選択的夫婦別姓に外部性はあるか?

 最近話題の「選択的夫婦別姓」について、経済学の用語を引用した投稿をTwitterで見かけました。

 外部性とは「ある人の意思決定が他人の利益に影響を与えること」です。つまり「選択的夫婦別姓に外部性がない」とは「ある人が結婚後に名乗る姓が何であっても、他人の利益を損ねることはないだろう」と言い換えることができるでしょう。

 私もこの記事を読んで、上記のツイートと同じ感想を持ちました。ただし、一般的に外部性の有無を測るのは困難です。

 例えば、喫煙者であるAさんと喫煙者ではないBさんがいるとします。

 AさんとBさんは同じ職場で働く同僚とします。しばしばAさんは仕事中に喫煙所に向かいます。その間Bさんは一人で働かざるを得ず、製品の納期に間に合わないという事態が発生したとします。その結果、Bさんの業績は評価されなくなってしまいました。これはAさんの喫煙という意思決定がBさんに損害を与えたことになります。これは負の外部性と呼ばれます。ただし、業績評価においてBさんの評価が下げられ、Aさんの評価が上げられれば、外部性は発生しません。

 喫煙者は肺を患いやすいとします。ある日、Aさんは肺の病気で亡くなってしまったとします。他方、Bさんは定期的に貯蓄をし、老後の生活に備えていました。Aさんが若くして亡くなったため、一人当たりの社会保障の給付額が増加しました。これはAさんの喫煙という意思決定がBさんに利益を与えたことになります。これは正の外部性と呼ばれます。ただし、生前Aさんが社会保険料を一切納めていなかった場合、この外部性は発生しません。

 このように、ある意思決定に伴う外部性の有無、及びそれがもたらしたのは損害か利益かは自明ではありません。冒頭の夫婦別姓の選択についても、思いもしない経路を辿った外部性が存在するのかもしれません。

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