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真のマリアージュとは?「かがわ 酒と食のマリアージュ」第3部 レポート

9/3に行われた香川大学大学院地域マネジメント研究科主催のシンポジウムの第3部に参加しました。たくさんの学びがあったので、記憶が鮮明のうちに、自分勝手にまとめてみます。

私以外のパネリストは、香川の酒、食、観光のスペシャリストの皆さん。今回はファシリーテーターとして、こんな豪華な顔ぶれの中に座らせてもらうことに。

主催者の皆さんの地元愛を感じるとっても素敵なチラシでした。

◆そもそも、マリアージュって?

今回のシンポジウムのテーマは酒と食のマリアージュ。フランス語の「mariage」は、「結婚」「組合せ」を意味する言葉。この意味から転じて、お互いを高め合い、「1+1」が2以上をもたらす組合せ、また、その組合せから生まれる新たな味覚をマリアージュと呼ぶようになりました。

マリアージュで「間違いない」と言われる組合せがが二つあります。一つは似た者同士。一番確実なのは、お酒とお料理の”濃淡”を合わせること。
ヘビーで濃い味付けのお料理にはコクのある日本酒や赤ワイン、さっぱりしたお料理にはスキッと爽やかな端麗辛口の日本酒や白ワイン、のように。もう一つは同じ土地でつくられたもの同士。「地元の食べものには地酒が合う」と言いますよね。同じ環境、気候風土。特に同じ「水」でつくられたお酒と、同じ水で調理した料理の相性は、間違いありませんね。

手前味噌ですが、このシンポジウム前日、飛行機に乗る前に浜松町にある四国のアンテナショップポンテせとうみに寄り、「地元の食べ物には地酒が合う」を実証するべく、「うどんと日本酒」でマリアージュの予行演習。この組合せ、私としては「いける!」と思い、お伝えしてみたところ、香川の皆さんには「えー、本当に?合わないでしょ?」な反応だったことが、面白くもあり、新鮮な驚きでした。

うどんと日本酒、私は合うと思います!

◆香川の日本酒の復権を目指し、常に挑戦をし続けるプロフェッショナル


さて、本題です。最初のスピーカーは1789年創業、香川県琴平町の蔵元、西野金陵の製造課長、杜氏でいらっしゃる酒井史朗さん。酒造り30年以上のキャリアを持っておられ、利き酒選手権で優勝もされているすごい方。これまで、伝統を大事にしつつ、様々な挑戦をされてきたことをお話ししてくださいました。産官学連携で香川県オリジナル酒米「さぬきよいまい」を開発したり、香川県オリジナル酵母「さぬきオリーブ酵母」を開発し、商品化したり。また、裾野を広げるため、缶の日本酒を出してみたり、また永遠のテーマとおっしゃっていた「うどんに合う酒」にチャレンジしたり。さらには日本酒の枠を超え、地元の果実を活かしたリキュールや焼酎も。今までの開発のあれこれを聞いていると、もう本当にお一人でこれだけの開発をやられてきたことにびっくりでした。

お話の中で特に印象に残った、西野金陵さんのお酒達です

酒井さんはご自分に厳しいのが印象的でした。瀬戸内の美味しい魚、特に刺身に合う日本酒をつくりたいんだ、という想い。現状に満足されず、常に高みを目指すマインドがそうさせているんだろうなあ、と思いました。「うどんと酒」については、私の先の発言に、いい意味で驚いてくださり、まだまだあきらめず永遠のテーマ「うどんと酒」を追求していこう! とのご発言も。

◆瀬戸内の食文化の価値を、新たな食提案で表現していくプロフェッショナル


続いてのスピーカーは、香川大学大学院地域マネジメント研究の特命講師  西村美樹先生。西村先生は、香川県の伝統的な食文化をもっともっと大事にし、広げていこうとされている食文化のプロフェッショナル。

西村先生曰く、香川を中心とした瀬戸内の食文化は、ユネスコ無形文化遺産に登録されている「地中海食」と似ていて、まさにその食文化と和食を掛け合わせた文化ともいえるのではないか、と。

瀬戸内海食。素敵ですね。浸透させたいですね。

これはとっても面白いなあ、と思いました。地中海食は私達もイタリア料理などでなじみ深く、健康的なイメージを持っています。瀬戸内海食が定着すれば、その食の楽しみを目的に訪れる国内海外のお客様も増えそうですね。 

西村先生は、その食文化を伝える手段として、香川の伝統的な郷土料理「押し抜き寿司」を「さぬきOSHINUKI寿司」として表現、発信をされるご尽力をされていました。

いつか食べてみたい、さぬきOSHINUKI寿司

これは美味しそうだし、キレイでインスタ映えもしそうですよね!  食べてみたいけど、イベントなどでは作られているものの、まだ商品化などはされていないらしく。今後浸透して、観光客も食べられるようになるといいです。

◆産業・文化・人の魅力を伝える、地元愛に溢れるプロフェッショナル


さて、最後のスピーカーは、せとうち観光専門職短期大学准教授の石床渉先生です。石床先生は、小豆島生まれ。香港など海外での経験もあり、前職では小豆島の観光協会局長を務められていた、瀬戸内と観光のプロフェッショナル。
香川瀬戸内の魅力は、産業・文化・人。このトライアングルが魅力となり、観光としての魅力も増し、発展してきたことを説明していただき、とても納得。私も、小豆島は長年憧れの観光地で、2回訪れたことのある大好きな場所なのですが、どうして心惹きつけられるかの理由がわかった気がしました。産業はうどん、醤油、オリーブ、そうめん、和三盆など。文化は、霊場、歌舞伎、祭り、瀬戸内国際芸術祭など。その後、1番大事な「人」についてのお話がとても印象的でした。香川県は最近、移住者が増えているいう事実。Uターンより、Iターンが多いとのことで、広く県外の方々にその魅力が伝わっている証ですね。

