見出し画像

月が綺麗だよ

半年くらい前に、「男友達という存在」という記事を書いた。
優しくて仲良しな男友達に期待してしまったけれど、期待することをやめてこの時間を楽しもう、というようなことを書いた気がする。

あれから本当に仲良しになって、平日はお互いの家でご飯を食べたり、土日は二人で出かけたり、思っていることは何でも話せて、気を遣わずに過ごせる、そんな存在に彼がなった。

去年はお互い仕事が大変で、彼も精神的にきつそうなときがあった。
そんなとき、いつも彼はわたしを頼ってくれていた(と思う)。
「精神的に疲れたから会いに行くね」
そんな風に言ってくれることもあった。

いつも明るくて元気な彼がそんな姿を私だけに見せてくれているのが嬉しかったし、私も彼の力になりたくて、ご飯をつくったり、話を聞いたり、彼のそばにいたいと思った。
そのときには私の中の彼への感情は、もう友情じゃなくて愛情になってしまっていたと思う。

彼も私が大変なときには、一緒にご飯を食べて話を聞いてくれたし、今週頑張ったからと言ってケーキを買っておいてくれたりした。
彼の微笑む顔が優しくて、本当はくっついていたかったけど、私たちは友達だったから、ただケーキと幸せを噛み締めることしかできなかった。

彼と過ごす時間が増えていき、季節が巡っていくうちに、彼と私の関係がただの友達だということに苦しみを感じるようになってしまった。
彼は私に触れてこないから、彼がそういう気がないんだというのは頭ではわかっていたけど、でももしかしたら大切だから触れられないだけなんじゃないかとか、期待することをやめようとしていたことを忘れてまた期待してしまっていた。

だからいつまでも進まない関係に我慢ができなくなって、告白することにした。

いつも言うタイミングを伺っていたけど、何度も頭の中でシュミレーションしたみたいにはならなくて、何度も機会を逃した。
そして大晦日に、彼に「ずっと好きだった」と伝えた。

振られるんだろうと思っていたけれど、彼も私のことを好意的に思ってくれていたみたいだった。けれど、振られも付き合えもしなかったので、相変わらず関係が変わらないままだった。

1月中は、彼の態度も変わらなくて、相変わらず一緒にご飯を食べたり、遊んだりした。
これは、もしかしてキープというやつなのでは?とか思って、私はキープになんてならないぞ!と無駄なプライドで、ちょっとだけLINEの返信を冷たくしたり自分から連絡しなかったりした。

彼と遊びに行った帰り、車で家まで送ってくれて、いつものように車でおしゃべりをしていて、なんとなく返事を聞くなら今日だなって思って、タイミングが掴めずに途切れ途切れの会話をしていた。
話題がなくなって、一瞬空気が張り詰めたとき、彼から話をしてくれた。

告白されてから、毎日考えていたこと、何かあるとすぐ連絡したくなってしまうこと、でも友達だということ。それはこれからも変わらないということ。
話の入り口がポジティブだったからまた期待してしまって、友達というワードにやっぱそうだよなと落ち込んでしまって、何にも考えないまま口から出てきたのは、
「このまま一緒にいたら相手ができない」
という言葉だった。
彼は、
「じゃあもう一緒にご飯食べなくするとか、一緒に遊ばないとか?」
とこちらを見ていたけど、私は彼の顔を見ることができなくて、
「私もずっと一緒にいたいけど、私のことを思うならそうして」
とどこかから引用したような台詞が出てきた。

じゃあ、最後だからと
車から私の部屋の扉の前まで送ってくれて、
「こんなこと言うべきじゃないかもしれないけど、寂しい」
とすごく悲しそうな顔で言うから、また期待しそうになってしまった。
私は「そりゃそうだよね」とか全く可愛くない言葉が出てきてしまって、後からすごく後悔した。

私たちの関係は、それからガラッと変わってしまった。
彼は私のお願いを聞いてくれて、全く連絡も来ないし、二人で会うことを避けるようになった。
なんでそんなにちゃんとしてるの、もっとクズな男になって私をキープしてくれればいいのにって、何度も思った。
彼が辛いときそばにいられないのが悲しい、というか私以外の誰かが彼のそばにいるのが嫌だ。
愛情だと思っていたのに、私の気持ちはエゴなんだっていうことに嫌というほど気付かされた。
そして好きになってしまってごめんねと何度も思った。

月が綺麗だよ、といつも連絡をくれた彼。
「月が綺麗ですね」は「愛してる」の意味だって知ってたのかな。

いつか未来の私が、この記事を懐かしんでくれるといい。

この記事が参加している募集

忘れられない恋物語

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?