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出会った時、彼女は全身に包帯を巻いて、ヨタヨタと歩いていた。その翌年は黒いマントに貴族…
振り下ろす手が痺れてきた。何度も何度も同じ動作を繰り返しているから、明日には腕も足も、…
美味しい朝食の匂いで目が覚める。隣に立つ姉さんが、その隣に立つ母さんから食器を受け取り…
噴火山の火口付近で発見された新種の生物は、それまで発見されたどの生物よりも環境に対する…
私の母は仕事が大好きで、朝早くに出勤して夜遅くに帰宅し、娘の私や父の前に姿を現すことが…
勇者は、マネジメント業である。 オレも一人で村周りのモンスター達を相手に技を磨いてい…
王宮の奥には魔が潜む。王族以外には決してその姿を現さず、誤って出逢ってしまった者は、塵も残さず喰われてしまう。一方、王族には予言を施し、王国を繁栄へ導いてきたと言う。 子どもの頃、乳母から聞かされた物語では、魔は恐ろしい獅子の形を取っていた。南洋に浮かぶ小さな島のこと、獅子という動物は見たことも無かったが、要は、魔とは見たことのないような化け物であるということだ。 そんな話は嘘だった。 王は、自分が王位についてから数度目となる予言の宣託に挑みながら思った。目の前に立つ
傷を見ると、掻き毟りたくなる。 それがどんなに些細な擦り傷であっても、かさぶたが出来…
冷たい向い風に、旅人は身を縮めた。この地方に来るのは初めてだが、話に聞いていた通りに寒…
ごちゃごちゃとした人混みの中をかき分けながら、私はとにかく赤色を探した。目当ての人間の…
毎晩、耳元で囁かれる。どんな夢を見ていても途中から必ず同じ展開になり、目覚める寸前、決…
彼女をひと目見た時、灰色で覆われていた世界が鮮やかな色彩に包まれた。視覚だけではない、…
黒タイツがよく似合う子だ。 彼女を初めて見た、入学式の時にそう思った。遅れて違和感が…
男は、高くまで登りすぎた。 気がつけば、自分以外の人間と出逢うことも稀なほどの高度に到達してしまっていた。時の流れに打ち捨てられた超硬度コンクリート製の階層都市、その最上階は、あっけない程、何も無かった。 下層の大気汚染も届かないほどの高層なら、きっとまだ文明社会を維持している人間がいる筈だ、という憶測も虚しく、ただ空に向かって組まれた足場だけが残されていた。誰もいない。 戻ることも考えた。だが、ここまでの長い道のりで疲弊しきった身体と心は、元来た道を戻ることを拒否