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Food|良い客であるためにしていること

レストランに行ったら、「あのテーブル、良いお客さんだね」とお店の人に言われたいと思いませんか? 僕は思います(無理矢理話を進めます)。

レストランを使う目的にもよると思いますが、僕の場合は、楽しい時間を過ごしたいと思っているので、料理がおいしいのはもちろんですが、いかに楽しい会話や発見、思いがけず得る知識や視点をたくさんもらいたいと思っています(欲張り)。

それを実現するには食べる場の雰囲気が大事。それは、一緒に食べる相手との共同作業であると同時に、レストランとの共同作業だとも僕は思うのです。共同作業をするためには、レストランに自分(たち)のことを好きになってもらうのが一番いい。

よく「レストランに行ったら、最大限のサービスを受けるためにお店と仲良くなれ」的なことを見ます。それもそうだとは思うのですが、もう少し損得ではない「共同の場づくり」の意識に近いかなと僕自身は思っています。

そこで今回は、「良い客であることは良い場を作ることになる」という仮説を持つ僕が普段のレストランでサービスを受ける際に気をつけていることをお伝えしたいと思います。

①サービスを受けたら「ありがとうございます」という

これはもう当たり前すぎるんですが、サービスを受けたら「ありがとうございます」と言います。

レストランは人と人が生み出す空間です。作る人だけでは成り立たないし、食べる人だけでも成り立たない。もちろん運んだりサービスをする人も必要で、一緒に食べる人の存在も大きいです(もちろんお一人でもいいんですよ)。

人が集まる場所では挨拶や感謝の気持ちを伝えることは、その場を作る繋がりになります。

それに加え、レストランでは基本的に客側はサービスを受ける側であります。感謝の気持ちは、サービスに対して行うもの。そのサービスに気づけない限りは、感謝を伝えられないということでもあります。

感謝の気持ちを伝えるということは「あなた方の心配り気付いてますよ」というこちらからのメッセージでもあると思うのです。つまり「ありがとうございます」は、音楽ライヴのコール・アンド・レスポインスのように、店と客の盛り上がるために欠かせないものなのです。

②必要か不必要か意思をはっきり示す

意思をはっきりと示すことはとても大事です。それは、グラスの水が減っていて「お水をお入れしますか?」と聞かれて、必要か不要かをはっきり意思を示すということももちろんですが、たとえば次の予定があるときなどは、「何時までに退店しないといけません」であったり、接待で利用していれば「料理の説明は短めにお願いします」、空調が強ければ「温度を下げてもらえませんか」といったことについても、店に伝えるということです。

夫婦やパートナー間でもありますよね、「言わないとわからないじゃないか」ということが。それに似ていると思っています。

③おいしいかったら「おいしかったです」とはっきり伝える

おいしかったら「おいしかったです」と伝えるのは当たり前のことですが、意外とこれができていないように思います。

特に食事をしている同士で「おいしいね」ということはあると思うのですが、それに加えて、お皿を下げてもらうときにもサービスの方に向けて「おいしかったです」ときちんと伝えるということが大事です。

サービスの方は、客の様子を逐一キッチンのシェフに伝えています。「反応良かったですよ」「しっかり召し上がっています」など、客の様子から推察して伝えることよりも「おいしかったといわれました」という直接の言葉を伝えられた方がいいと思いませんか? サービスの方に感謝を伝えることは、それがそのままシェフに伝わるということですので、これもまた先程のコール・アンド・レスポンスの話と同じようにおいしかったと「反応する」ことを僕はキッチンへのエールという意味で意識しています。 

一方で、「おいしかったです」と言い過ぎないことも気をつけています。「おいしかった」という言葉は、最大級の謝辞だと思っています。だからこそ無闇に言い過ぎない、「おいしいばかりをいう狼少年」にならないことも、主客の信頼関係の構築という点でも必要だと思います。

④料理はすぐに食べる

これもとっても大事です。料理が出てきたらすぐに食べる。

料理は出来上がった瞬間から劣化していきます。時間が経てば経つほどおいしさは失われていくのです。

家食と外食を比べた場合、作る人と食べる人が一緒の家食ではシステム上「アラミニッツ(出来立て)を出し続けること」が不可能です。逆にいえば家食に対する外食の最大の価値はアラミニッツであることともいえます。そこに特化したレストランは、アラミニッツにすべてをかけているといっても言い過ぎではないと思っています。

お喋りに夢中になってしまっている人をみかけます。夢中になるのは分かるのですが、レストランが最も大事にしていることに気づけないこと、そして最大の価値を不意にしてしまうのはあまりにもったいないと思うのです。

たまに料理が出てくるタイミングと説明に時差が起きることがあります。目の前に料理がおかれて、食べていいのかわからない時間が流れる、あの時間です。僕は、説明があるまでじっと待つことはせず(前菜など時間が経ってもいいものは別です)、わりとすぐに食べ始めてしまいます。だから、料理の説明を聞きながら食べていることもあります。

僕も説明を受けるまで待っていた方がいいかなと思ったこともあるのですが、レストランのオペレーションを見ていると、説明ができなくてもすぐに運ぶことを優先して、後から料理の説明にきていることに気づいたんです。店がせっかく出来たてを出してきたのだから、すぐに食べる。

それに料理の説明は食べながらでもきけますしね。全く聞かずに食べているわけではありませんから。

良い客とはレストランを主体的に楽しんでいる客

良い客の定義はさまざまです。

僕が考える良い客の定義は、「店とコミュニケーションをとって積極的にかかわる客」だと思っています。

もちろん大人しく食べて、サービスを受ければいいという意見もあると思います。しかし今の時代、外食だけでなく、さまざまなジャンルを見ても主客の壁をインターネットが溶かし、文字通り主客一体化が進んでいます。

それによって各ジャンルで良い客の定義も変わってきていて、とうぜんレストランでも客がレストランの一部になってきていると思います。

ですので思い切って主体的にレストランを楽しんでみることは、決してわがままで自分本位な客ではなく、現代の良い客の姿なのではないかと思うのです。

現代の良い客になるためにまずは、サービスに対して反応していく、自分の意思を示していくことから始めてみてはいかがでしょうか。

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