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Story of eri Pancake(002)

前回からの続き(前回を読まないと話がわからないかも)です。音楽とか歌とは無縁の人生だったわたしに、とつぜん舞い降りた不思議なご縁。みんなが「えりちゃん、歌はね、心だからw」と苦笑交じりに感想をくれた、わたしの人生初の歌のようなものに対して、たったひとりからの意外なメッセージは、こうでした。

「実にいい!上手いとか下手とかいうレベルを超えています。心がある!茶化す人はなんか勘違いしてるね。歌ってこういうものです。商業主義に毒された人間にはこの歌のよさは死んでも分からないね。えりちゃんに歌って言ったのは冷やかしでもなんでもないのよ。私の勘がはたらいたのです。」

正直に言います。本人にとっては、もう戸惑いしかありません。なんとなく褒められているようなニュアンスは伝わりましたけれど、なんだか、着陸の仕方を知らないまま、そこそこ高い位置から、ふわっと空中に放り出された感じ。どっちに向かうの?どこが着地点?これ飛んでるの?それとも、落ちてるの?

そう、飛んでいるのか、落ちているのか。バズ・ライトイヤーなのか、ウッディなのか問題です。少し考えて、とりあえず今の時点での結論としては、「落ちている」でした。なのでいつかローディみたいにヴィジョンのエネルギービームがアーク・リアクターに当たって動力が断たれ、墜落するに違いありません。

地面に叩きつけられる未来しか予想できず、人類初の4回転半を飛ぼうとする前日に氷上の穴にひっかかってしまったようなフワフワ感を抱いて困惑していたわたしは、なぜかそこから不意に、急に、音楽をむさぼり始めたのです。きっと答えが欲しかったんですね。つまり、興味を持ち始めました。

あっという間に「You Tube」のあなたにおすすめ欄は音楽に埋め尽くされ、父から譲り受けた「MacBook Pro」に入っていた「iTunes」のプレイリストは、わたしのPCのSSDにお引越ししました。もしかしたら、人生まだまだこれからという年齢で急逝してしまった父からの「何か」だったかも知れません。

そのプレイリストを再生回数の多い順に何度も聴いているうちに、わたしの中に、父の「何か」が芽生え始めました。今さらですけれど、音楽とか、ノリとか、グルーヴとか、なんだかそんなものが自分の中にどんどん入ってくる感覚が気持ちよくて、くせになって、虜になって、夢中になりました。

それからしばらくは、リズムとハーモニーという「ぬか床」に首まで漬かって過ごす日々が続きました。(はい、ここのくだりのBGMは、Philip Glass の「Einstein On The Beach」です)わたし、いったん興味を持つと吸水ポリマーみたいになります。これはいつものことです。とにかく聴き続けました。

そして、あることを思い出します。そういえば、音楽とは無縁だと思っていたわたしの人生、生い立ち。よく考えたら無縁じゃなかった。幼少のころから、すごいたくさん聴かされていた。そう、家族でのおでかけ中の車の中で、お夕飯のあとの団らんのときに、お休みの日、そこは父の独壇場でした。

何年ぶりかで聴いた父のプレイリストから蘇る子供の頃の様々な記憶。映画と音楽が大好きで、子供を子供扱いしない、まるで友達にすすめるように、次々とおすすめ作品を観せ、聴かせてくれた父のこと。そっか。そうだった。わたしの人生、No Music No Lifeだった。パパありがとう!次回に続きます♫

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