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Human|編集者をやっていてよかったなぁ、と思った話(自己紹介テンプレ④)

飲食店と食べる人の距離が物理的に離れてしまった今、心や想いの距離をお互いに近づけていくことは、これからの飲食店が選ばれていくうえで、かなり重要になってくるのではないでしょうか。

そんななか、noteを書いて発信していきたいと思っている飲食店の方々向けに、文章力アップ自主トレメニューというのを作っています。この自主トレメニューによって書き始めのサポートができればと思っています。

自主トレは、4つのメニューがあります。そのメニューを書くうえで、お手本やテンプレがあったと方がいいかなと思い(偉そうにすみません)、僭越ながらテンプレとして書かせてもらいます。なお、僕は飲食店従事者ではないが、リアリティを出すために編集者に置き換えて書いていきます。

今回は、自主トレプログラムの最後のメニューを実際にこなしてみたいと思います!

届いただけでなく、動いてくれたとき

編集者になって17年半、もう数えきれない雑誌・書籍を作ってきて、折につけ「編集者やっていてよかったなぁ」とか、「いい本ができてよかった」と思う瞬間があります。

たとえば、ずっとインタビューしたかった人に取材ができたときとか、思い描いたような本ができて満足したりとか、取材した方に「良い記事を書いてもらってありがとうございます」と言ってもらえたときなど。

編集の仕事は、取材したりインタビューしたりする「楽しい」時は、ほんの少しで、あとは細かい大量の仕事を泥だらけになって這いつくばりながらやっていったり、心が擦り切れるぐらいまで原稿に向き合ったりする職業。はっきり言って辛い時間が多いので、そういううれしい瞬間は、過酷さの反動もあって「やっててよかったなぁ」と、強いカタルシスを感じるものです。

そのなかでも、最高にうれしい瞬間は、「本を買っただけでなく、それを読んで行動してくれた」瞬間です。

2019年春の展覧会「クリムト展」にあわせて編集をした《クリムトへの招待》(朝日新聞出版刊)という本を作りました。展覧会が始まり、自分でもチケットを買って、東京都美術館に観に行った時のことです。その日は、休日ということもあって入場の列が館外にまで続いていました。


館内に入ると、ディズニーランドのアトラクションのように、入場待ちの列がおり曲がって行ったり来たりしています。

僕は、おそらく30分ほど並んでいたと思います。

折り返して向こう側から来た60歳くらいのご夫婦の奥さまが、本を熱心に読みながら向かってくるのが見えました。「予習して絵を観るなんて、熱心な美術ファンのご夫婦だな」と思ったら、なんと僕が作った《クリムトへの招待》を熟読しているじゃありませんか! 思わず「わぁ」と声を出す僕(これ本当の話)。

この年の「クリムト展」は、春の目玉の展覧会で、たくさんの出版社から類書が出ていました。そのなかで僕らの1冊を選んでくれただけでもありがたいのに、本を読んで、さらに展覧会まで持っていて、ギリギリまで読んでくださったというのは、本当にうれしかった。読んで終わりではなく、「会場まで持っていく」という行動するほどの良さがあったということですから。

じっさい本屋さんで買っていく場面や、料理雑誌時代には取材先で定期購読をしてくださっているお店に行くことはありました。それも十分うれしいのですが、このときはそれをはるかに超えるありがたさで、うるっときました。

料理雑誌に残した本でも、読んでくれた方を動かすことができて、「編集者をやっていてよかったな」と思ったことがありました。それは、noteのなかにありました。

代々木上原のレストラン「sio」を退職するAyumu SUDOさんが、sioでの充実した1年を振り返るnoteのなかで、入店のきっかけが、僕が中心になって編集した雑誌の特集を読んだことだったと書いてくれています。

雑誌では、編集者が読者の方々と交流をするようなことは、読者カードやeメールで感想を寄せてくださることはあって、ありがたいと思うのですが、雑誌を読んで人生を変える決断をしたという方の声を聞けたのは、「やっててよかったなぁ」と強く思えた瞬間でした。

雑誌や書籍が「情報」として処理されただけでなく、その情報をもとに「行動」まで読んだ方をさせられたというのは、やっぱり「良い本」であったことの証で、僕にとっては、それが一番価値があると思っています。

もちろん重版をして、何万冊と売れたりするのもうれしいですが、どうもリアルにその広がりを実感できないものです。じっさい、10万部売れても、1200人に一人しか、持っている人に出会えないわけですから。そのなかで、本がきっかけになったという話や場面を見られるのは、めったいにないことなのです(だから、ついついTwitterでエゴサしてしまう笑)。

そう思うと、編集者としてのカタルシスは、売れることよりも(もちろん売れた方がいい)、どれだけ読んだ人の人生を変えられる本ができたか、の方が得られるんなんだなぁ、と改めて実感(個人差あり)。

しばらく出版から離れたいなと、いまは思っていますが、それでもやっぱり僕が編集した何らかのプロダクトによって、考え方やちょっとした習慣が変わったといってもらえるようなものを作りたいという思いは変わらないんじゃないかと思う。

あなたにとって最高の出会いを。

そのために明日も考え続けていきたいです。

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ちょっと長くなってしまいましたが、これが最終プログラムの見本です(なんか、偉そう)。

書いてみて思ったのは、「仕事をしていて、何が一番うれしかったか」を考えることは、自分が求める仕事へのモチベーションだったり、そもそも本質的に自分の仕事のどこに価値を見出しているのかを、改めて考えることができるプログラムだと思います。

自主トレメニューの解説では

「こんなすてきな体験ができるお店なんだ」という、体験を想像することができます。料理写真を見て「おいしそう、食べに行きたい」という、良質な疑似体験が実体験への欲求が生むように、「あなたのお店に行きたい」と読者が思ってもらえれば、トレーニングの成果としては大成功です。

と書いていますが、編集者になりたいな、と思ってもらえる文章になったでしょうか。出版業界はなかなか厳しいですが、編集的思考は、さまざまな業界でとても大事になってきます。

キャリアアップのひとつの選択肢に編集者が入ってくると、いい人材が入ってきて業界も活性化していくと思うので、興味があれば3年くらいやってみるのも面白いと思いますよ。

それでは、みなさん、ぜひ自主トレメニューを完結させてみてくださいね!

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お願い
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