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Life|レストランとあなたのマッチング率を上げる方法

いろいろな人が、SNSなどにおすすめのレストラン情報をアップされています。「おお、おいしそう」「行ってみたい」なんて思いますよね。だけど、「行ってみたらどうも合わなかった」みたいなこともありませんか?

僕も、けっこう「あの人がアップしていた店に行きたい」と思い返すことはあるのですが、限られたお金のなかで、何度も行けるわけでもないので自分の好みなのかどうか、かなり念入りに調べてから行くようにしています。

まずは食べログでお店を確認します

僕の場合は、まずはそのお店を「食べログ」で確認します。点数はあまり気にせずに、口コミ情報と写真を見ます。

口コミもいろいろなタイプの人がいますが、僕が参考にするのは「感想」ではなく「レポート」に徹している投稿です。つまり、おいしいかそうでないかということではなく「どんな料理を出しているのか」を基本的に確認します。一番いいのは、料理名と使われている食材、調理方法がざっとでもいいので書かれているものです。

つまり料理名と使われている食材、調理方法が書かれていれば、必ずしも食べログだけで調べる必要はないのですが、今のところは、僕がほしい情報の多くは食べログにあることが多いので、使っているという感じです。

その上で確認しているのは、①季節の食材が使われているか②料理のルーツが見えるか③どんな味の構成なのかという部分です。

→①季節の食材が使われているか

メニューに季節感がないというのは、メニュー変更をほとんどしていないことの現れです。また、メニュー替えがないということは、ほぼルーティーンで食材を右から左へ仕入れているだけなので、食材の微妙な変化に気づきにくくなる可能性があります。

もちろん専門店ではメニュー替えの必要がない場合もありますが、ことレストランではメニュー変更が頻繁に行われているお店は、経験的に良いレストランが多いと思います。

食べログでは、投稿者の感想に惑わされず「情報」だけをとることを意識します。

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外苑前「ロー」のアミューズ。
ビジュアルとしても季節を表現しています。

②料理のルーツが見えるか

創作料理を否定するわけではないのですが、味の構成だったり、食材を扱うルールといったベースの部分は、ピカソがデッサンがしっかりと出来ていたように、ひとつのジャンルやお店でしっかりと学んで基礎を作った上でないと、応用も創作もできません。

ここを確認するのは、前菜のメニューを見るといいです。

フランス料理は重ねた味の響き合いなので、使っている素材が多く手の込んだもの。テリーヌやパテ、煮込みのような手の込んだ家庭料理やそれをアレンジしたものがあるといいですね。

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フランス南西部の郷土料理、鴨のコンフィ。

イタリア料理なら地方料理の集合体なので、食材にフォーカスが当たっている方がいいので、チーズや生ハムのようなものや、フリットなど素材をシンプルに食べさせるような料理などがあればいいですね。

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能登「ヴィラ・デラ・パーチェ」で
食べた葛粉を使った焼きナスのパスタ。

③どんな味の構成なのか

味を食べログから推測するのはかなり高度です。というか、実際のところはわからないので、部分部分で考えていきます。

ソースはかなりの手がかりになります。ソースがないお店は、高価格帯ならば素材を重視し、食後感の軽さも目指しているはずなので、かなり良い素材を使ったモダンな味付けが予想できます。

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広尾「長谷川稔」は、素材に徹底的にこだわるレストラン。

一方、低価格帯(コース4000~6000円位)で料理にソースがついていないお店は注意が必要です。ある意味、素材があまりよくなくてもソースがおいしければ食べれてしまうので、素材の原価を抑えることができます。なので、低価格帯に行くならソースが料理についているか、または同じように味を作り込んでいける煮込みを出す店の方がだんぜんいいわけです。

逆に、低価格帯でソースや煮込みがない場合は、素材だけでどうやっておいしさを作っているのかが謎過ぎて、心配になってしまいます。

たとえばグリルした野菜にチーズをかけただけ、といったメニューは、かなり食材の力に頼っているので、並の食材では食べても満足はできません。これは高価格帯(コース8000~15000円)でないとおおむね難しいスタイルです。

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日比谷「TOYO  Tokyo」のヤングコーンのグリル。
シンプルだからこそ素材の良さが問われる。

