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評価をしない評価制度■□下田コラム□■vol.68

「評価をしない評価制度」とはなんとも不思議な言葉ですね。

「評価をしない評価制度」とは、上司が後押ししながら内発的動機づけを促すツールです。

つまり、評価という言葉を使っていますが、部下を「できている・できていない」と判断するためのツールではなく、また、給料を決めるためのツールでもない。

社員が能動的に成長し、能力を高めるための仕掛けといった方がわかりやすいかもしれません。

その仕掛けが人事評価制度に似ているので、「評価をしない評価制度」と言っているのです。

いま、その仕組みをこの分野の第一人者である榎本あつしさんに学び、研究しています。

私は、この仕組みが長期視点で考えたときに会社を発展させる本当に良き仕組みなのではないかと考えるのです。

「人事評価制度あるある」ですが、評価制度を導入したら社員間の関係性が悪くなった。社員のモチベーションが下がったというのがあります。

この原因のひとつに、「上司が適切に評価する能力がない」というのがあります。

これは永遠のテーマです。

そもそも人が人を正しく評価することなど可能なのでしょうか。

結局は、上司の器でしか人を判断することができません。その器が大きければいいですが、現実問題として特に中小企業では、そんなに器の大きな人はいません。

人が人を正しく評価できるという考えを手放す方が正しい選択のような気もします。

また、人は、人から言われたことはなかなか取り組もうとしませんが、自分で決めて自分で気づいたことはやろうとします

「評価をしない評価制度」はこのあたりを解消する制度だと思うのです。

具体的には、どうしても評価者の主観が伴ってしまう点数づけなどの評価を行わず、事実だけをフィードバックします。

その際に、評価をしない代わりに、「パフォーマンス・フィードバック」という応用行動分析学に基づいた手法を用います。

ポイントは、自ら決めた行動に対して、毎日その実行の有無を自らチェックし、見える化していきます。

それを基に、上司とうまくいった点、うまくいかなかった点、改善点などを定期的に話し合っていくのです。

ポイントは、10分~15分といった短時間で構わないので、1週間、2週間などの短い間隔で面談の時間を設けることです。

こうすることで、自らの課題を認識し、動機づけすることができるようになるのです。

評価をしなくてもパフォーマンスは上がるというのは、アメリカでは相当実験されていて、効果も実証されています。

1980年代の古い実験では、道路上の制限速度表示の横に、「昨日の違反者の割合」という看板を出しました。ただ、それだけで違反者の数が激減したのです。

2001年の実験では、配達ドライバーに、パフォーマンス・フィードバックを行ったところ、出発時間が早まったという結果が出ています。
この実験は、ドライバーを2グループにわけました。
出発時刻の管理は、「サインアウトシート」という自己申告のシートで行います。
そして、グループごとの結果を食堂に貼りだしました。(ポイントは個人ではなく、グループ全体の時間です。個人だと評価の要素が強くなるためです)
すると、どちらのグループも出発時間の平均が早くなりました。

このような実験結果がたくさん出ています。

要するに人は、評価をしなくても、数値化して見える化することにより、行動が改善されていくのです。そこに、他人が評価を加えることで、他責の念や、行動を強いられる嫌悪を感じ、抵抗がうまれてきます。特に上司にしっかりと物事を見られる能力がなければなおさらのことです。

会社で必要なことは、評価をすることではなく、成果を出すことだと思います。

成果を求める近道は、評価を手放すことかもしれません。

ご興味ある方は、この本をお読みください。
「評価をしない評価制度」榎本あつし著(アニモ出版)


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