見出し画像

Food|僕が、「ワクチンパスポート提示必須」を掲げる飲食店があっていいと思う理由

外食ブランド、プロダクトをブランディングしていくうえで、「おいしいのが当たり前でその先に個性や思いがある」ということをよく聞きます。思いや個性をどれだけ売りにしても、おいしくなければ人の心に届かないという意味だと思うのですが、その一方で、もっと大前提として「安全である」ということにもっと目が向けられてもいいと思っています。

古代の西洋世界では、物質は、火・空気(もしくは風)・水・土の4つの元素から構成されているといわれていました。このなかでは火がもっとも高貴な元素であり、次に空気、水と続いて、もっとも高貴でないとされたのが土でした

そのため土にへばりついた四つ足の動物よりも空を飛ぶ鳥がもっとも崇高な食材とされてきた歴史があります。また、土の中や近くに成る野菜(タマネギやニンジンなど)よりも、葉を食べる野菜(ホウレンソウなど)が続き、もっとも高貴とされたのは木になる果樹でした。

それは、人間が火をもってして文明を開いたこと、空を飛ぶことができない地上に縛られた存在であることなど、さまざまな背景があったと思うのですが、ひとつに「汚れた土」の存在が大きかったのではないでしょうか。

もちろん、鳥にも果樹にも病原菌はいますが、それ以上に土に対する恐怖があった。レストランのルーツに考えられる宮廷料理のなかで高貴な人の命を守るためにも「安全性」というものも一つの要因として考えられたいたことを物語っています。

外食の歴史は危機管理の歴史

現代のレストランでみても、「安全性」は非常に高い意識が存在します。

外食の各店には、さまざまなところから食材が届きます。とくに高級レストランでは産地から直接、食材が届くことも最近は多くありますので、段ボールで商品がたくさん届きます。

その場合、レストランのなかには荷ほどき場をもつ店もあって(とくに高級店)、段ボールをそこで開封してから厨房に食材を持ち込むようにしています。段ボールは産地からレストランまでさまざまな場所を経て届いており、食中毒の危険性がある菌やウイルスが付着している可能性があるからです。

外からの菌を持ち込まないという管理を徹底しているのです。

以前のnoteで、厨房からダイニングに食中毒の原因になるような菌を持ち込まないためにデザインがされていることを、トイレを例にして書いたことがあります。

他にも食材を腐敗させないように冷蔵庫や冷凍庫、加熱機械がさまざま進化してきました。

それは、車がエンジンの進化と同時に、ブレーキの進化を続けてきたとうに、外食はおいしさを求めることと同様に、衛生管理の徹底をつねに更新してきたことを考えると、レストラン史・外食史は「感染をしない・させない」の危機管理の歴史だったということもできるのです。

外食の完全管理としてのワクチンパスポートの提示

コロナ禍にあって、外食の危機管理の歴史もアップデートが必要になってきています。

マスク会食であったり、パーテーションを設置したり、入店時の手先の消毒、店内の換気など、来店する客に対しても危機管理を要求していくことが生まれてきています。

それは、「客に負担をかけている」という面もあるのかもしれませんが、レストランの危機管理の歴史で見れば、それはある意味で危機管理の歴史の延長線上にあるといえるのではないかと思っています。

たとえば、ドレスコードのようなものも、階級社会を表しているというのは大きいと思いますが、一方で不浄な人の利用を制限する、つまり安全管理的な側面もあるのではないでしょうか。

外套(コート)や持ち物を預かるのも、菌を持ち込まないためのデザインと見てとることもできます。

冒頭にも書いたとおり、「安心・安全が当たり前」で取り立てて伝えることも少なくなってきて不感になっているのもあると思いますが、そもそも「食べ物を自分の中に入れる」という行為はとても危険なことです。

できるだけ危険因子を取り除いたうえで食事を楽しむというのがレストランの大きな役目であるとすれば、新型コロナウイルスを持ち込まない、またできるだけ感染のリスクを減らした場所で食事をすることは、その役目を、歴史的に見てもまっとうることになるのではないかと思うのです。

そのうえでレストラン内で「感染をしない・させない」を考えたときに、ワクチンの新型コロナウイルスに対する有効性は、昨日8/18(水)に大阪府が発表した内容からも、かなり立証されているといえます。ワクチン接種の有無で客の入店の可否を決めること、つまりワクチンパスポート(実在しないものですが、仮にこう呼びます)を持つ人のみ入店を可能にするなどのレギュレーションを設けることは、「レストランの完全管理」として妥当ではないかと思います。

実際利用する側としても、緊急事態宣言下でも安全に食事をできることを考える人にとっても、「うつりにくい店」は魅力的です。

自由に店を選ぶ権利がある」「行きたい店に行ける自由を奪うな」という意見もあるでしょうが、入店にレギュレーションを設けること自体は、先ほどいったドレスコードであったり、紹介制・会員制の店がすでにあることを考えると、一定数すでに利用者を選ぶ外食サービスは存在します。

もちろんワクチンパスポートの義務化を国が進めるかどうかは、専門家の議論が必要かと思いますが、それぞれの店の判断で「ワクチンを接種した人しか利用できません」というのは、その店の判断であり、店のスタンスや価値になってくることだってあります。

実際に僕自身も、同じような料理の内容、雰囲気の店が2店あったとして、たとえば家族と食事に行く場合、価格の面だけ「ワクチンパスポート提示必須」の店の方が値段が高かったとしたら、提示必須の店を選ぶと思うのです。

家族以外の食事、たとえば会社の同僚や取引先、友人との会食の場合は、全員が接種済みでないと利用できないので、別の店を選ぶことになることになりますよね。ですので、接種してない人たちが利用できる店も、もちろん必要だと思うし、打ちたくない人がいることも許容できる社会であるといいと思うので、すべてにおいて義務化をするのが正しいとは思いません。

しかし、すくなくても「選べる」ようになっていることは、利用者側としてはいいことだと思っています。それぞれのお店の客層などによって「ワクチンパスポートの提示義務化」を行うことは、選択肢として十分あり得るのではないかと思っています。

ーーーーーー

明日も「Food」の話題を。

料理人付き編集者の活動などにご賛同いただけたら、サポートいただけるとうれしいです!