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ISE-Workation|11月13日の日記|晴れ

7:00 起床。

8:20 自宅を出る。

9:21 新横浜のスターバックスでコーヒーを買って新幹線に乗車。社内でnoteを書きながら名古屋を目指すが結局書ききれず。

11:10 「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にユニット「侍キュイジニエ」として参加する料理人の大野尚斗さんと近鉄の名古屋駅で待ち合わせる。ぺちゃぺちゃと話していたら、なんと乗る予定だった特急に乗れず。次の特急で伊勢市駅を目指す。

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車内でnoteの続きを書いていたら、特急がけっこう揺れたので、軽く酔ってしまう。

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13:10 近鉄伊勢市駅到着。伊勢市職員の谷川さんにお迎えにきていただいて、初日から2日間お世話になる料理旅館の「おく文」さんへ。荷物を置かせてもらい、さっそく行動を開始する。

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14:00 伊勢神宮の外宮前の観光案内所でレンタサイクルを借りて、まずは腹ごしらえを目指す。

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外宮に来る途中に見た「駒鳥食堂」さんが気になっていたので、事前に伊勢在住のnoterさんであるYuki/農ときどき旅さんの歓迎noteを見ているとYukiさんもお勧めしているではないか! これは絶対おいしいと、大野さんと自転車で移動する。

14:10 自転車で10分もせずに「駒鳥食堂」さんに到着。ランチ時を外れたこともあって、店内は僕たち二人。どれも魅力的なメニューだったが、松坂牛を使った伊勢肉うどん(1250円、牛丼じゃないよ)と肉カレーうどん(700円)をチョイス。どっちもチャンピオン。

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伊勢うどんはやわやわなイメージだったけど、伊勢でも3軒ほどしかない手打ちうどんのお店ということもあって、絶妙にうどんのプライドを残している。

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スープ(というかタレ)も、たまり醤油など数種類をブレンドしたもので、見た目黒々としょっぱそうだけど、飲めるくらいだった。

カレーうどんも、下に肉うどんと同じスープがしいてあって、その上にカレーをかけていてスープとカレーが層になった構造。これもまたおいしい。

お店のお母さんも、どこの馬の骨かもわからない男2人の話を丁寧に聞いてくれて、伊勢うどんと福岡のうどんの共通点などを教えてくた。楽しい交流もあって、一食目から最高のお店に巡り合い、クリエイターズ・ワーケーションは最高の滑り出しになった。

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14:50  伊勢での僕たちの活動にご協力いただける伊勢調理製菓専門学校様にご挨拶へ。なんと日本初の調理師免許が取得できる専門学校として昭和34年(1959)に開校したそうです。ここで月曜に大野さんが特別講師として教壇に立つことになっているので、その打ち合わせもする。

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大野さんの講義を聞いて、世界に出て挑戦しようと思ったんです」というエピソードを20年後に聞いたら、もう死んでもいい(20年後なら、ふつうに死んでるかも泣)。

16:00 11月21日(土)と11月22日(日)に行うポップアップレストランの会場を候補の一つ「ロカンダ・ボーノ」さんへ。

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一軒家の1階が厨房を完備したスペースで、二階が民泊になっている。火口3個、ガスオーブン、ミキサー、フードプロセッサーもあって、カトラリー、お皿、グラスもある。十分な設備で、ほっと一息。

対応いただいたお母さんに、伊勢の名産品「蓮台寺柿」を紹介してもらう。

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じつは来た時から目に入っていて、「トマトがあるなぁ」と思っていたら実は超完熟した柿だった。

割ってみると、ジャムみたいに中身はトロトロ。スッキリときれいな甘さで大野さんと「これは面白い、コースに使えるね」と話す。地元では、ジャムみたいにパンに塗って食べるそうだが、チーズに合わせたり、豚肉や鴨、鶏に合わせるのもありそう。アイスクリームにかけただけでも完成しそう。

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蓮台寺柿は300年前から伊勢市で作られていて、市の天然記念物で特産品でもある。天然記念物が食べられるとか面白い。思いがけず伊勢ならではの食材に出会えた。

