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【Steam版】イースIX -Monstrum NOX-のレビュー・感想

2019年にリリースされたファルコムの看板タイトルであるイースシリーズ最新作のPC移植版。
前作と違い、ちゃんとマウスの4と5ボタンを対応してくれるだけで、評価に値する作品だと思います。

冗談抜きで2021年はすでに半分くらい経ったのに、未だにマウスの4と5ボタンを対応してくれない新作の和製ARPGはたくさんあります。
多分日本のゲームメーカーはPCユーザーのみんなはコントローラーを持ってると勘違いしてるようだが、実際あっても使わない人が多く、特にキーボードマウスに拘るMMO勢は結構いるから、マウスの4と5ボタンの対応はすごく大事だと思います。

実際本作では、マウスの4と5ボタンがないとキーボードマウス勢にとってはほぼ無理ゲームになるので、対応してくれることを、本当に感謝してる。


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では、まずバトルシステムから話そうか。
一言で言えば、「バランスが洗練されたイース8」という感じです。

はっきりいうと、バトルシステム自体は前作の流用みたいなものなので、Seven以降の作品をやったことがある人であれば、多分チュートリアルすら必要がないと思います。

そして、今回は異能(ギフト)という特殊行動の追加によって、SEKIROの鉤縄移動のように飛んだり、壁を走り登ったり、翼が生えて滑空したりすることができるので、今までのない自由度を手に入れた。

特筆すべきなのは、戦闘スキルとフラッシュムーブのバランス調整です。
前作をやったことのある人ならわかると思いますが、前作のフラッシュムーブは強すぎて、一回発動させたら敵とその攻撃判定はほぼ停止するので、そこでフラッシュガードも発動させ、攻撃スキル連打して、フラッシュムーブが終わる前に敵の攻撃判定に戻ってもう一回フラッシュムーブを発動させるという戦法は日常茶飯事だった。

そのため、一部対応しやすい連続攻撃持ちのボスは一回のフラッシュムーブを発動させたら、ボスがブレイクされるまで一方的に殴ることができるという問題があったけど。

今作では戦闘スキルのSP消耗は前作の2倍から3倍となり、一回100 SPを使うスキルすら存在してるので、スキル連打自体は前作より控えめになった。

そしてフラッシュムーブの判定もが非常にシビアとなり(前作を起動して確認済み)、はっきりいうとフラッシュムーブよりフラッシュガードを狙った方が効率的という調整になってる。

しかし、こういった弱体化を受けたにもかかわらず、今作のボスは初見ハードでもゴリ押しで倒せるのは事実です。
特にラスボスは上記の異能を活かす前提としてデザインされたせいで、結果的にボスはずっと攻撃してるのに、プレイヤーはずっと空にいるという全然噛み合わなく、ボスの攻撃をガード・回避する必要すらないくらい弱かった。
前作の表ラスボスはSevenのラスボスより弱いと言われたけど、今作のラスボスは前作の表ラスボスより弱かった。

操作性についてですが、ぶっちゃけ前作と大差がない、ダッシュ中の慣性がなくなったくらいです。
一応今作はツタを登る必要がない上、足場から落ちてても異能でカバーできるから前作のようなストレスはあまりないんです。
あとはオプションに足場を増やすという設定もあるから、多分公式は操作性の問題自体は理解してると思います。

前作に比べて、今作のやりこみ要素も少なかった、そしてあの蒼花びら回収はしんどかった。


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個人的に、一番納得できないのはUIです。
今作はストーリーのテーマの関係でUIはわざとシンプルにするのはわかるけど、流石にシンプルすぎる。
イースシリーズの体力ゲージはずっと下にあったのに、今作だけは中央の右になってる。
6からオリジン・4リメイクまでは左下、Sevenと8は右下だった。旧作ユーザーにとって左下は当たり前で、右下は一目で体力とSPとExtraの状態を確認できる。

しかし、今作は中央の右にあるため、目はわざわざそこを見る必要があるという感じをした。
しかも今作の体力ゲージも現在の体力だけ書いていて、母数がわからないんです。そのため、目の前にいる敵の攻撃は何回受けたら倒されるのかすぐ計算できないんです。

そして、味方の体力ゲージだけじゃなく、ボスの体力ゲージもちょっと見づらいです。地味すぎてたまにパッと見てもわからない、特にあのブレイクゲージはまるで1ピクセルのような感じで、いままで一番見づらいじゃないかと思います。


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前作のタワーディフェンスも健在してるが、今作のタイミングは全部メインストーリーが始まる前に行うために、前作のような空気読めない展開がなくなった。

そして今作のサブクエストはタワーディフェンスをアクティブさせるトリガーになってるため、見逃すことはほぼなくなった、でも逆にいうと実質強制的にやらせるとも言えます。
あとは、サブクエストの大半はパシリであまり面白くなかった。

