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戦争体験を聞くのは、大人になってからでも遅くない

私は戦争経験者の話をほとんど聞かずに育ってきた。祖父母も話そうとしなかったし、学校でもそういう取り組みはなかった。育った土地柄なのか、話したくない人が多かったのか本当のところは分からない。

なので、戦争について知るとすれば、歴史の授業を始め、ドラマや映画、本などで知るくらいで、リアルな話というのを想像できないでいた。

ただ、何年か前に、生家に住む祖母に旦那さんを紹介するために泊りがけで訪れたときに、初めて祖母は戦争の話をしてくれた。正直、びっくりした。小学生の頃から離れて暮らしていて、頻繁に家族で実家には帰っていたけれど、戦争の話をしたことは一度もなかった。

私の実家は山のなかの小さい田舎町(むしろ村というべきか)で、祖母もこの土地の出身だと思っていたので、空襲などの被害を受けることはなかったのだと思っていた。

1945年の夏に宇都宮空襲があった。その際に、姉妹と一緒に近くを訪れていたらしく、偶然にその空襲に出くわしたらしい。

記録によると宇都宮の市街地の半分、また宇都宮の近辺の町がが焦土と化したということだ。

祖母は目の前で起きている空襲を姉妹と一緒に逃げ、数日かけて歩いて自宅に戻ったらしい。(この日数が記憶が定かではないけれど)

「あのときの記憶はずっと覚えている。町が全部焼けていた。だから戦争なんて本当にしちゃいけないんだ」

最後にそれだけ言って、戦争の話題は終わった。

なぜ、私が家族を持つタイミングで祖母が話してくれたのかは分からない。ただ、いままで話してこなかった戦争体験を聞けて本当によかったと思っている。もし、祖母が空襲を逃れることができなかったら私は生まれていない。いまでも、思い出すだけで涙が出てくるくらい、やはりリアルな戦争体験というのは語り継いでいかなくちゃいけないのだと思う。

この初めてのリアルな戦争体験は、私が30歳を過ぎてから聞いたものだ。子供のころに聞いていれば、何かが変わっていたかもしれないし、変わらないかもしれない。でも、話を聞くのは大人になってからでも、遅くないと思った。

祖母の話を聞いた後、ウクライナでの戦争が起きた。あのとき感じた感情は祖母から戦争の話を聞いたからこそ湧き上がったものだと思う。

戦争体験者が減ってきている今、もしどこかの機会でお話しを聞けるのであれば、大人になってからでもも遅くはないので、ぜひ聞いてほしい。

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