見出し画像

note|井川直子さんのnoteを読んで

井川直子さんといえば、僕のような料理編集者にとって、大先輩で、憧れ、さらに何度も執筆された記事を相手に勉強させていただいた方です。

とくに『料理通信』の連載「新米オーナーズ・ストーリー」は、インタビュー慣れしていな独立したての料理人の考えをうまく導きながら、その人物の長所を描き出すとともに、きちんとした事実確認をされた上で原稿を書かれている。

たとえば、インタビュー中にシェフが「前の店では」というようなことを言うことがある。僕もよくあったことで、ついそのまま話し言葉を書いたりしてしまうのだが、井川さんはそういう曖昧な表現をしない。

「前」とか「若い頃」というようにシェフが無意識に話がちなことも「3年前」とか「高校2年の時」というように、しっかりと事実をお書きになられている様は、おそらくインタビュー時にしつこく確認をされているだろうし、その後も事実関係を確認されているはずだ。

書き手として当たり前のことではあるのだが、料理雑誌で、ついつい流してしまいがちなこういう文章の基本が無意識にもうできているのだろう。読むたびに自分に「それでいいのか?」という問いかけ、僕自身に与えてくれ、おおげさでなく、レストランやシェフの文章を書くにあたり、勉強させてもらった。

そんな井川さんが、いよいよnoteを始めた。しかも、料理人を描き切るインタビューだ。

インタビューを受けているTACUBOの田窪大祐さんもリラックスして、気負うことなく自分のことを語っている。このコロナの時期に自分の考えを述べることは、リスクもともなうなかで、井川さんに敬意をもちならが(もちろんお互いが敬意をもっている)「告白」している。

これは、コロナに立ち向かった2020年の料理界の記録として、とても貴重なものになるだろう。

4月11日現在、このほかに3人の料理人の告白を読むことができる。

日々刻々と世界の情勢が変わる中で、僕たちの心のも毎日コロコロとかわっていく。昨日信じていたことが、まるっきり変わることもある。そんななか、インタビューの日付が記されているのは、井川さんからのメッセージだと思う。

考えが変わってもいい、いまこの瞬間のことを見つめようと。

一級のメディアで活躍されていた書き手が、こうやってスピード感をもって新しい発信の方法に進められている様をみると、時代はもう次のフェーズに突入したんだということを実感させられる。

今は、自粛といって立ち止まっているのはもう遅い。時間は自粛なんてしてくれない。

戦後の日本が戦前の世界に戻れなかったように、コロナ以前に戻ることは絶対にない。もう時代は変わったのだ。

僕たちはすでに、アフターコロナ、ウィズコロナの時代に生きていることを意識しなければいけけない。

料理人付き編集者の活動などにご賛同いただけたら、サポートいただけるとうれしいです!