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また、コミケで一冊も売れなかった。そして抱く運営への疑念。

C99の再来

記念すべきC100でも一冊も売れませんでした。ペーパーすら一枚もはけません。当サークルは2007年夏のC72から2022年夏C100に渡り、皆勤賞で15年間サークル参加しています。詳しい自己紹介は前回の冬コミについて書いた記事をどうぞ。

どうしたら手にとって貰えるか?

コロナ禍開催2回目のコミケですが、多様な同人誌を発表する場ではなくなったと確信しました。コミケで売れるにはどうすればいいのか?サークル側でやるべき事はない、というのが私の結論です。

今回サークル参加した方々がそれぞれ反省し改善点をみつけたり、部数を伸ばす方法を伝授したり……それも経験から基づいたアドバイスとして価値があると思います。しかし、私が取り扱っているのは女性向けのマイナージャンルで、『ファンブック』の名目を逸脱しない範囲で忍んで楽しむ界隈なので公に告知はまずしません。

それでも、コロナ前は売れていたんです。「一体誰が買うんだろう?」という本なのに、ちゃんと売れるのがコミケでした。今思えばカタログしか情報がないのに、一体どうして毎回手にとってもらえていたのか不思議です。

そもそもコミケだから売れていた

コミケは島中こそ面白い。普段SNSで目にしないジャンルの本、通販されていない本、ここコミケでしか頒布していないマイナー本に出会えるのが面白い、という時代は終わりを告げたのでしょう。

今回、女性参加者の少なさに大変驚きました。1日目はジャンプなどいわゆる女性向けが盛り上がる日にもかかわらず、男女比はワンフェスくらいで圧倒的に男性が多かったです。自サークルの本に興味がありそうな人が歩いてません。

常に売れない売れないと記事にしている私の事を、加齢臭プンプンの絵柄で下手くそな漫画を描く、どうしよもない底辺ババアなんだろうと思う方もいると思います。しかし、先の7月に開催された『開いて赤ブー』の某旬ジャンルでは嬉しくも新刊は完売していますし、ナメた活動しているクズ同人屋の負け犬の遠吠えだと思われては困ります。

それなりに活動してそれなりに売れている、ごくごく普通の描き慣れた同人女です。

現在ジャンルコードで言えば『ゲーム』『FC(ジャンプ)』『FC(青年)』『公に出来ない奴』の4ジャンルで活動し、だいたい年間6~10冊新刊を発行しています。Webオンリーにも参加してます。売れる冊数はジャンルによって大きな差があり、旬ジャンルはツイ垢なし・支部告知のみでも飛ぶように売れ、通販も開始0分で注文が入り完売、という実績です。

しかし旬を過ぎると、以前はあんなに「好き!」と言っていた人達も次の沼へ移動する……いつも嘆いているのはこの淋しさについてです。

今回は、イナゴについての記事じゃありませんので話を戻します。(ちなみに、私はイナゴは悪だと思っていません。むしろイナゴは立派な才能だと思っています。)島中はほぼ全く売れないという今のコミケは異常です。以前はちゃんと売れていたんです。まして1冊も売れない、2,3冊売れたら御の字というサークルが続出するなんて事は無かった。

コミケはお祭りです。財布の紐はゆるゆる、「え?こんな本あるの!?」って、希少価値が高い本こそがコミケの醍醐味でした。今、その希少性に価値を見出す人が限りなく少なくなったのでしょう。高価なアーリーチケットを手にした人達が向かうは企業レベルの大手サークル。もちろん以前から壁サークルの列は凄まじかったです。ただ、壁に用のない人も沢山参加していました。とにかく数のパワーが凄かったです。

参加する人の数が絞られ、有料になったコミケが示したものは、多様性に富んだ同人文化ではありません。コミケというお祭りに参加してる俺、壁や企業に汗水垂らしながら並んでる私が席巻し、島はただの移動通路と化した悲しい即売会でした。

運営への不満

運営は幻想をみているのでは?台風が直撃すると言われているのに、一切触れないのは何故でしょう?直近で情報に変更があるかも知れないので公式ツイッターを確認しても、随時ウキウキとしたコミケへ対する期待に溢れたツイートばかり。

コミケが中止になるとは思いません。しかし、せめて『台風の影響により交通網に大きく支障がでる可能性があります。今一度当日の行動の確認、また入念な雨具の用意をお願います』くらいアナウンスしても良かったのでは?と思います。極めつけはこのツイート、

