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「料理人付き編集者」ってなんだ?

料理人付き編集者とは、料理人や食のプロフェッショナルに付き、その人の考え方や未来像を引き出し、もっとも最適な表現で、伝えたい人に伝える方法を、シェフとともに考えていく編集者のこと。既存のメディアをもたない、編集者の新しい姿でもあります

料理人も個人の時代になっていく

料理人が、料理を作る人だけでなく、ボランティア活動や、社会的な啓もう活動、イベントの発起、SNSという新しいメディアでの執筆活動、はたまたインスタグラマーなど、さまざまなコンテンツを持つようになってきました。

また、メジャーブランドが自身のプロダクトに想いや物語を載せていくためにオウンドメディアを大いに活用しています。

レストランは、ほんの10年前まで、閉じられた場所でした。しかし、インターネットとSNS、スマートフォンの登場で、レストランも民主化され、レストランの中だけの存在だった料理人が、キッチンを飛び出し、注目を集めることになります。ほんの5年前まで、「あそこのレストランに行こう」だったのが、今は「あの人の料理を食べにいきたい」というように変わっていったことは、多くの人の実感として、あると思います。

シェフを紹介するときに、数年前であれば、「●●レストランのシェフ」という説明だけで済んでいました。それぞれの料理人に適した切り口での紹介(それはどこの層に向けた発信であるかによっても変わっていきます)が必要になってきています。

この先の未来、料理人には、今よりもさらに個人としての発信を求められる(シェフ自身のオウンドメディアも重要になります)ようになっていきます。さらに、もっと未来を見た場合、これから先のレストランは、チームが強調されていくと僕は思っているので、シェフ個人の発信と、シェフが率いるチームの発信も必要になります。

そんなときに、外からの視点(その情報がどこにどう伝わるか)をつねにもって、ものごとを見ている「料理人付き編集者」という存在が、かなり必要になってくるのではないかと思っています。

料理人付き編集者って、なにすんのよ

そうですね。具体的には――

・シェフ発信のメディア(SNSが中心)の企画、編集

・プレスリリースなどの広報素材の編集

・チームビルディング構築時のコンセプトワークなどの編集

・世界的なレストランの潮流や日本の飲食業界の動向からみた、そのシェフの個性の掘り出し

・イベントの企画運営とかも含まれるかも

になるのかなと思っています。

広報となにが違うのか、というのが多くの人の疑問だと思います。そのあたりは、はたから見るとたぶんあまり変わらないかもしれません。

自分のなかでは、あまり広報の仕事とは、重ならないと思っていて、シェフ付き編集者はあくまで「情報の編集」であって拡散が専門ではないということ。広報は、文字通り「広く報せる」ことであり、情報伝達の手段のプロだと思っています。もちろん、広報力(フォロワー数とか)があった方がシェフ付き編集者としては有利ですし、シェフ付き編集の仕事のなかには、「どう広く報せる」かのデザインも含まれるので、広報との連携はとても重要になってくると思っています。

シェフ付き編集者は個人的な営みであるべき

僕がシェフ付き編集者っておもしろいな、と思うのは、料理人という存在が、「もっと広く、正しく、料理人のすばらしさを多くの人に伝えることができる」ことです。

レストランで食事をして、何度も感動させられています。

最初の記憶は、料理雑誌の編集をしはじめたころに食べたエスキスのリオネル・ベカさんの料理です。まだ、食の経験がなく、料理をジャンルや国籍で食べていた僕に、リオネルさんの料理を食べて「お前はどこにいるんだ、お前は何者だ?」と、迫られるような感動を覚えた記憶があります。それは、映画『イージーライダー』のラストで、主人公二人が名もない田舎の農民にショットガンで車ごと炎上させらるシーンを見たときのような、衝撃と感動。

リオネルさんの言葉ではなく料理から、深い洞察と、思い込みからの解放、論理的な自由を感じとることができたことで、それが自分の生き方すら見直すことになったのです。

料理は、人生を変え、豊かにすることができる。そう信じていますし、それを多くの人に体験してもらいたい。そのためには、これからも、深い洞察と、伝統に縛られない発想、ロジカルな思考をもった料理人にどんどん出てきてほしい。そして、僕自身、その強烈な感動を、また味わいたい。

料理人付き編集者をすることは、そういった自分の料理に対するワクワク感を持ち続けるための、超、超個人的な営みでもあります。

超、超個人的な営みということもあるので、マネタイズの方法については、また別に書こうと思いますが、シェフ付き編集者は、シェフからではなく、シェフのファンからの直接課金がいいと思っています。

今、数人のシェフや職人付きの編集の仕事をはじめています。ほんとうに小さな試みですが、賛同していただき、応援してもらえれば、続けていく勇気になります。未来の食が豊かであることは、人間の豊かさになることだと信じで、取り組んでいきたいと思います。

料理人付き編集者の活動などにご賛同いただけたら、サポートいただけるとうれしいです!