【新生児の生理学】新生児低血糖 その1

 今日の朝カンファは低血糖で入院したHeavy-for-datesの子について。予定日近くの特に問題のない妊娠出産経過で、生後1時間の血糖値が20mg/dL台のため点滴をしている。年度初めなので、基本的な知識の定着を目的に、新生児の血糖維持に関する生理学的な内容を中心に話をした。

 血糖は胎児期には胎盤のグルコース輸送体(GLUT)を介して受動輸送されている。合胞体栄養膜細胞にはには主にGLUT1が発現しており、母体血側(頂端膜)は胎児血側(基底細胞膜)に比べて5倍以上の表面積があり、妊娠中に母体の耐糖能が低下し血糖が上昇しやすいことと合わせて胎児側にグルコースが取り込まれる。合胞体栄養膜細胞はアミノ酸や有機イオン、薬物などの排出を能動輸送で行っており、機能維持を含めてグルコースの一部を利用しながら胎児側に輸送している。一方で、インスリンは胎盤は通過せず、胎盤から輸送されたグルコースに対して胎児自身が反応性に分泌している。
 出生に伴い胎盤からの糖の供給が終了するが、分泌されたインスリンの作用は継続するため、生後1時間を底値として新生児の血糖は低下する。血糖の低下に対して交感神経の活性化や、グルココルチコイドの分泌などにより、反応性にグリコーゲンを分解してグルコースを産生し血糖を維持する(図1)。生後早期のいわゆる一過性低血糖は高インスリン性低血糖であることがわかっており、この時期にはアミノ酸や脂肪の利用が出来ず、グルコースか乳酸/ピルビン酸のような嫌気解糖に関連する物質しかエネルギーとして利用できない。生後2時間以降の血糖維持には糖原性アミノ酸を利用した糖新生や生後8時間以降では脂肪のβ酸化が行われるが、インスリンの作用が残存しているうちはこれらの反応は抑制されてしまうため、新生児のインスリン分泌が抑制されなければ低血糖が遷延または反復するということになる。
 これが新生児の低血糖を考える上での最も基礎的な知識である。

図1

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