香川の人の魅力。データだけでなく、皆さんのお人柄からも今回体感する出来事たくさんでした。

そして、文化発展の要は様々な地域の名産品ブランドが束になること。複数のブランドの総合力で「地域ブランド」を強くしていくことだ、というお話も説得力ありました。

なぜなら私は旅が終わった後、いつも旅で買ってきたものを食べて余韻に浸るのはもちろん、再度取り寄せなどをして、また違う組み合わせを試したりして「旅を二度愉しむ」ことが大好きだからです。そして「二度愉しむ」ことで、またその地域に行こうという気持ちが高まったりするものです。だから地域ブランド、とっても大切です。

◆なぜ香川県の地酒は消費量が下がっているの?


全てのお話が終わったあと、お三方とディスカッションをしました。私から投げ方させてもらった質問のうち、特に印象的なことを2つ。

このシンポジウムの1部と2部で、香川県の地酒の生産量、消費量とも減少気味という説明があり、なぜだろうと思ったのですが、その理由について、酒井さんにお話を伺いました。

若い人がお酒を飲まなくなったことはもちろんのこと、県民の皆さんが地酒を飲む比率が低いことが原因ではないか、と。同じ四国の高知県では地酒を飲む方の比率が80%を超えているのに、香川県は10%ちょっとだと知り、びっくりしました。せっかくこんなに伝統のある酒蔵さん達が頑張っているのに、地酒を飲まないのはもったいないことです。

飲んでもらうにはどうしたらよいか、については、酒井さんが開発してきたお酒の数々を見ていけばわかる通り。新たな提案をし続けることで、機会をできるだけつくっていこうという努力をされていることには頭が下がります。特に「月白」という吟醸酒が、今までなかなか合わせにくかった新鮮な魚に合う、とのこと。とっても試したくなりました。

◆香川の「人」の魅力って…?

石床さんには、お話の時に出ていた「香川の人の魅力」についてもう少し聞いてみました。移住人口が最近特に上がってきているのが気になったからです。石床さんは、移住人口増の要因は、気候風土の良さ、住みやすさなど環境が優れていることはもちろん、「お遍路文化」に代表されるように、受け入れる側の人たちが、外部から来た人に対して寛容で、あたたかく向かい入れる文化があるからではないか? と。これにはとてもハラオチしました。

ただ、逆に香川の人が、もう少しこうであれば、と思う点を聞いたところ、お三方とも「自分たちの持っているモノ・コトのよさを外に積極的には伝えようとしない傾向があるかもしれない」と。とっても奥ゆかしい県民性なのかもしれないけれど、ちょっともったいないですね。西村先生は、香川の「人」たちの愛情で育った食材をどうやったら最大限伝えることができるか、を考えつくした末に考案したのが「OSHINUKI寿司」だと教えてくださいました。

パネルディスカッションではお聞きしたいことがたくさんで、時間延長してしまいました。

◆それぞれが目指す「真のマリアージュ」とは?

酒井杜氏は「瀬戸内の美味しい新鮮な魚を生で楽しむ際、ベストマリアージュだと思える酒をつくり出したい。」と。今だって、十分それに値するお酒を造っていらっしゃるにもかかわらず、究極のベストを目指す酒井さん、感動でした。
西村先生は、ご自分の提案はもちろん、もっともっと地域や人の魅力を引き出し、それを県内外に魅力的なマリアージュとして発信していくこと。素材をより魅力的にし、伝えていくプロフェッショナルならではの想い、素敵でした。
石床先生は、地域ブランドの更なる提案で、より魅力的なマリアージュを、ということで、例えば島の穴子の美味しさも伝えていきたい、と。

そして、真のマリアージュとは、誰とどこで飲むか? にかかっている、とも。これは本当にその通りですね。石床先生で言えば「小豆島のお祭りのときに、仲間と飲む小豆島のお酒が一番おいしい」と。

マリアージュとは、「料理」と「飲み物」の相性のことを言うけれど、真のマリアージュとはまさに、「誰」と「どこ」でそれを食したり飲んだりするかなんですよね。こんな大事なことを石床先生に教えていただきました。

◆シンポジウム終了後のコンサート

mimikaさんと一緒に踊った思い出。楽しかったなあ。

シンポジウム終了後は、隣の生協・食堂スペース?で、ミニコンサートと試飲販売会がありました。地元で人気のシンガーソングライターmimikaさんの歌声はとても心地よくて、笑顔がとってもかわいくて癒されました。「おいでまぁせ」という香川の魅力たっぷりの踊りありの歌は、皆で踊れる楽しい曲。リーブ酵母の日本酒4種をテイスティングしながらだったので、まさにほろよいコンサート。最後まで最高でした!mimikaさん、ブログでもその様子を発信してくれていましたね。


主催された、香川大学大学院地域マネジメント研究科の皆様。素晴らしい企画、そして気づきと学びを本当にありがとうございました!!

よろしければ、シンポジウムの翌日の香川満喫弾丸ツアーレポートも是非!



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