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Work|仕事をお願いするのはどんな人?【編集者編】

編集者をしていると、取材のアレンジしながらフォトグラファーさんやライターさんの依頼や、じっさいに誌面を作るために、イラストレーターさん、デザイナーさんもお願いする人を考えたり、どこの印刷、製本所にもっていくかまで、たくさんの方に仕事をお願いする場面になります。

では、実際どんな方にお願いを自分はしてきたのだろうと、ふと思い、忘備録もかねてまとめておこうと思います。

1)適材適所、特徴を理解する

ひとつその方が作ったもの(納品物)の特性を理解しておくことは大事でした。それは、単に「クオリティが良い」という抽象的な判断ではなく、どんな場面で力を発揮して、どんなリスクがあるかを理解しておくことです。

たとえばフォトグラファーさんが3人いたとします。年齢はおなじ30代で、ギャラはいっしょです。

Aさん――身体能力が高いので撮影のスピードが速く、撮影枚数も多い。そのため撮影漏れが少ない。外光写真がうまい。一方で、作り込んだ撮影ができない、ライティングが不自然、納品時の画像セレクトが雑。人物写真は、たまにいいものを撮るが、100本中1本なので、博打に近い。

Bさん――現場でアレンジして作り込んだ写真が撮れる。意図がある写真を撮るので、選びやすい。かなり明るく撮るので、きれいにみえる。一方で、作り込みすぎるので被写体に負担がかかる。無駄話が多いので、クライアント同席の撮影にはうっとおしい。写真が明るい分、軽く見えて雰囲気がない。人物写真は怖がって、目線があるものを撮れない。

Cさん――ピントがしっかりあっていたり、トリミング不要な構図が決まった写真を撮る。イメージ写真を合間に撮ったりと抜けがない。人物もうまくとる。納品画像の数が少ないので、選びやすい。一方で、集中力が短いので、終日の撮影には不向き。指示されたカット以外は撮らない。ライティングがうますぎて、作り物っぽくみえる。基本的に上手いので、逆に個性やざわつくような「ひっかかり」がない。

これくらいの分析はしておいて、それぞれの取材で欲しいイメージと制作の進行にあわせて依頼する感じです。たとえば、クライアント仕事でソツなくこなすならCさん、地方取材ならAさん、Bさんは、女性を取材する場合など。同じ人に企画に構わずずっと頼み続けるということはしませんでした。

デザイナーさんやイラストレーターさんも同じような考え方です。

2)ミスの多さをリスクとして理解する

ライターさんやデザイナーさんにお願いする場合は、1)とともにどれくらいミスが出る可能性があるかを理解するようにしていました。

ライターさんも同じように3名の方がいらっしゃるとします。

Aさん――締め切りを守る。かつギリギリではなく余裕をもって送ってもらえる。ショップ紹介やイベントレポートなどが得意。一方で、目の前のことしか書けないので、深い考察がなく、インタビューなどには不向き。担当した企画以外のことは気にせず、重複が生まれることが多い。校正の見落としが多く。ほぼ素読みしかしないので、情報精度が高いものについては、一次資料に立ち返る必要がある。

Bさん――必ず考察や独自の視点を入れるので、読後の説得力が高い。統一表記の精度の高さや、校正時の一次資料の立ち返りを含めて、きちんとチェックして戻ってくる。1冊全体の構成を理解しながら書く編集的視点もある。一方で締め切りに遅れがち。文章に力があるが、語り口調のインタビューではどんな人でも同じようなトーンでまとめるので、同じような人物像になってしまう。

Cさん――締め切りはきちんと守る。編集はあまりこなさない、ライティング専門。語り口調のインタビューがうまく、10人インタビューしたら、10人ちがう雰囲気を原稿内に作り込むことができる。校正もある一定のラインまではきちんとしてくれる。一方で、考察をあまりせず雰囲気で終わらせてしまうことも多い。主観が少ないといえる。

基本的には校正をしっかりしてくださる方にお願いしたいと思っているのですが、場合によっては校閲者が別に用意できる場合があるので、そのリスクが担保できれば、どなたでもお願いできると思います。

締め切りについては、その方の特徴を踏まえて、過ぎる傾向があれば、本来の締め切りよりも、2、3日早めに設定するなど工夫をしています。あとは、フォトグラファーさんと同じで企画との相性を考えます。

3)継続してお願いしたい人とは

1)と2)のようなことを考えながら、その時々にあった人選をしていくわけですが、そのなかで継続して仕事をお願いしたいと思うのはどんな方でしょうか。

①つねに前回と違う提案をしてくれる

仕事が何回も続いていくと、「前回踏襲」が増えてきます。もちろん作業効率の向上だったりを考えると、大筋それでいいのですが、そのなかでも、少しずつ改善を加えてくれる方だと信頼感が増します。ああ、この企画のことを良くしようと考えてくれているのだなぁと。

ただし、勝手に大きく方向性を変えてしまう方がまれにいます。そういう打ち合わせしましたっけ? みたいなことです。変えるなら事前に相談してほしいですし、どこまで任されているのかのラインがわらないというのは、けっこう致命的かなと思っています。

②感想をいってくれる

これも結構重要です。編集段階に入ると、それぞれが孤独な作業が続きます。締め切りの足音が聞こえてくるとプレッシャーもかかり、お互いの対応が雑になることもあります。

それ自体はしょうがないと思うのですが、そのなかでも「今回の企画おもしろそうですね」とか「こういう読者にささりそう」、「この部分はあまり良くなく感じました」という良い意見も反対の意見もどちらに限らずコメントをくださる方は、本当に頼もしいです。

③相談ではなく提案になっている

連絡事項の基本は、提案になっていること。ここはけっこう仕事の価値観として大事にしています。

ここの写真変えませんか?

ではなく

ここの写真にこの人物写真を入れて、ヒューマンなイメージにしたいんですが、いいですか?

という提案をしてくれる人はすごくいいです。やり取りが1回で済むし、作る側の意図もわかりやすいし、こちらも判断のポイントが明確で、判断しやすい。

漠然と、「なんか変えたいですね」みたいのは勘弁してもらいたいです。

④もちろん内容も大事

人柄とか向き合い方以外にも、もちろん出来上がったものに満足できたか(お互いに)、問題なく進行できたというのももちろん大事です。

結果を残せたチームの再結成率はかなり高いですから。

求める人材像から求められる人になる条件を導き出す

ざざっとですが、編集者の僕が、どんな方に仕事をお願いしたいかまとめてみました。

①締め切りを守る。連絡が早い
②ミスが少ない
③主体的・自分事としてかかわる
④相談ではなく提案をする

逆にいえば、この4つを自分に課せば、持続的に仕事の依頼がくるということでもあります。

僕の場合は、②がウィークポイントだなぁ。校正が苦手、誤変換、誤字脱字が多いのでそれを減らすやり方をもっとしていかないといけないし、その部分を誰かにお願いするということも必要になりそう。

自分が求める相手が鏡になって、求められる人になるための条件が導き出されるわけです。みなさんもやってみてはいかがでしょうか?

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