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『ザ・クリエイター/創造者』感想

動画配信サービスを複数契約しているため、映画も自宅で観ることが多くなっていたが、この作品は絶対に劇場で観ようと決めていた。
スピンオフにも関わらずSWファンを唸らせた『ローグ・ワン』の監督ギャレス・エドワーズの最新作ということで上映がとても待ち遠しかった。

あらすじ等については既に多くの方が述べられているので、私が強く印象に残った部分だけを好き勝手に記していく。

とにかく強烈なインパクトを受けたのは自爆ロボ。あんなに恐怖心を煽る兵器が他にあるだろうか。本体部分はまるでドラム缶だが人間のような手足が着いている。一見、見た目はユニークである。しかし、このロボットは可動式時限爆弾、敵陣に突入し一瞬で破壊と殺戮を目的としている。

相手方に突入する、自爆するという機能だけを考えれば、ドローンのような飛行型、あるいは車輪で十分ではないのか?
敢えて人間のような手足を着け、人のように走って敵陣に特攻する様は狂気でしかない。しかも、特攻前に指令を下した人間に最後の挨拶までさせるという悪趣味さ。筒状だけなら例え可動式であっても単なる爆弾、機械としか思わないが、そこに手足が着いていると’生き物’と錯覚してしまう。この自爆ロボは会話機能もあり、その動きは非常に人間味を帯びている。思わず情を抱いてしまいそうな仕様にも関わらず、攻撃開始のコマンドは「人間」が「言葉」で下す。嫌でも神風特別攻撃隊を連想させ、とても憂鬱な気分になった。

突撃される側の心理を想像したら更に怖いではないか。
自爆ロボは所詮機会なので自らの意思はない。プログラミングされた通りの動作をしているに過ぎない。
だがしかし、人型ロボットやペット型ロボットに情を抱く人は少なくない。ヒトやペットのような動きが加わるだけで機械相手でも情が湧くのが人間というものだ。その動きに「生命」を感じてしまうからだ。
ミサイルや爆弾には当然ながらその機械から感情を感じ取ることはないが、人型ロボットはあたかもそれ自体が敵への殺意を持って向かってくるように感じる。爆弾を放り込まれるよりもインパクトは強烈だ。何より不気味。

攻撃対象もまたAIではあるが、ヒトのコピーであるため彼らにも感情がある。単なる機械なら破壊のみを目的にすればいい。それをわざわざ人型にして感情にまでダメージを与えようという発想がサイコパス過ぎる。怖い、とにかく怖すぎる。

この自爆ロボの仕様はとにかく狂気でしかない。
だがそれは、それが戦争だからなのだろう。戦争は人間の倫理観を崩壊させる。敵へのダメージを最大限にするため、最悪の方法を思いつくのだろう。まるでゲームのように。

この自爆ロボを通して、人間の内に組み込まれた残忍さや狂気を感じずにはいられなかった。そしてそれは私の内にもきっとあるのだろう…。


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