見出し画像

その場所に降り立って感じる空気の話

17時半ちょっと過ぎにオフィスを出ていつもと同じようにいつもと同じ路線に乗ろうと地下鉄の改札をくぐった。昨晩は友人たちと大学生の頃みたいに宅飲みで盛り上がり、夜更かしをしてしまった。二日酔いではないけれどお酒を少し飲みすぎたのと寝不足と木曜日まできているというそれぞれがじわじわとゲームのなかの「毒」状態のように地味に効いている気がする。気だるい身体を長いエスカレーターに預け、ぐんぐんホームに向かっていった、今日は早く寝よう、と思いながら。

次の電車は何分後かな?といつもと同じように電光掲示板を見てみる。この時間、だいたいは5分以内に次の電車が来るのだが、「17分後」という表示が見えた。イレギュラー。最悪だ、こんなことなら電車じゃなくてバスとかレンタサイクルで帰ればよかった、と思ったけどまた長いエスカレーターを上って別の交通手段に行くことをしてたらなんだかんだ電車を待っていた方が早いだろうしちょっとそんな元気もないので大人しく待つか、と思ったが、別のアイデアがふとよぎったのでちょうどホームに滑り込んできた街の東側へ向かう、つまり家とは反対方向の電車に乗ってみた。

会社のある駅から3つ先の駅で最寄駅に繋がる別の路線が通っているはずなので、すこし遠回りにはなるが試してみようと思ったのだ。目的の駅の一つ手前には友人が住んでいるので遊びに行ったことがあったが、そこより東のロンドンには行ったことがなかった。3つ先の駅に着いて乗り換え路線まで少しあるき、ホームで電車を待っていたのだが、なんだかいつもと景色が違うな、と思った。

もちろん駅が違うので景色が違うのは当たり前なのだが、そういう話ではなく駅にいる人たちの雰囲気とか線路に落ちているゴミの量だとか。オフィスのある駅のまわりは再開発地域の綺麗なエリアでアジア系居住者も多いのだが、そこから3駅ほどでこんなに雰囲気が変わるのかぁ、という印象だった。駅のホームでは東アジア系は僕だけだった。

ロンドンが長い友人に聞いたら、「こわこわ」だよ、とのことだったのでそういうイメージなんだろうな、と思ったし、街に出ず駅の中で少し電車を待ってる間だけでもなんとなくそういう雰囲気は感じ取れた。駅と街は改札で隔てられているので、そこにボーダーはあるものの、街の空気は同じものが流れている。もちろん何があったわけでもないし、その地域についてどうこう語ることはできないが、僕が今日思ったのは実際に行ってみないと感じない空気ってあるよなぁ、ってことだ。

今回たまたまネガティブな話のようになってしまっているけど、これはまったくニュートラルな話である。ネットでなんでも検索したり本や映画やYoutubeでいろいろ見ること学ぶこと追体験することはできるけど、実際に自分がその場で行くことで感じる空気や雰囲気ってのもやっぱりあるよなぁ、っと改めてぼんやり思ったのだ。

まぁ、ありふれた話ではある。しかしありふれた話を体験として実感することは思っているよりは少ない。そして、(ありふれた話だが)旅こそ、そうした別の空気を感じる行動なんだろうけど、そういう非日常だけでなく、日常の中でもたとえば、たまには違う道で遠回りして帰るとか、目的もなく電車に乗ってみるとか、そういう小さなイレギュラーをちょこっと繰り返される日常のスパイスみたいにいれていくと、またその場所その場所での微妙な空気の違いなどが僕たちの何かをもしかしたら刺激してくれるのかもな、と思ったりした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?