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コミケで一冊も売れなかった。

コミケ・イズ・デッド!

2021年12月。

2年ぶりに開催されたコミケ―――は死にました。

二次創作の漫画同人誌を1999年から描いています。

コミケのサークル参加は2007年夏、72から。

以後2021年冬の99まで参加は皆勤。

赤ブーではオンリーで色々発行してます。

赤ブーはメジャージャンルでサークル参加し、コミケではマイナージャンルで参加するというのが当サークルのルーティーンです。

現在コミケで出ているマイナージャンルは2013年から発行を始めました。今年で9年目のマイナージャンル、サークル参加した当初は人が結構居たんです。サークル参加も一般参加もそれなりにいました。マイナーでも、それなりに発行すればそれなりに売れ、完売しました。

コロナ禍初のコミケは『徹夜組が居なくなった』『とても過ごしやすい』など肯定的な感想が圧倒的だと思います。サークルについて触れられたレポも『赤字で厳しいようだ』『しかし人が並ぶ所は並んでいる』というのが大体の見解でした。

サークルの殆どは赤字です。どうもこれが浸透しません。参加費・印刷代・搬入出代・交通費。目に見えて売れているサークル以外、黒字になるのはまず難しいです。なのに何故サークル側ですら「お金じゃない!同人活動は作品への愛と交流だ!」と言い訳がましく叫ぶのか。

同人誌発行は紳士淑女のお遊びです。時間とお金を贅沢に使える度量を持った大人の趣味であり、原動力があるとすればそれは『好き』だけです。

売れた冊数なんてどうでもいい。ただ、自分が「最高だぜ!」と思った事を本にした。それを「私もそれ最高だと思います」と手にとってもらえる。それがコミケでした。今やオールジャンルの即売会はないと言っても良い。赤ブーで大規模なオールジャンル即売会があっても、併設された数々のオンリーに圧倒され、マイナーは本当に居場所のない思いに駆られるのです。

自サークルはマイナージャンルの上に、公に告知が出来ないジャンルを取り扱っています。だからこそ、コミケは有り難かった。今やSNSで新刊の告知をするのは当たり前、普段から落書きや短い漫画を日常的に発表するのも当たり前です。でもそれが出来ないジャンルもある。古の同人活動の様に、現地に行ってのお楽しみ。そんな本を求めて来てくれる人がいる『場』がコミケでした。

単純に、同じものが好きな人が一人も居なかったというのが悲しい。今まではそんな事なかったです。しかしコロナ禍で気づいてしまったのかも知れない、「同人誌なくても別に問題ないな」と。同人誌に取り憑かれていた呪いが解けてしまった人、思いの外居るのかも知れません。

そもそも9年目に突入したマイナージャンル、コンスタントに手に取って貰えたのが奇跡だったのかも知れません。数年前から「コミケ申し込んでも、サークル参加する時はもう別ジャンルで活動している」と、申込みから当日までの長さについて現代的ではないと話題になりました。10年前くらいは、みな一つのジャンルで大体3年位いました。今は1年程が普通でしょうか?旬ジャンルの移り変わりが激し過ぎます。そんなスピードで活動できない、ゆったりと活動するマイナージャンルも受け入れてくれるお祭りがコミケだったのです。

もう20年以上前からまことしやかに言われいていました。

「コミケはもうダメだ。コミケはどうなってしまうんだ」

15年程前にヲタク市場の経済に光が当たりました。そしてここ10年でヲタク市場は分析されマーケティングは成熟したと思います。2022年現在、東京はキャラクターのぬいぐるみとお出かけすること、痛バックを持つことに何の違和感もない都市になりました。むしろ『推し活』と名が付き充実したライフスタイルのように提唱されています。

「誰も知らないこの作品、凄く好きなんだ。人に見向きもされないニッチな作品、でもこれは凄いんです。とても愛せずには居られない。私にとって最高のものなんだ。別に共感してもらわなくても良い。ヲタク気持ち悪いと後ろ指刺されている事もわかっている。それでも、同じものが好きな人と出会えたら……それはとても素敵なんだろうな。」

そう思いながらコソコソと、ヲタクということが不特定多数にバレないように生きてきました。

困った。コロナが明けても、既に旧時代のヲタクのような私達は何処へ行けばいいのでしょうか?コミケも企業や有名人のフォロワーが集う場所になってしまうのでしょうか?

オールジャンル即売会ってなんなんだろう?真の同人ヲタってなんだったんだろう?友人は、それはそれは古より同人誌が大好きな奴らばかりです。もちろん私も同人誌描くのも読むのも大好きマン、会場で歩いている時にいい香りのするサークルがあれば足を止め、全く知らないジャンルでなければ立ち読みし、気に入ったら買ってみる。この楽しさは通販では決して味わえません。でも、ここまでの同人誌大好きマンはあまりお目にかかったことがない。『好きなジャンル』だったり『SNSでよく見る人』だったりの本が手に取りやすい、というのは当たり前ですよね。

コミケで一冊も売れませんでした。

ゲストで描いてもらった友人2名に読んでもらっただけで、未だ私の新刊を読んだ人は見本誌閲覧したコミケスタッフのみ。こんな悲しい事ある?こんな事が続くようだったら、もうコミケに出る理由がなくなってしまいます。一人でひっそり本を描き、検索避けされ会員しか見ることの出来ない鍵付きSNSで通販開始の告知をするのと変わりません。

そもそも二次創作の同人誌はすべからく公の場で売っては駄目でしょう。

でも、そんな考えももう時代に合っていないのかも知れない。すべて、すべてのこだわりが旧時代の固執した老害的な思想であり、時代に淘汰され消えて行くのが自然の摂理なのかも知れません。

「並んでる本を見て、絵が駄目とか面白くなさそうとか全く無い。むしろ何だこのサークルはって感じ。単にこのジャンルをわかる人が居ない。仕方がないよ、ジャンル元が物凄い人気爆発するとかしないと。野球だって9回ツーアウトからなんだよ?もしかしたら奇跡が起こって誰もが知るジャンルになって売れるようになるかも知れない。」

という言葉を新刊のゲストからもらいました。そう、いくらマイナーでも私がジャンルを好きでいる限り、一冊も売れなかった事なんてまだ6回ワンナウトくらいなもので、試合の行方は全くわからない。

こっからだ。丁寧に漫画を描こう。一冊一冊を大切に発行しよう。まだまだ描きたい物語はたくさんある。終わる気がしない。

マイナージャンルの安住の地を探しています。これから先、私達が活躍できる場はあるのでしょうか?それとも「そんなんじゃ売れないよ」と盛者必衰の理の如く消えて行くしかないのでしょうか。描いても、ただ描いただけで一冊も売れないなんて消えたも同然。

でも商売でやっている訳ではない。とても悲しいだけ。商売なら生きる為に稼がなくてはいけないが、趣味なので稼ぐ必要はないのです。好きでいる限り発行は続きます。一冊も売れなくても、次の本の締め切りを調べて、製本してもらい、頒布するだけです。

今はただ、コミケで一冊も売れなかったマイナージャンル同士で新刊交換会がしたい。2年ぶりの冬コミ、気合いの入った新刊だったのでしょう。良いと思ったジャンルなのでしょう。そんな素敵な本が一冊も売れなかった悲しみの同志は居ないでしょうか?私が読むよ。落ち込まないでくれ。頑張ろう、ニッポンのマイナージャンル。

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