Work|初対面の方とのオンラインインタビューで気づいたこと
先日、初めて面識のない方(大学教授)に取材依頼をし、オンラインインタビューで話を聞く機会を得ました。
オンラインインタビューは、これからもどんどん増えていくと思うので、今後挑戦される方に向けて、僕が気づいたことをまとめてみたいと思います。
①オンラインだからといって取材場所の確認は怠るな
取材は、ZOOMを使いました。取材相手の先生に、会議室はこちらで用意しますとお伝えし、前日にIDをメールでお知らせいたしました。もちろん想定する質問内容についても、対面のインタビュー同様にお渡ししています。
ZOOM会議室については、個人のアカウントを利用していますが、今後は、編集部の非対面へのリテラシーがあがれば、編集部がもつ会議室などを使うようになるかもしれませんね。僕は、個人の仕事でよく使うので、有料会員になっていますが、払っていられない、という方もいるかもしれませんし。
なおZOOM会議は録画(映像と音声、音声のみのファイルがダウンロードできる)ができるので、テレコは基本的に不要です。とはいえ、録音を忘れて話し始めてしまうことがあるので、設定で会議が始まったら録音するという設定があるので、利用すると良いでしょう。
それでも不安で、念には念をいれてという方は、テレコをまわしておくのもいいかもしれません。
僕自身は取材日までに何度も、ZOOMを使って大きなトラブルがなかったので、IDだけ送っておけばいいかと安易に考えていました。すると、取材前日に、なんと取材相手の先生のマンションのインターネット回線の工事が入っていたということが判明し、急遽インタビューを1日繰り下げることになりました。
幸い、締め切りまで時間があったので大きな問題はなかったのですが、急ぎの仕事だったり、相手が超多忙でその時間しかとれない、というような場合であれば、致命傷になっていたかもしれません。また、逆の場合、つまり自分がいる建物に工事が入っていることもあるでしょう。
そんなこと、めったにないから大丈夫でしょ、なんて思うなかれ。われわれ編集者は、対面取材時代から、人身事故で取材開始時間に間に合わなくなったり、取材場所のルノアールが空いてなくて難民になったりしないように、些細な非常事態の可能性を考えて危機管理をしてきたじゃないですか。それと同じです。
「インタビューをお受けいただく場所のWi-Fi環境を念のためご確認くださいませ」
くらいの一言を事前にお伝えしておくのは、重要かなと思いました。もちろん逆もしかり。取材をする場所のWi-Fi情報や管理者からのお知らせには目を光らせておくことが必要です。
②取材の緊張感、スイッチをどこで入れるか
実際、1時30分ほどのインタビューを終えて、原稿にするための話は十分に聞くことができたので、その点については、対面もオンラインも、大きな差はないと感じました。
一方で、たとえば、取材先のロビーで待っている時間や、部屋に通されて取材相手が部屋に来るまでの重苦しい時間がなく、こちらが画面上の「招待する」をタップすると目の前に取材相手のお顔が現れるという、まるでテレビをつけたら出てくる人のようなシチュエーションなので、緊張のスイッチが入ることなくインタビューに突入してしまいました。
ここは、多分に注意が必要だと思います。
じっさい、このことに気づいたのは、インタビューが中盤になってから。それまで、良い緊張をしていないことに、まったく気づいていませんでした。どうしてそれに気づいたかというと、ふとした瞬間に出る言葉が無意識にラフになってしまっていたからです。
「そうなんですよ~」とか「わかります~」とか。本来なら「そうですよね」とか「その通りだと思います」というべきところを、ちょっと取材相手のとの距離感がおかしな反応をすることが多かった。しかも、最後まで距離を正しくできず、お相手の先生には失礼なことをしてしまったな、と反省をしております。
次回やるのであれば、対面の取材と同じように、10分前にZOOMにログインするなどして、緊張感を自分で高める工夫をしようと思っています。
③アイスブレイクや雑談を対面よりも重要視する
これがまさに、いわゆる「生活の変容」におけるインタビューにもとめられる変容の最たる例かなと個人的には思っております。
先にも書いたように、原稿を書くための取材であれば、ZOOMの取材でまったく問題ありません。
しかし、多くの編集者がそうだと思うのですが、取材をしながら、つねに次の著者を探し、売れるヒントを探しているわけです。そんななかでインタビューをして「この人の話は面白い」と思ったときに、どうやって次の約束を取り付けるか? ということを取材をしながら同時進行で考えているはずです。
それが対面なら、それがフィジカルの接触や接近でお互いのシンパシーを測れると思うのですが、ZOOMでは基本表情だけ。しかも物理的にディスプレイの解像度が不鮮明であって、なかなか相手のシンパシーを、画面から感じとることができません。
この先オンラインインタビューが増えれば、相手にとっては基本的にデバイスが同じ、つまり同じ環境で顔だけ変わた状況で話をするわけなので、僕は「いつものディスプレーの中の人のひとり」になりがちです。つまり印象に残りづらくなり、そのうちだれと話したか覚えていない、なんてことになって、いくつもインタビュアーのなかに埋もれていってしまいます。
とくに今回のインタビューが、僕の興味のあるポップカルチャーに関するもので、お聞きした先生のお話が本当に興味深くて、またお会いしたいという方だったので、この問題はなおさら強く感じました。先生の印象に残らなきゃ、と。
もちろん成果物によって存在をアピールすることは編集者の本懐だと思います。ですが、それだけでは、次になかなかつながらない。
「この人はくる!」という方との出会いを逃さずものにするためには、身体接触を超えたシンパシーの共有を、対面インタビューのとき以上にどうやって行っていくか、その方法はよくよく考えておかなければいけないなと思いました。
これになかなか回答はないのですが、いまのとこと具体的にできることは、単純なことですが、冒頭のあいさつなどアイスブレイクの時間をいつもよりしっかりとって、近況や相手の著書を読んだ感想などを聞くなどしてもいいと思います。
また、相手の背景に写り込んでいるものや、ファッションなど、手掛かりに話を膨らますなどしてもいいでしょう。実際、僕がインタビューした先生の後ろには、モダンアート風の絵が飾ってあってので、「先生、後ろの絵は、どなたの作品なんですか?」など、聞いてもよかったと思います。
あとは、最近やらなくなってしまったのですが、インタビューのお礼で手紙をお送りしたり、住所がわからなければメールを差し上げて、インタビューの感想をお伝えするのも、効果的だと思いました。
身体性を超えたシンパシーの共有
移動の時間も省けて、取材者と取材相手の関係もカジュアルで、オンラインインタビューは今後主流になっていくな、と思いつつも、やはり対面の記憶がある以上、どこかで全時代の様式や作法を継承しながら、オンラインインタビューに対する向き合い方を作り上げていかないといけません。
今回は取材インタビューの場面でしたが、たとえば、新しいプロジェクトを始めましての挨拶から契約まで、すべてオンラインになるということもありえると思います。そんななかで、どう身体性を超えたシンパシーの共有をオンラインで起こしていくか。
さまざまな業界で考えていかなければいけないテーマなのではなか。そんなことを感じた取材でした。
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