コミケットアピールを熟読しても、恒例のやぐら橋封鎖の記述はありませんでした。そもそも一般参加者は時間指定で入場しています。なのに通常のコミケと同じくやぐら橋を封鎖するとはどういう事?例え今回もやぐら橋封鎖して、一般列を移動させる必要あるとしても、開会が30分遅いのに……本当に8:45に封鎖するの??と混乱しました。

実際、現地でやぐら橋封鎖はありません。案内の方が声を上げて「本日やぐら橋封鎖はありません!明日もありません!やぐら橋は通れます!」と叫んでいました。

公式ツイートは熱中症予防と感染予防の注意喚起メインに、ハレの日連呼。いや、晴れ違いなのは重々承知してますが、台風の影響で滝行のような雨が降っているのに……台風関連の情報共有・注意喚起は一切なし(搬出場所が雨の日パターンになってる旨を伝える程度)行き交うずぶ濡れのヲタク達。熱中症より濡れた身体への負担が心配になりました。

もしかしてずっとbotだったのかな?とか、運営は忙しくてニュース見れないのかな?と思いましたが、前の晩NHKのドキュメント72時間についてツイートしてたから中の人はいて、テレビも観てるから気象状況を確認できるはず。

一日目終了時の『悪天候ではありましたがスタッフの気持ちはハレの日の精神で運営いたしました。』ツイートは流石に呆れました。現刻に応じた必要と思われる案内は一切せず、普段から訂正が目立ちますが、当日も混乱を招く発言をし、大半はコミケに対するキラキラツイートばかり。

コミケは同人誌を発行する者の聖地でした。確かに素晴らしい場でしたが、今は「コミケ教?」と思うような、気持ちの悪い歓喜を白々しく感じます。

同人誌って、何だっけ?

同人誌は、好きで作るものです。もっと宣伝しよう!知名度を上げて、自分のファンを増やそう!売れる為の努力は大いに結構です。しかし、それってもう企業ですよね?わが社の製品の知名度をあげよう世間に認知させよう、営業が大切なのだ!という精神は、本来同人活動において、決して必要ではないはずです。

もちろん知名度を上げれば手に取ってくれる人は増えるので意味がない訳ではありません。ただ、同人誌交流ってなんだっけ?と思うと『売れる努力を怠るから売れなくて当然だ』というのは違うと思います。繰り返しになりますが、1冊も売れないサークルが続出する今のコミケが異常なんです。

本さえあれば、とりあえずOK!なのが即売会だったはず。この様な事態に陥ったコミケは、何を改善すればいいのか?正直わかりません。私は明確に悪い部分なんてなくて、ただただ、これが時代の答えなのだと思います。元を返せば同人活動は、昔からヲタクの中でも決してメジャーなファン活動ではありません。とてもニッチで変態的な趣味だったはずです。

しかし近年ニュースになるほどコミケの知名度は上がり、来場者数もとんでもない事になったので、夢を見てしまったのかも知れません。

今はいつでもどこでも無料で二次創作が読めるし、コアなコラムも山ほど読める時代。同人誌はファンアイテムであり、有名作家の限定本を所持する歓びはあれど、無名の同人屋の本で失敗はしたくない……そんな買い手が大半なのではないでしょうか。

コミケのこれからを見据えて

私は次の冬コミまでサークル参加をして様子を見る事に決めてます。何か変化があるでしょうか?正直、次の冬コミが最後のコミケになるだろうと思っています。

このまま行けば、マイナージャンルにとってコミケは、見本誌提出で発行した本が然るべき場所に保管され資料となり、後世に残される以外に価値はありません。

入場者数を抑えず、従来のコミケに戻った時に再びサークル参加するかな?と考えますが、果たしてマイナー本を求める買い手はどれ程やってくるのか?そもそも、マイナーを扱うサークルはどれ程残っているのか?これから先、コロナ前のコミケが戻ってくるかは疑問です。

同人誌はこれからもどんどん描き続けます。描きたい事が溢れてきて追いつかない程、二次創作が大好きです。好きな事を好きなだけ描ける同人活動が生きがいです。

ただ、コミケは頒布する『場』ではなくなりつつある。コミケという過酷な季節に開催し、ローカルルールの多さでハードルの高いイベント、島中の本を求めて足を運ぶ人が少なくなったのは事実です。

当サークルの場合、マイナー本もWebオンリーになるとちゃんと売れます。なので読みたい人は決してゼロではない。コミケがマイナージャンルも包容する即売会ではなくなっただけです。

コミケで自分の描いた本を直接手に取ってもらえること、相手の目を見てお礼を言えることは、救済でした。

小さな会議室から始まったコミックマーケットのように、私も小さい会議室から、同志を募って『場』を作るしか直接頒布する方法はないんじゃないか?と、夏コミを終えてから考え続けています。

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