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Food|「ヴィーガン・レシピ」の野菜料理を作ってみた

週末は、料理担当をすることが多いです。土曜の夜とかは、近所の酒屋でワインを買って(軽くて飲みやすいのが好きで、ニューワールド系のピノ・ノワールを選びます)、食べたいものを2、3品つくっています。

たいてい作るメニューは、食べたい食材とメニューがあって、たとえば「カキのオイル煮」とか「ハマグリのパスタ」みたいなものに対して、Cook Padで調理法を探して、適当にアレンジするのが多いです。

自分では、けっこうな料理男子(料理おじさん)だと思っています。

初めてのヴィーガン料理

そういうこともあって、ふだんはあまりレシピ本を見ながら、ということはしないのですが、昨日は鎌倉の朝市に行っていい野菜を手に入れたこともあって、The Burnの米澤文雄さんのレシピ本『ヴィーガン・レシピ』から、「ローストビーツのタルタル仕立て、3種類のチップス」をつくってみることにしました。

牛肉のタルタルを、ビーツに見立てた野菜料理で、もちろん動物性の食材は使っていません。

そもそも、自分がいつも家で作る料理は、メニュー名がある、たとえば「麻婆豆腐」や「トマトのパスタ」「ラムチョップのグリル」など基本的に、伝統的な料理のアレンジレシピです。今回のように、シェフの完全オリジナルの料理を作るのは初めてです。

ビーツをゆでたあと、タルタル風に細かく切って、オーブンでロースト。マスタードとビネガーなどによる複数の酸味と辛みがある調味料で和えて、ジャガイモ、キクイモ、パースニップの3種類のチップスを飾ります。

ヴィーガン・レシピ』自体は、レストラン向けのレシピ本なので、うちの家にはない調味料がいくつかあって(そもそも、ビーツは紫ニンジン)いくつか代用したりもしたのですが、作ってみた感想として「シェフのレシピ本ってすごい!」でした。

食材の組み合わせ、調理の組み合わせがすごい

合わせ調味料は、8種類の調味料や食材が入っているのですが、たとえば、酸味だけでみても、ケイパー、ディジョンマスタード、粒マスタード、シェリービネガー、タバスコ、ウスターソースがあり、味の層は複雑です。ここに、またそれぞれの調味料や食材に、別々の旨味や塩味があるわけなので、分量によって無限の味の組み合わせが生まれます。

そのなかから、ぐわっとひとまとめにして、立体感ある味わいにするのって、すごいですよ。

そういう、味のバランスのすごみって、家庭のレシピではぜったいに味わえないし、レシピを通じて、その発想の一部に触れられたのは、味覚で仕事をする身として、味の構成に対する向き合い方を問い直された気がしました。

そしてもうひとつ大きく感じたことは、レストランでの満足感は、ほんのひと手間、ひとつのアイディアで成り立っていることも実感しました。

ローストビーツのタルタル仕立て、3種類のチップス」は、0.8㎜四方に切ったビーツ(この時点で、かなりハードル高い!)を、合わせ調味料で和えるわけですが、この時点でかなりおいしい。これだけで、1品になるなぁと思いながらも、写真をまねして、チップスを飾ります。

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(掲載写真)

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(作ってみた画像、結構再現できてる)

出来上がりをさっそく食べてみると、このチップスが、すばらしくいいんです。単品でおいしいビーツのタルタルが、このチップスが入るだけで、さらなる充足感をあたえるのです。

油脂分とイモがもつ炭水化物感が、本能的に人間がほっする栄養素であることも理由のひとつだと思います。さらに、ビーツのタルタルだけでは、単調になってしまう味に変化をあたえています。

おそらくタルタルだけでは、いくらおいしくても2口か3口で十分という料理です。これが3種類のチップスを加えるだけで、ビーツ1本分を食べられる。おそらく、お店で食べるなら1皿10口くらいだろうか。口に入れてから、咀嚼をして飲み込むまでの一連の動作を10回繰り返しても飽きさせないのだからすごい。

タルタルだけではある意味野菜サラダだった料理から、チップスを加えることで、レストランの前菜としての満足度までぐわーと押し上げているのです。

高い食材を使ったりして、情報でレストランクオリティに押し上げることはある意味簡単で、僕でもできます。それよりも、こうした食材と調理の組み合わせによって満足感をもたせることって、本当に経験や知識が必要になってくると思います。

やっぱりすごい。

じつは、「ローストビーツのタルタル仕立て、3種類のチップス」以外に、『ヴィーガン・レシピ』の本から、食材がそろわずに、2つのレシピを合体させて、恐れ多くも勝手にアレンジしてもう1品作ってみたのですが、これが大失敗(当然すぎる)。

勝手にアレンジなんかしないで、きちんとひと皿を通して作ってみるのは、すごく大事だなぁとも実感しました。

アレンジなんかまだはやい。プロの真似から得られることはある。その通りだなぁと思いました。

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