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Human|料理人 窪田修輔さん

1月19日に行ってきたポップアップレストラン「KADODE」で料理を作った田窪修輔さんが、先日、毎週木曜に青山一丁目のThe BurnでやっているMAGARIに来てくれました。
(トップイメージ撮影:石上 遼)

北参道の一つ星フランス料理「シンシア」のスーシェフ(副料理長)として2019年12月まで働いたのち、独立準備やスキルアップを目指し退職したといいます。独立の目標は30歳。1992年生まれの窪田さんは、現在27歳なので、あと2年ほどの期間をどう使うべきか、考えているということでした。

そのなかで、窪田さんが選んだ次のステップは語学留学。2月からおよそ半年間、フィリピンで短期間みっちり英語を学ぶそうです。

シンシア時代に海外のゲストにサービスをする機会があったときに、料理の背景や、自分たちがもっている料理への思いを、きちんと伝えることができたら、もっと海外の人たちに、もっといい体験をレストランでしてもらえるのに、という思いがあったそうです。

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(撮影:石上 遼)

素材に向き合える個性に多様な視点を持つこと

そして、会話は、独立に向けて、帰国後の2年間について。窪田さんは、さらに技術を磨きたいといいます。

僕は、KADODEで窪田さんの料理を食べて、すごくまっすぐで、素材に対して素直な料理をする料理人だな、と感じていました。料理に対して、素材に対してとても真摯な態度が料理からわかるので、おそらくだまっていても技術は磨かれるんじゃないかな、というのが僕の感想です。

なので、技術を磨くよりも、素材に対する接し方についていろいろ経験をした方が、窪田さんにとってはいいのではないかなと思い、2つの提案をさせてもらいました。

①素材に近いレストランで学ぶ

東京のレストランで技術を学ぶことはできると思うのですが、レストランの数が多く質が高いこともあって、技術の差がわかりずらくなっているように思います。

技術を磨くにしても、差が拮抗しているので、どのレストランにいっても高いレベルの仕事はできる。また、たしかに技術は大切なのですが、独立を目指すのであれば、オーナーシェフとして技術以外の個性が必要になります。

窪田さんの料理から溢れるものは、素材に対する真摯な態度。

それならば、東京では体験できない、素材に近い場所で料理をしてみるといいんじゃないか。

生産者がどんな生活をしているのか、流通はどうなっているのか、資源はどれほど残っているのか、未来への問題点はあるのか。その中で、素材を調理する対象ではなく、私たち人間と同じ地球に生きる生物として捉えられると、料理の表現も変わってくるんじゃないかと思いました。

それに窪田さんなら、どこで仕事をしても勝手に技術を磨いちゃうと思うし、30歳過ぎても技術は学ぶ、ある意味一生のテーマでもあると思うんです。

具体的には、地方の料亭旅館やローカルレストラン。ワイナリーレストランなども面白いかもしれません。

②専門卸で食材を学ぶ

①は素材を通じて、その地の人にも通じたテロワールを学んでもらうと、次食べる料理が楽しみだなということなのですが、もう一方で、決まった食材に特化した料理人になれれば、本職のレストラン以外の仕事で、声がかかりやすくなるのではないかとも思います。

そのなかで、窪田さんは長野県出身なので、山菜やキノコ採り名人に弟子入りしたり、長野から近い富山や金沢の魚屋さんで働いたり。ジビエや地元の酒蔵とかでもいいかもしれません。

その場合は1つに特化しなくても、ある分野のスペシャリストの3〜6カ月くらいで数カ所研修をするというのも、独自性が生まれそうです。

教育実践家の藤原和博さんが提唱する「100万人に1人の人材になる方法」というのがあります。

100万人に1人の人材になるために、料理人として1点突破の努力をするか。それとも、別の考え方で、たとえば、料理人で100人に1人、魚屋で100人に1人、長野の日本酒で100人に1人の人材になれば、100×100×100で100万人に1人の人材になる。

僕は、この考え方ってこれから重要になってくると思うので、専門性を持ちながらも、横展開して行くような意識が必要になってくるのではないかと思っています。

こういった戦略的なセルフブランディングも、これからのオーナーシェフには必要になってくると思います。

自分だけの景色を見るために努力すること

途中から米澤さんも参加してくれました。米澤さんの意見も、「技術はそれほど重要にはならない」という点で一致していました。

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その上で米澤さんは、「自分が一生の仕事になるような社会的な課題に取り組む」という意見をされていました。

たとえば、「地元の醤油がおいしいのに、なかなか知られていない。僕は、この醤油を世界一の醤油にしてみせる」のような、個人的な課題を持つことだといいます。さらに、その際、その取り組みが自分ひとりで続けられるといいともいいます。

自分だけの景色を見ることを考えてみたらどうかな。東京のレストランで腕を磨くことも大事だけど、その先にあるのは、よほど努力をしない限り、誰かがみた景色と一緒。自分だけしかないもので、少し辛いけど頑張って努力して見える景色は格別だよ

なんちゅう、実感のこもった言葉だ。まだ「アメリカに美食なんてない」と言われた時代に単身アメリカに渡った(しかも所持金30万円)米澤さんらしい。そのあと、確実に日本人が初めてみた景色を「ジャン・ジョルジュ」で見たんだもんな。

MAGARI 料理人相談所開設?

そんな感じで、2時間みっちり話したこの日のMAGARI。窪田さんは、その週の週末に、日本を経って、フィリピンに渡りました。

MAGARI中には、フィリピンの食材やローカルフードを勉強して、SNSで発信したいとも話していました。どんな見知らぬ発見を伝えてくれるのか。そして、日本に帰ってきて、どんなステップを見せるのか。いまから楽しみです。

MAGARIでは、こんな感じで、これからのことを考えている料理人さんがいらして、何かのきっかけになればという思いで僕から話せることをお伝えしています。

興味がある方は、毎週木曜日にMAGARIをしていますので、僕のTwitterのDMやFacebookのmessengerなどで連絡くだされば、時間をあけますよ!

ちなみに相談料は、「noteで書かせてもらうこと」です(笑)。

料理人付き編集者の活動などにご賛同いただけたら、サポートいただけるとうれしいです!