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【エッセイ】ステーキソースは一つにして(泣)

先日、ステーキを食べに行きました。
ステーキというのはたまに無性に食べたくなる魔性の食べ物でしょう。(韻を踏みました)
とてもリーズナブルな、駅に隣接しているチェーン店のようなお店だった気がします。
「ステーキハウス」と冠していましたが、そこはハンバーグも推しているようで私はハンバーグとステーキが合盛りのランチにしました。
欲張りな人が選ぶメニューですね。
しかし値段1000円とそこら。
ハンバーグだけだったら700円代だった気がします。
ありがたいですね、この値段で焼いた肉が頂けるのです。
しかもスープとごはんがおかわり無料。
卓上にはお漬物も鎮座しています。ようしパパ、いっぱい食べちゃうぞ! と一人席に案内されました。今日も今日とてひとりごはんです。

スープバーなる場所でスープを注ぎ、水を飲み干し次の水を注いでいるとなんともうお肉が到着しました。
その日は平日の11時。これから混むのでもう先に焼いていたのでしょうか?
良く言えば効率的。悪く言えば作り置き。ですがそんなのは気にしません。
だって熱せられた鉄板に乗ったお肉はじゅわじゅわと音を立てているからです。
店員さんは「そちらのタレをかけて音が収まったら召し上がり下さい」と丁寧な接客をしてくれました。
紙エプロンをつけてお漬物の隣に置いてあるステーキソースに目を向けます。
そこには
ピリ辛味噌ソース
和風しょうゆソース
玉ねぎおろしソース
ハンバーグソース
と4つのソースが並べられていました。
私は固まりました。
こういうのが、本当に困ってしまう性分なのです。

私は食に関してスタンダードを好みます。
アイスクリームはバニラ。
クレープはチョコバナナ。
お好み焼きは豚玉。
カップラーメンはカップヌードル。
チョコボールはピーナッツ。
ハンバーグとステーキを推しているならハンバーグとステーキの合盛りにします。
例えばよく行く飲食店だったら「このお店のアイスは抹茶が美味しいから抹茶にしよう」と変わり種?を注文出来ます。
ですが初めての店は冒険せず「その店の推している一番スタンダードなもの」を食したいのです。そういう性分なんです。
もう一度ソースをおさらいしましょう。
ピリ辛味噌ソース
和風しょうゆソース
玉ねぎおろしソース
ハンバーグソース
こちらでございます。なお、これは順番も大事です。
左から
ピリ辛味噌ソース
和風しょうゆソース
玉ねぎおろしソース
ハンバーグソース
です。
これはどれがスタンダードなのでしょう?
それを深く考えてしまいました。

固まっていた私ははっと気づきます。
ハンバーグソース、ハンバーグソースがあるじゃないか!
私が頼んだのはハンバーグとステーキの合盛りです。
冷静に考えればハンバーグはこのソースを使い、ステーキは他の三つのどれかを使うのが正しそうです。
私はまず、ハンバーグソースを手に取りました。
仕事というのは小さいタスクから終わらせる。それが出来る社会人の鉄板ムーブなのです。
まずはハンバーグを片付けて、あとでステーキのソースを悩めば良い。
私は藁にもすがる思いでハンバーグソースをハンバーグにかけ、そして絶望しました。
ハンバーグソースの横にはこう書かれていたのです。

ハンバーグソースはステーキにも相性バツグン!

「バツグン!」じゃねえよちくしょう!
だったらその名を変えろ! ハンバーグもステーキも相性バツグンソースにしてくれ!
叫びたくなるのを抑え、私は周りを見渡しました。
情報を得ないと。情報を得ないといけません。
食に関しては自他ともに認める聡明な私です。(自他の他が誰かは知りません)
聡明な私は既に「ステーキソースは和風しょうゆがスタンダードなんじゃないか?」という憶測を立てていたのです。
しかし順番がおかしい。スタンダードなら一番左に和風しょうゆを置くはずなんです。
しょうゆ、味噌、たまねぎ。うん、これが正しい順な気がします。
もしかしたら私のテーブルだけ順番が違うのかも! 私は希望を胸に隣のテーブルに視線をうつしました。希望は絶望へと姿を変えます。隣のテーブルもこの順番だったのです。たまたま私の席だけ味噌ソースが一番左にあったというわけではありませんでした。

どこの席もこの順番だった。スタンダードは一番左に置くべきでは……?

もう限界でした。
私はこのお店の何がスタンダードかを知るすべはありません。
しょうゆ、味噌、たまねぎ。
この中で味噌がスタンダードってあり得るのでしょうか。
例えば地域柄、名古屋あたりでしたら味噌がスタンダードなお店があるかもしれません。
でもお店の内装を見る限りそれが推し出されている様子は無い。
チェックメイト、詰みです。Q.E.D.証明終了。


……ならいっそ。
もう聞いてしまおうか。
こういうのは、自分一人であれこれ作戦会議をするのが楽しいのです。
出来れば人に頼らず自分であれこれ考えるのが。
ですが決まらずに肉を冷ましてしまっては元も子もありません。
「オススメのソースはなんですか」
店員さんにこう聞きましょう。
そうしたら私は、そのスタンダードなソースをステーキにかけて美味しく肉をいただけるのです。
それで解決です。
一人作戦会議はおしまいです。コミュ障をなおしましょう。
私は暇そうにしている店員さんに声をかけ、震える声で店員さんに尋ねました。

「お店のオススメのソースはどれですか?」
「どれもオススメですので、お好みでお選びくださいませ」

えんっ!!!!!(叫びながら鼻血を吹き出す)

店員さんの会釈をほほえみで見送り、私は再びハンバーグソースを手に取り鉄板の上にぶちまけたのでした。
久しぶりに食べたステーキは、とても美味しかったです。
ちょっとしょっぱかったのでごはんおかわりしちゃいました。
ごはん、おかわり自由で良かったな……

ステーキソースは、お願いだから一つにして……


サポートという機能があるのに初めて気づきました。みなさんもそうだと思うのでぜひ私のエッセイで試してよいですよ。お願いします。