第6回__きっかけはダイニングテーブル_-1

きっかけはダイニングテーブル(神戸新聞「随想」第6回

ここ数年、喪中はがきがとても多い。同じ世代の友人・知人たちの親たちが、そろそろ鬼籍に入る時期になったのだと思う。親と自分たちの生活をどうするか、と言う話はよく話題になる。特に片親になった場合、病気やケガでもなければ、本人の意思を尊重したいと思う。私たちが決断したのはリフォームだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

平成最後の大晦日、米寿を迎える母は、大掃除が手抜きになった言い訳に「椅子が重いんやもん」と嘆いた。それはそうだ。24年前、震災の年に新築した家のリビングは母の希望で広く、ダイニングテーブルはその場所に相応しい重厚なものを購っていた。

だが、年齢とともに足腰が弱くなると、重い椅子を動かすことが苦行になってしまったのだ。

そういえば、と気づく。最近では床にぺたりと座り、下手をすると座ったまま移動している。床から立ち上がるのも億劫なようだ。徐々に足が覚束なくなっていたのはそのためだったのか。

思い切って、今後どうしたいか母に尋ねた。すると「できるだけこの家で暮らしたい」という。ヘルパーさんの助けを借り、衣食住、困ってはいない。ケアマネさんや近所の人も助けてくれる。

ならば暮らしやすいようにリフォームしよう。

調べてみると介護保険と併せて神戸市住宅改修助成事業から100万円の助成金が出るじゃないか。これを使わない手はない。あんしんすこやかセンターにも相談し、GOサインが出た。 

そこからは市のホームページと首っ引きで書類集めに奔走した。これがかなり煩雑で、高齢者が自分でやるのは難しいかもしれない。

書類審査が通り、神戸在宅医療・介護推進財団の専門チームが来訪。母の様子を4時間余りつぶさに観察し、風呂の改修や手すりの位置、トイレの段差など細かくチェックする。母はへとへとだ。

改修工事が決定後、最初にダイニングテーブルを捨てた。くびきのような家具を処分すると身軽になってせいせいしたのか、母はなんだかとても嬉しそうに笑った。(神戸新聞夕刊 11/28)



























































































 平成最後の大晦日、米寿を迎える母は、大掃除が手抜きになった言い訳に「椅子が重いんやもん」と嘆いた。それはそうだ。24年前、震災の年に新築した家のリビングは母の希望で広く、ダイニングテーブルはその場所に相応しい重厚なものを購っていた。
 だが年齢とともに足腰が弱くなると、重い椅子を動かすことが苦行になってしまったのだ。
 そういえば、と気づく。最近では床にぺたりと座り、下手をすると座ったまま移動している。床から立ち上がるのも億劫なようだ。徐々に足が覚束なくなっていたのはそのためだったのか。
 思い切って、今後どうしたいか母に尋ねた。すると「できるだけこの家で暮らしたい」という。ヘルパーさんの助けを借り、衣食住、困ってはいない。ケアマネさんや近所の人も助けてくれる。
 ならば暮らしやすいようにリフォームしよう。調べてみると介護保険と併せて神戸市住宅改修助成事業から100万円の助成金が出るじゃないか。これを使わない手はない。あんしんすこやかセンターにも相談し、GOサインが出た。
 そこからは市のホームページと首っ引きで書類集めに奔走した。これがかなり煩雑で、高齢者が自分でやるのは難しいかもしれない。
書類審査が通り、神戸在宅医療・介護推進財団の専門チームが来訪。母の様子を4時間余りつぶさに観察し、風呂の改修や手すりの位置、トイレの段差など細かくチェックする。母はへとへとだ。
改修工事が決定後、最初にダイニングテーブルを捨てた。くびきのような家具を処分すると身軽になってせいせいしたのか、母はなんだかとても嬉しそうに笑った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?