アフロディーテ

アフロディーテと暮らしている
彼女といえば、あらゆる想念を物質化できるし
あらゆる物質を想念化できる

安堵30%、期待20%をベースにして
そこに猜疑、嫉妬のエッセンスを
全体としては憂鬱さと焦燥も必要ね

そんなことを言われるので、僕は探しにいく

どんな感情もそれなりには綺麗で
どんな感情もそれなりに醜いのよ
同時にあって、その同等性が発揮される時に輝くの

彼女が「殺す」と言えばそれは「愛している」だし
彼女が「あなたを食べたい」と言えばそれは「もう飽きたの」だし
彼女が「なんて醜いの」と言えばそれは「美しさに見惚れるわ」だし
「顔も見たくない」と言えば「もう少しここに居て」なのだ

打ち消しあって無限になるからだ

信頼と猜疑
安堵と焦燥
誕生と死
愛と嫌悪

すべては同時に存在する
彼女はその無限性を物質化する

彼女は朝陽を受けながら夜の中に居る
月夜の毛布の中で夏の夕暮れに涼む

相反する要素が同時に存在するという矛盾が
何より美しいという

僕は彼女の気にいるようなものを持っていく
彼女の美のためなら、自分の命なんて今すぐ投げ出したいと思うけど
そんなものは無意味だと一笑される

ライラックと青空の割合
人いきれと天気雨
10月の貝殻と後悔
万華鏡の彩と余白
怒りの滑稽さと孤独

僕はそんなものたちを集めて持っていく
何かが彼女の気にいればと思う

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