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負け合コン

 大学生の頃、合コンに参加した。学生限定の街コンで、会場は新宿と横浜の2ヶ所から選べた。当時の僕は八王子市民。都庁のある新宿までは電車で40分。つまり、八王子は東京都内だが『TOKYO』ではないのだ。僕は、TOKYO在住ハイスペック男の新宿襲来を恐れ、横浜会場を選択。電車で1時間かけて横浜まで向かった。

 蓋を開けてみると、女性は全員友達連れ。しかも、女性の参加料はたった500円(男性は5000円)だったので士気がものすごく低かった。さらに、僕の横に座ったのは身長185㎝で、鼻が高くスッと通った西洋風美男子。コスパ重視の女性陣は、僕には目もくれず、そのYOKOHAMA在住ハイスペック男ばかり見ている。結局彼は、ラブコール(連絡先)を2枚入手したのだが、「また(このイベントに)参加したい」と言っていた。相手を厳選する態勢に入ったようだ。一方で、八王子在住ロースペック男こと僕の戦果はゼロ。わずかな可能性に懸けて連絡先を上限いっぱいの枚数書いたが、誰とも繋がることは無かった。

 1か月後、別の街コンに参加。それは「一人参加限定」というものだったので、前回よりも参加女性のやる気は高いだろうと予測した。会場に到着後、本を読んで待機。しかし、開始時間から20分経っても女性が誰一人来ない。やがて主催者から「女性参加者が全員ドタキャンした」旨を伝えられた。そのとき読んでいた本のタイトルは、『限りある時間の使い方』。ドタキャンした女性参加者たちは、僕の限りある時間を無駄にしたことを何とも思っていないはずだ。

 そのノーゲームを終えて、京王線で帰宅。向かいにはカップルらしき男女二人組がいた。電車が揺れると女の方がバランスを崩し、男の胸元に頭から飛び込む形となった。そして女は、はにかみながら男を見つめた。超かわいい。これぞ胸キュンシーン(なのだろう。恋愛ものは嫉妬してしまうので一切見ていないのだが)。しかし、男はスマホに夢中で、女の方を一瞬たりとも見なかった。女は寂しそうな顔をしていた。超かわいそう。世のパートナーがいる人たちに問いたい。ネットサーフィンで得られる軽薄な情報よりもはるかに貴重なものが身近にあることを忘れてはいないだろうか。持たざる者からの説得力なき提言である。

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