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#国際女性デー で伝えたい「カメラマン」ではなく「フォトグラファー」と名乗る理由

「女のひとだと思わなかった」

地方で撮影があり、あいさつをするとこんな言葉を言われること度々がある。
私にびっくりしたように直接言う人もいれば、あいさつをして私が部屋を出てからこっそり言う人もいる(聞こえてますよ〜と心のなかで思うのだ)

撮影の仕事はほぼ東京でしていて、いままでたくさんの人たちと一緒に仕事を共にしてきたけれど、「カメラマンさんが女性とは思わなかった」とは一度も言われたことがない。むしろ、数少ない地方の現場でこれだけ言われるということは、地方では「カメラマン」=男性の職業というバイアスがまだまだかかっていて、自分自身が身をもって目の当たりにする瞬間でもある。というか、そもそも「カメラマン」=男性の職業という決まりなんてないし、そんなこと誰が決めたんだという感じなのだけど。

地方で接する「仕事で写真を撮る人」は学校の記念撮影や、家族写真など限られているかもしれないし、たしかに自分も地元で「仕事で写真を撮る人」と出会ったときは全員が男性だった。

PCや照明、三脚やら荷物をもりだくさん持って撮影現場に行くこともあり、力仕事ではあるし、納品の期日が迫って夜遅くまで作業することもたまにあるし、体力勝負なところももちろんある。

それに、昭和や平成の時代は商業のカメラマンは男性が多いのははっきりわかっている。

だけど、それだけの理由で「カメラマン」=男性の職業と括られてしまうのはやっぱり私は納得がいかなかった。

たまに、「女性目線だからこそ撮れる写真を」と言われることがあるけど、それもいまだに腑に落ちてなくて、「女性目線」とは…というより、写真を撮る人自身の「作品性」や「個性」なのではないかと思っている。(頼み方の問題というか)

私は旅や地方創生のメディアでいくつか撮影の仕事をしている。旅も好きだし、地方に住む人や歴史、そこで生まれたモノがとても魅力的なことも知っている。そんな魅力を自分の写真でたくさんの人に伝える仕事はとてもやりがいがあって楽しい。(この話はまたどこかで)

でも、もうひとつ、私が地方に仕事で撮影に行き続ける理由があって、それは「仕事で写真を撮る女性がいる」というのをたくさんの人に知ってもらいたいというのがある。
東京や大都市に住んでいる人からすれば、「そんな女性のカメラマンさんなんているでしょう」と思うのだろうけど、その当たり前がちょっと地方に行くだけで当たり前ではなくなるのだ。事実、私は何度も「女性が来るとは思わなかった」と言われている。(言った本人も特に悪意はないんだと思う)

先月、都内の街中で仕事でポートレートを撮影していたら「カメラ女子を撮っていて、あなたのことを撮らせてください!」と、撮影中にいきなり声をかけられた。

「女性のカメラマン」が当たり前ではない人にとっては私なんて「カメラ女子」というフワッとした括りにしか入らないんだろうなと思う。

だからこそ、そういう人たちに「女性でも写真で仕事をしている人がいる」というのを伝えていきたいと思っている。

私の出身はとにかく田舎で家族も学校の先生もびっくりするほど女の子に対して昔ながらのステレオタイプな考えを持つ人ばかりだった。「地元の国立大学に行って、学校の先生になって、地元で結婚する」「地元の短大の文学部に入る」なんてことを進学の話になるたびに言われ続けていて、私は美大という選択肢があるのを3年の秋頃に初めて知るくらいで、進学の選択肢として悩む時間もなかった。

もちろん、自分の未来についてしっかり見つめて、調べたりすれば、いろいろな選択肢を見つけられたのかもしれないけれど、それでも周りの環境って大きいんだなと東京に出てきてから何度も思うことがある。

だからこそ、もし地方に住んでいる中学生や高校生の女の子たちが写真に興味を持ったときに、「写真で仕事ができる」という選択肢を知ってもらいたいと思っている。もちろんそれは「選択肢」なので、「女の子のみんな!写真で仕事しようよ!」と煽るつもりはまったくないし、趣味として楽しめるのであれば、それで良いと思う。あくまで「選択肢」として、そんな未来があるんだよと知ってもらいたいのだ。

そのために私ができることは、私を見て「女性が来るとは思わなかった」と言う「カメラマン」=男性の職業と思い込む人たちを減らしていくことだと思っている。

もちろん言葉で「女性で写真の仕事をする人だっていますよ」と伝えることもそうだし、しっかり満足のいく撮影をして「撮ることに男女の違いは関係ないんだな」思ってもらえる写真を見せることも手段だと思っている。

私は自己紹介をするときに「フォトグラファーの三浦えりです」と必ず言うようにしている。クライアントさんが、撮影現場で私を紹介してくれるときに「カメラマンの三浦さんです」と伝えても、私は絶対に「フォトグラファー」と名乗るようにしている。

そこにはカメラ「マン」という言葉に私なりに小さな抵抗をしているのだ。「マン」は男性の意味ではなく、「マン=人間」の意味合いで、重箱の隅をつつくようなことかもしれないけど、それでも男女関係ない「写真を撮る人」としてわたしを見てもらいたい気持ちがある。

「カメラマン」という言葉ができた当時の欧米では男性の職業だったんだと私は思っている。けど、いまは「カメラマン」という言葉ができた時代とは違い、いろいろな人、場所、モノや時間を写真で残し、たくさんの人にその魅力を伝えるこの職業は男性だけのものではないのだ。

「女性が来るとは思わなかった」なんて言われる世の中を自分なりに変えていきたいと思っている。

だから私は「フォトグラファー」と名乗っているし、これからも
「フォトグラファーの三浦えりです」と自己紹介し続けていく。

わたしのポートフォリオサイトのトップはずっとミモザの写真なのである。

いままで撮ったミモザの写真🌼


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