もちろん素晴らしい努力をされて、良い食材を安く仕入れることもできるかもしれませんが、一般的に初見でレストランを選ぶ上ではリスクが大きいので、定価格帯ならソースがある料理だったり、煮込み料理があるレストランを僕は選びます。

お店のホームページを確認します

食べログの後は、お店のホームページを確認します。多くの場合、お店からのメッセージがあると思うので、そこを読みます。このとき、食べログで感じたイメージとだいたい合っているかを見ています。

お店が目指しているものと、食べた人の感想の方向性が違っていることもあるので、そういうお店は注意が必要です。たとえば、素材を重視していますといっているのに、メニュー替えは1カ月間ほとんどしないとかだと、違和感が出てきますよね。

あとは、僕がかなり注意してみるのはシェフやオーナーのプロフィールです。自分の好みの味を知る必要があって、ここはけっこう長い経験が必要なのですが、僕の中では次のような人の料理が好きな傾向があります。

①海外経験は3年以上、1年以上1つのお店にいる。
②海外では部門シェフ以上を経験されている。
③国内ならフランス料理ならタテルヨシノ、イタリア料理ならクチーナヒラタ、アロマフレスカ、リストランテ山崎に直接・間接的に学ばれている。

ここにプラスで、自分の好みとしては、海外でしたら複数の国で経験されている人は興味がありますが、味の構成がつかみづらいこともあると思うので、たとえば、接待や相手をあまり知らない人との会食では、初訪で利用するには冒険すぎるので外すようにしています。

写真から料理を想像する方法

正直、料理写真からその料理の味を想像することは難しいです。美しく形だけをコピーすることは、意外とできるからです。

そのなかで、僕の好みでいえば、写真を見たときに「料理名が想像できるか」というのは大事型と思います。

それは特定の料理名というわけではなく、「牛肉料理」とか「イカの料理」「パイ包み」「焼いた魚」のようなものがぱっと浮かぶかどうかということです。

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代々木上原「sio」で食べた大山鶏のロースト。
鶏を食べてほしいという意思を感じます。

つまり作った人が「何を食べさせたいと考えているのか」が見えるということだと思います。これが伝わらず、肉なのか野菜なのか、カブなのか魚なのか、どっちの料理かわからないというのは、まとまりきれていないのが見えてきているのだと思います。

それは、料理がシンプルかどうか、という問題とは別で、構成要素が多くても、「食べさせたいもの」が見える料理もあります。

味までは見えませんが、写真から作った人の意図を見ることはできるのです。

他人の情報に惑わされないレストラン選びのまとめ

他人の情報に惑わされないレストラン選び肝心なのは、ビジュアルだけを信じないということです。もちろん「おいしそう」と思わせることは、脳を刺激するのでより料理をおいしくする調味料になるはずです。

しかし、それはあくまで調味料。根幹の料理がおいしくなければ「もう1度行きたい」と思えないと思います。

コロナによってレストランに行く機会が減って、飲食店が苦労をしています。いろいろなGo To Eatなどの政策がありますが、基本的に飲食店を成り立たせるのは、「新規のお客さま」ではなく「常連さん」です。

そのためには、「レストランと私たちのマッチングの精度」を上げることがじつは本質的に大事なのです(税金使って、とにかくレストランに行け!ではないんです)。

とくに東京はレストランが多いので、最初の出会いが悪ければレストランに対する印象も悪くなり、「行かなくていいや」になってしまいます。

おそらく、僕がやっている情報検証もそれと同じで「レストランとの良い出会いの可能性を高める方法」で、同時に「レストランを好きでいつづける方法」でもあると思っています。

なかなかメンドクサイ方法なので、誰でもできるわけではないのですが、ぜひコロナ過でレストランに行くことが価値ある体験になっている今、お店選びにもっと真剣に向き合ってもらえたらいいなぁと思います。

そして、1人でも多くの人に、素晴らしいレストランの出会いを体験して、通い続けるファンになってもらえたらいいな、と思います。

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明日は「Art」。大河ドラマ「麒麟がくる」でも出ていた、静嘉堂文庫美術館 「 唐物茄子茶入 付藻茄子」について。

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