そのための「納得できる方法」を提示する必要があると考える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?