大人になれるような気がしていた、思い出の味
子供の頃、辛いカレーが苦手だった。家でお母さんが作るカレーにはいつも自分だけ牛乳を足していたし、CoCo壱番屋のカレーは辛さのレベルは一番下。レトルトを買うときは甘口。
そんなわたしが辛いカレーを食べられるようになったのは、社会人1年目の春のこと。
当時わたしは大阪支店にいて、採用の仕事をしていた。その時の上司が好きだったのが、"インディアンカレー"というカレー屋さんのカレー。よく昼ご飯に食べに行っていて、時々わたしもついて行った。
席について、頼むのは決まってインディアンカレー。すぐにキャベツのピクルスが出てくる。
そしてそのすぐあとに、大皿に盛られたカレー。わたしはいつも、たまごの黄身をトッピングで乗せる。なぜなら、辛いのだ。めちゃくちゃ辛い(全然関係ないけと、"からい"と"つらい"ってなんで同じ漢字なんだろう)。
けれどあの頃のわたしは、この辛いカレーが食べられるようになったら少し、大人になれるような気がしていた。上司の背中に近づけるような気がしていた。単純な、社会人1年目のわたし。
何度か通ううちに少しずつ辛さにも慣れてきたのだけれど(いや、そう思いこもうとしていたのかもしれないけれど)、ほどなくして東京に異動になって、インディアンカレーも遠い存在になった。大阪時代の思い出。
それが、実は意外に身近なところにあったのだ。ということを、Twitterで知った。
東京駅と有楽町のあいだ、TOKIAというビルの地下1階。今日、東京駅に行ったついでに、食べてきた。10年以上ぶりの再会。
そうそう、この顔。
キャベツのピクルスがすぐに出てくるのも大阪と一緒。目の前でご飯にカレーが注がれるのも一緒。たまごも乗せる。
スプーンですくってひとくちめ。あれ?甘い?と思ったのも束の間、やっぱり辛い。とっても辛い。でも、懐かしい味だ。
キャベツのピクルスをあいだに挟みながら、水も飲みながら、辛いなぁ、と言いながら、完食。
あれから10年以上が経って、わたしは何か成長したんだろうか。あの頃追いかけていた先輩たちの背中に、ちょっとは近づけたんだろうか。
初心に戻りたくなったらまた食べにこよう。そう思いながら、帰路についた。
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