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【映画感想】新鮮な映像で「本当」を探る『落下の解剖学』(2023・フランス)

フライヤーを見て一目惚れし、ずっと気になっていた作品。アマプラで配信が開始したぞ!2時間半と長めの映画だけど、とても面白かった。犬がとあることに巻き込まれるので、それだけ注意かな。(ただし最後まで元気!)

雪山の山荘で、ある男が転落して亡くなった。どうやらただの転落ではないらしい。第一発見者は視覚障がいのある彼の息子。疑われたのは彼の妻。これは事故か、そうではないのか。

好き度:★★★★☆

新鮮な映像

本物のニュース映像のように差し込まれていたり、ドキュメンタリーっぽい手持ちカメラのぶれた映像、ときには犬目線の映像もあった。時間的には長い映画だけど、映像が面白く飽きずに見ることができた。

何を信じるか

韓国ドラマの『ロースクール』を思い出した。ある事件をきっかけに、複数の視点から真実はどこにあるのか?を探っていく。

裁判がはじまって、さまざまな人物が検証し推測する。唯一の証人は息子。彼だって何を信じれば良いのかわからなくなる。自分の記憶が本当に正しいのか、今まで見てきた両親の姿は本当の両親だったのか。その疑心暗鬼になる様子がこちらにもありありと伝わってきて、不安になった。目の前にいる人が本当はどんな人なのかわからない。人間関係はとても脆く危うい。

家庭という閉ざされた空間

後半の夫婦の言い合いは圧巻。夫の故郷で暮らす妻。妻が執筆活動できるよう息子の自宅学習や家事を担う夫。どちらがどれだけ譲歩して我慢して、自分の時間がないのか言い争う。このやりとりはリアルすぎる。まったく同じでなくても、見覚えがあるようでヒヤヒヤした。(お皿を投げたことはない)

家庭のなかで何をどれだけ分担していくか。必要なら調整して分担を変えて。一生をかけてすり合わせてうまくやっていくしかない。

真実

結局のところ息子の証言によって裁判は終わりを迎えるのだが、真実は闇の中だ。男の考えていたことはわからないし、何があったのかも本当のところはわからない。個人的には容疑をかけられた妻の友人の弁護士がなんだか怪しいと思っていたのだが、どうだろう。

現実は白と黒だけではっきり分けられることばかりではない。「わからなくても一方に決める」ことでしか進めないこともある。フィクションでありながら、リアリティがあり、面白かった。

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