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愛撫(ショートショート・天使と悪魔シリーズ43話)

【天使のことが大好きすぎる悪魔と、彼に惹かれていく天使の、見た目BL小説群の43話目です。(これまでの話はマガジンをご参照ください)】

 甘い吐息が耳にかかると、体の力が抜けてしまう。がっしりした腕に抱きとめられながら、囁かれる愛にうっとりとする。耳朶を食む唇の感覚に背筋が粟立ち、息が漏れる。
「天使サマ……」
 悪魔の声が、耳から、私の中へ入ってくる。他のあらゆる領域に侵入してくる彼の細い指の代わりに、私の脳そのものを、甘い毒で駄目にする。低く、限りなく優しいその声に、溺れてしまう。
 嘗て、私の全ては主と、主に関する言葉で満たされていた。
 けれど、今は。
 私への想いを連ねる彼の声が、心も体も痺れさせる。上手く働かない思考で、彼への想いばかりが募っていく。全ての神経が、耳に集中している。
 もっと、もっと私を満たして。
 その声で、言葉で、私の心を撫でて。

いただいたサポートは、私の血となり肉となるでしょう。