前作のロケーション探しもあるけど、前作は未開の無人島だったから筋が通った、しかし今作は別に再開発や再建があるわけじゃないし、下水道の水たまり場・湧き水の貯水池・隠れた薬草の畑などの場所を観光スポットにするなんて、恥ずかしくないのかという感情すらあった。


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ストーリーについてですが、正直にいうとイースとしては微妙だった。
まずこれはしょうがないと思うが、今作はバルドゥークという町の話なので、最初から最後までバルドゥークとその周辺に行動することになる。
「これは冒険と言っていいのか」、これが自分の一番最初の感想です。

今までのイースをやる時、「次のエリアはどんな場所かな」というわくわくがあったけど、残念ながら今回は本当になかった。
下水道、洞窟、監獄、洞窟、監獄、洞窟、監獄、洞窟、監獄。
マジでずっとこういう感じでした、しかもBGMもあまり印象に残らないため、とりあえず全体的に薄味でした。

ネタバレになるため詳しく言えないけど、今回のストーリーのもう一つの問題は「果たしてこれはアドルが主役なのか」というほどのモブっぷりです。
今回はリアルのイギリス・フランスの百年戦争をモチーフにして、怪人たちの成長、ヒロインの秘密とグリア・ロムン帝国の政治問題にまつわる話なので、はっきりいうと、どっちかっていうと内容は軌跡シリーズの感じが強かった。

そのため、アドルのはあくまで物語を見せる役で、今までのイースに比べて、そこまで深く関わってないとも言える。
そもそもアドルはグリア人でもロムン人でもないし、仮に今回の件は解決できなかったとしても、アドルはそのままバルドゥークから離れることができるくらいの赤の他人でした。

ストーリーは半分以上味方の背景や成長を描写してるけど、ヒロインのアプリリスの話は終盤まで一切言及しなかった、そして終盤になったら一気に説明してくれるという流れも悪かった。
前作のような一緒に冒険してくれるのは異例とも言えるけど、流石に今回のような味方と言われても実感がないというのはまずかった。
結局終盤でヒロインの過去など説明してくれても、こっちは最初からヒロインに何の感情も持ってないから「へぇーそうなんだ」という反応しかなかった。

せっかく百年戦争やジャンヌをモチーフにしたから、もっとそっちの話を深く掘ってほしかったんです。

そして、今回のストーリーの一番やばいところは、無理やりな展開が多すぎる。ネタバレになるから一応伏せるけど、牛が発狂して闘牛士を襲い、ガチ一般人の小学生が観客席からアリーナに飛び降りて闘牛士を庇うという展開があるけど、距離と高さ、速さなどを考えるとありえないじゃないか?
しかも、あの短時間に味方は自分の正体がバレないように観客席から離れて怪人に変身してアリーナに飛び降りて小学生を助ける、もうめちゃくちゃだよ、という感想しかなかった。

それにイースオリジンのボスが現れるのも物語的にはおかしかった、アドルが700年前のことを知ってるわけがないし。

一番許せないのはラストの展開、これはマジで言っていけないので内容は言わないけど、あの展開は深夜のなろう系アニメ作品でもびっくりするくらいご都合主義だった。

今回のストーリーは本当にこういうのが多すぎて、8のシナリオを考えるとお世辞でもいいとは言えなかったんです。

対話シーンも長すぎて、戦闘パートと自由に動ける時間が少なかった、参考として、最初から4章まで、セリフを飛ばさない場合は8時間前後で、全スキップの場合は2時間くらいでした。
ADVとしてはいいけど、アクションゲームとしてはどうでしょう…


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まとめにいうと、今作のバトルは面白かったけど、全体的に言うととても優秀な作品とは言い難い、それでもやり甲斐はあるし、イースファンならやるべきだと思います。

確かに神作品とも言える8の次回作だから、前作より劣ると思われたり、失望を感じたりするのは別におかしくないことですが、流石に今回はそれ以前の問題だと思います。

それに今作はオリジンから8までのオマージュを結構やったので、記念すべきの次回作(=10作目)はどうすればいいのか、正直ちょっと心配です。

最後は、自分は全クリアするまで4回くらいのゲームクラッシュがあって、やっぱり日本一の移植だな~と思いました。


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ここからはちょっと余談です。
8の世界滅亡は元々世界規模だったけど、流石にスケールがでかすぎると思ったのか、ファルコムの社長さんがそれを「セイレン島とマイア信仰の地域だけ」に弱体化したようだけど、実はこれはこれで物語が破綻するじゃないかと思いました。

8のテーマの一つは進化論です、終盤のダンジョンは世界は海洋期・氷河期・虫の時代・宇宙からの文明が訪れるということを明らかにしたけど、これはどう考えても世界規模であり、逆にいうとマイア信仰の地域のみだと、あの地域が氷河期に入った頃、他の地域はどうなった?サラとの戦う場所を考えると、その種族の全員がマイア信仰の地域に上陸したとは考えにくい。

だからこの弱体化は単に物語を破綻させただけで、正直スケールがでかすぎるとしても修正するべきではなかったと思います。

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