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note|山下@WRCエンジニアさんのnoteを読んだ

週末を中心に更新している個人のマガジン「note」では、1週間で読んだnoteのなかから心に残ったものを紹介しています。今回は、山下@WRCエンジニアさんの「変革期のモータースポーツにおけるカテゴリとファンの分断は是か非か」です。

畜産業の持続可能性に関しての議論

先日書いたnoteでは、オーストラリア産牛肉「オージー・ビーフ」のサイトで「わたしにあう、オージー・ビーフ」という連載を始めたことを書いております。

畜産が与える地球環境への負荷は、日本ではあまり議論されていませんが、欧米では課題として広く認識されていています。オーストラリアでも畜産が与える環境負荷の責任をどう果たすかは、具体的なゴールを提示しながら負荷の軽減を目指しています。

そのなかでも牛のゲップなどによる温室効果ガスの排出は課題になっていることは良く知られています。これに対しオーストラリアの食肉業界では、2030年までに100%の「カーボンニュートラル」を行うことを目標に掲げています。

カーボンニュートラルとは、生産全体でみたときにCO2の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロの状態をいうもので、「炭素中立」と訳されます。

ちなみにカーボンニュートラルの実現を目標に掲げているのはオーストラリアだけでなく、ブラジルではすでにカーボンニュートラルな牛肉が生産されています(オーストラリアでも、「アーケディアン」が達成)。

畜産、ならびに牛肉について僕のスタンスは、牛肉を食べないという選択ではなく、さまざまな分野と共同しながら課題を解決し、バランスを保ちながら肉牛食を続けていくというものなので、オージー・ビーフの仕事をするにあたって、カーボンニュートラルを目指す姿勢や放牧牛を中心の飼育をするオージー・ビーフの飼育環境は支持するところでした。

変革期のど真ん中、選択肢はたくさんある

カーボンニュートラル自体は、畜産だけにある課題ではなく、現代の社会の大きな課題です。

ちょっと誤解を招きそうなので書いておくと、牛のゲップや糞尿が温室効果ガスの発生に寄与しているので、放牧でも牛舎で穀物肥育でも同じで、畜産業を減らすとりくみであったり、糞尿を再利用したり、飼料の改良でゲップのメタンガス量を減らすなどをしないとカーボンニュートラルにはなかなかたどりつきません。

カーボンニュートラルを目指すことはつまり、なんらかのゲームチェンジが必要で、現在「食文化」として根付いているものを変えていく必要があるということです。それはヴィーガンプラントベース(植物由来の食材)のような取り組みも必要になってくると思います。それが文化として定着していくかどうかは、また別の課題(多くは心の問題)があるのでそちらもまた道のりはながいんじゃないかなと思っています。

つまり、高級レストランで、肉料理をなしにしてニーズがあるのかという問題です。じっさい、ミシュラン三ツ星で、世界のベストレストラン50で世界一を獲得したNYのレストラン「Eleven Madison Park」がプラントベースのメニューに変えたのは、そうしたゲームチェンジにいち早く対応した結果のようにも見えます。

そういうなかで、飲食と同じようにカーボンニュートラルによってゲームチェンジを求められているのが自動車業界です。というのも、ホンダがF1撤退したニュースの背景には、カーボンニュートラルに向かう準備とする指摘もあり興味がありました。

畜産がなくなって美食が成り立つのか」と「内燃機エンジンがなくてモータースポーツが成り立つのか」という両者の問いは、価値を180度変えていくような大きなゲームチェンジをしなければ社会的責任を果たせないという点で、似ているのではないかと思うのです。

そんななか読んだのが山下@WRCエンジニアさんのnoteです。WRCとはFIA 世界ラリー選手権のことです。

1973年、それまで世界各地で単独に開催されていたラリーイベントをFIAの下に一本化し、ラリー競技の最高峰の世界選手権としてスタートした。FIAが主催する自動車競技の世界選手権の中ではF1世界選手権(1950年創設)の次に長い歴史を持つ。――Wikipediaより

バリバリモータースポーツの中で、トヨタWRCチームのデータエンジニアをされている山下さんのカーボンニュートラルとモータースポーツのお話は大変興味深かったです。

2014年からは、F1を管理するFIAがFormula Eという電動自動車のカテゴリを展開していたり、内燃エンジン搭載車とは別のゲームとしてのカルチャーメイキングがされています。

さらに、山下さんが戦っているWRCという世界的興業のなかでも、カーボンニュートラルはしっかりと議論されていて、「来シーズン(2022年)からは車両はプラグインハイブリット(PHEV)となり、並行してエンジンは100%持続可能な燃料になります。FIA直下のカテゴリとしては初の試みです。」ということが具体的に進んでいます。

さらには、「CO2を排出しない燃料」などの研究が進んでいる話などは、カーボンニュートラルな世界でもモータースポーツは変わらず人々に熱狂を与える風景を信じているし、さらにそういった世界を「自分たちで作っていくんだ」という意思を感じられます。

一方で、ファンの分断も現実に起こっていて、オールドファンはやはり内燃エンジン車のモータースポーツに期待をしていて、例えばFormula Eは電気自動車ネイティブな若い世代の支持を受けることになるのではないかと、山下さんは指摘しています。

電動化したモータースポーツに対して柔軟な見方ができる観戦者を除けば、本当のターゲット層は現在10代、20代、もしくはそれ以上に若い世代になります。僕らにとってガソリン車が普段乗っている移動手段であるように、電動モビリティが普段の移動手段となる世代にとっては、Formula Eに対する違和感は無いはずです。また逆にF1のように内燃機関が使われるレースを時代遅れに感じるかもしれません。

結果的には、既存のカーボンフリー化した内燃機関を使ったモータースポーツが好きなファン層と、モータ駆動の電動モータースポーツを好む層に二分される気もします。(山下さんnoteより)

このあたりは、食肉を飲食業界がどう扱っていくかを考えていく場合に同じような状況が起こっていくのではないかと、個人的に感じています。それはヴィーガンと非ヴィーガンの二分化のようにすでに起こっていることのようにも思います。

そうした状況を山下さんは、以下のようにまとめています。

一方で、いつかは学生の頃に憧れたF1でも働いてみたいし、電気自動車のレーシングカーも開発してみたいです。またモータースポーツ関連で他にもやってみたこともあります。モータースポーツが変革期にあるからこそ選択肢が多い気もします。僕は変革期のど真ん中にいるモータースポーツを楽しみたいと思います。

これもまた食肉、畜産の課題にそのまま置き換えられるのではないでしょうか。飲食、畜産が変革期にあるからこそ選択肢がある。その変革期のど真ん中で飲食を楽しむ、そんな思いも大事なのかなと思いました。

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じつは、高専の機械工学科を卒業していることもあって、10代からまわりにF1好きが多く、鈴鹿も観にいったりしていたので、モータースポーツは好きですし、モノが動くというのは、もっと好きだったりするので、山下さんのお話、カーボンニュートラルの話題を抜きにしても、とても楽しめました。

noteのモータースポーツ枠もおもしろいですよね。今後も読ませていただきます!

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明日はClubuhouseのまとめです。


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