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Human|食べること、を学んだマッキー牧元さん

昨日書いた、とんかつの記事が久しぶりに公式フードまとめにピックされ、多くの方に読んでいただきました。ありがとうございます!

そこにもちらっと書いたのですが、とんかつを食べる思考は、タベアルキスト、マッキー牧元さんの食べ方をベースにしています。

前職の食の専門誌「料理王国」で、「名店のファインプレー」「タベアルキストの1週間」という牧元さんの連載を4年ほど担当していたこともあり、取材先の選定、インタビュー方法、原稿をずっと見させていただきました。食べるスペシャリストというべき牧元さんから、現在僕が自然にやっている「食べることで作った人を見つめる」ということを学ばせてもらいました。

①「料理の向こうに人がいる」

牧元さんのタベアルキストとして「料理の向こうに人がいる」ということを掲げていらっしゃいます。これは、本当に今の僕が、食のジャーナリストのはしくれとして料理を食べる大きな理由になっています。

牧元さんと取材を続けていて、すごく感じたのは、ご自身の感性をとても大事にされていること。そこにいたるまでに、かなりの量を食べて、もちろん勉強もされたからできることではあるのですが、それでも必ず取材の初めは「あの時、この料理を食べて、こういう説明をしてもらって、それを私はこう考えるんですが、その点、あなたはどう思いますか?」ということからお話が始まります。

僕にとっては、これがとても勉強になりました。それまでの僕は、お相手の話を聞き出すことばかりしていたのですが、自分のフレームをもって取材をするというのは、文筆家として本来の姿だなと。

それと同時に、料理の作り方を聞くのではなく、なぜこのようなことをしているのか?という質問によって、作った人の真意に迫ろうとする。まさに、「料理の向こうにいる人」を牧元さんは見ているのです。

」に興味が出てきたのはその影響があります。

正直、自分のなかに「おいしいものを食べたい」からレストランに行くことはありません。もちろん、ある一定のおいしさは求めていますし、おいしさがないレストランには行きたいと思いません。それは前提にありながら、その「おいしさ」がどうしてできているのか、ということの方が僕にとっては興味があって、そこを多くの人に伝えて、料理を提供する側のたゆまない研鑽を知ってもらいたいという気持ちが根底にあります。

ですので、「おいしいものを作ろうと鍛錬を続ける人」に僕は興味があって、その人の料理を食べたい、というのが僕がレストランに行く理由です。

②おいしさは料理ができた瞬間から失われていく

これはとんかつの記事にも書いたことですね。寿司とかではほんとうによくいわれていて、写真を撮ってないで食え!みたいなことを良くいわれます。

牧元さんと会食していて気付いたのは、とにかくテーブルに料理が運ばれてきたら、本当にすぐに食べ始めるんです。サービスの方の説明がないうちから。まれに、食べ終わったころに説明がある時があります。

それにも衝撃を受けました。

たいていの人は(その時の僕も)、料理の説明があるまで食べてはいけない、というルールを誰から教えられるのでもなく自分に課していたところがありました。

料理を作った人、そしてそれを提供する人の本意は、できるだけ出来あがってからすぐに食べてもらいたいということです。そのために、オペレーションを組んで1秒でも無駄にしない努力をしています。

それに対してもし本当に食べる側ができることは「おいしかったです」とお礼をすることよりも、本当の敬意とはテーブルに着いたらすぐに食べることなのではないか。牧元さんと食事をご一緒したことで、そう考えるようになりました。

③自腹で料理を食べる

牧元さんは、レコード会社の勤務時代に食べ歩きがきっかけで、退職後にタベアルキストとして文筆業を始められました。

ですので、基本的には自腹で料理を食べてきた方です。これは本当にすごいことです。

いまでこそ、食が良くも悪くもソーシャルな存在になって、SNSのタイムラインをにぎわていますが、20年も前は個人の情報がメディアの情報に太刀打ちできるなんてだれも思っていませんでした。

また、メディアにいると、新しいお店ができるとご招待を受けたりすることもあります。そうすると、どうしても好意的な意見やSNSで紹介したりしなきゃ、というようなことを考えてしまうのが人間です。

そういうことを続けていくと、どうしても「建前の情報」、いわゆるステマであることが透けて見えてしまう。

そういうことをさせないためにも自腹で料理を食べるというのは、本当にフェアで、情報の質を上げることになるんですね。

牧元さんに書いてもらうと嬉しい。そんなことを多くの飲食店従事者の方から聞いていくうちに、僕なりに考えるようになりました。

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ほかにも、料理を文字で表現するときのテクニックとか、牧元さんのクセみたいなものも学ばせてもらったのですが、やっぱり「食べる人の姿勢」ということの方が、自分にとってはとても強く自分のなかに残っています。

料理の向こうにいる人」。そこを見つめることに興味をもつ人が増えてくれたら、飲食業界の地位がもっとあがっていくように思っています。

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明日は「Event」。ポップアップレストランの意味みたいなことを書いてみたいと思います。

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