17:00 レンタルサイクルを返却。15分ほど歩いておく文さんへ帰る。

17:20 おく文さんチェックイン。昔ながらの料理旅館で味がある。まるで川端康成が『雪国』を書いた湯沢の温泉宿のようだ。

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ひとしきり大好きなTwitterをしてからお風呂。夕食を待つ。

19:00 夕食。特別に江戸時代に食べられていた「御師料理」のコースをいただく。

食事前におく文さんの四代目当主、奥田守さんに御師料理について話を聞くことができた。

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御師とは、江戸時代に全国から伊勢詣に来た人たちを出迎えた伊勢を案内し宿泊などの世話を生業にした人たちのこと。伊勢参拝は、基本的に天皇家であったり皇族や権力者に限られていたので、一般の人は参詣できず、かわりに御師が神楽料を参詣者たちから受け取って代行して祈祷していた。

伊勢には往時300軒もの御師がいたという。明治4年に御師はなくなり、御師宿が残るのは1軒、丸岡家のみ。おく文さんはその丸岡家の隣にある料理旅館で明治23年創業。丸岡家から、江戸時代の資料が整理されたなかで、御師で振る舞われていた料理を記載したものが発見され、おく文さんがそれを解読し、現代人でも食べられるようにアレンジして「御師料理」として提供している。

今回のメニューは、今から300年前の享保4年(1719)に、御師 丸岡宗太夫が信州松本からきた人たちに出した御師料理を再現・アレンジした料理。

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ダイコン、キクラゲ、ショウガの鱠。献立に「たれ」とあるのは、サメの身を竿のようなものに垂れ下げて干して保存食にしたことから「たれ」と呼ばれるようになったとのこと。

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つみれとシイタケのお椀①.

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イカと昆布の煮物。

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タイのお刺身は、醤油が生まれる以前の調味料「いりさけ」(お酒に梅干しを溶かしてアルコールを飛ばしたもの)で食べる。初体験。お造りに酸味のあるジュレを掛ける現代和食のような解釈もできる。

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タイに葛かなにかをつけてあるようなお椀②。

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あかさ(あかざ)は、伊勢で昔とれた野草のこと。今は春菊で代用。胡麻和えに。

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タイの塩焼き。

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鮑と干しエビ、葛切り。アワビおいしい。

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ふくため(ふくだめ)」とあるのは「とこぶし」のこと。

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ごはんと香の物、最後のお椀③。3敗目のお椀は、献立には「みル」とあるが、これは今では食べなくなった細い海藻の。夏場に採れるもので、今回はワカメで代用してあった。

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果物で、蓮台寺柿。今回は完熟前のもの。おいしい。

当主の奥田さんが「御師料理は、現代人にとって決して豪華な料理ではあるが、これが当時の人たちにとってのありがたい料理だったのです」という言葉通り、伊勢海老もなければ松坂牛もない、伊勢でたくさん獲れるタイは何度も出てくるが、きわめて質素な料理が出てくる。

アワビは、伊勢の神様に捧げられる『神饌』の食材です。これを食べることで、参拝客は神様と同じものを食べていることになります。それが当時はもっとも大事なことだったのです

何も知らずにこの料理を食べれば「質素な田舎料理」になるものが、御師と伊勢神宮の関係を知ることで、意味のある料理になっていく。食体験としてのガストロノミーの神髄を感じた気がした。

伊勢の食文化を知るなら、おく文さんで御師料理を食べるべきだろう。

20:30 部屋に戻る。スマホ、タブレットともに部屋のWi-Fiが繋がるのに、どうもPCがWi-Fiに繋がらない。悪戦苦闘していたが問題が解決できず、あきらめてタブレットとテザリングして作業をする。

おく文さんはとても掃除が行き届いて、歴史ある旅館とは思えないほど快適に過ごしているが、どうも鼻だけは敏感のようで、鼻水がジュルジュルと出てくる。

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伊勢市が主催する「クリエイターズ・ワーケーション」に選ばれ、11月13日から23日まで伊勢市に滞在していますす。

侍キュイジニエ」というユニットを料理人の大野尚斗さんと組み、滞在中に伊勢の生産地をまわって食文化を学んだ後、11/21(土)と11/22(日)の夜にポップアップレストランを開きます。

滞在中は、毎日伊勢でのワーケーション日記を更新していきます。


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