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音の繋がり


どうしてママはソロの曲を弾かないの?と
娘に時々聞かれる。

思い出したように
バッハやショパンをさらっては
また楽譜を仕舞い込んでいる様子を見ているのか、
あれ、もう聞こえないなと思っているのか、
まあとにかく心が一瞬でギクッと疼くことを
子供というのは外せないタイミングで言うものだ。


だって時間がないんだもん!と言うのが
いちばんの言い訳。
才能も努力も足りなかったことは事実だけれど、
ソリストとしてご飯を食べていく夢を見たことは
考えてみたら一度もないのだった。
私は誰かと舞台に立つ方が
ひとりきりよりずっと好きだ。
朗読コンサートや歌の伴奏をするうちに
媒体がある方が気持ちよく演奏できると気づき
そして何よりアンサンブル、
室内楽の虜になってしまった。
気持ちを合わせてハーモニーが生まれる時の
何とも言えない喜びの。

数日前もコンサートがあった。
写真家のフレデリック氏が
たくさん撮ってくださった写真を
使わせてもらおう。

プログラムはピアノ4手から始まった。

夫とは人生で一番舞台を共にしているのだから
今や緊張することは殆どない。
ブラームスのハンガリー舞曲を2曲弾いてから
スラブ繋がりでグリンカの悲愴トリオになった。

このトリオは昨年
勤務している音楽学校の講師コンサートのために
結成された。グリンカしない?
と誘ってもらい
昨年は3、4楽章だけを弾いた。
あまりの美しさに
今年は全楽章を何処かで、という話から
この室内楽コンサートが生まれることになった。

マルセイユのオペラ座オーケストラの
主席ファゴット奏者ステファン
私が伴奏者を務めるクラリネットクラスのオディール先生

ファゴットとクラリネットの深く柔らかい音が好きだ。
この素晴らしい音楽家の2人と
縁あって一緒に音楽をできることになって
リハーサル中の私は、いつも夢見心地だ。
なかなか満足のいく演奏ができず
反省点ばかりだが、優しい彼らに救われている。

そして再び連弾。
メンデルスゾーンがクララ・シューマンと弾きたくて
書いたといわれる
アンダンテと華麗なるアレグロは
今までで一番うまくいった。

後半はピアノ、フルート、クラリネットのトリオで
ファリャの恋は魔術師、
サンサーンスのタランテラという
豪華なプログラムで盛り上がった。
クラリネットのオディールも
フルートのデルフィーヌも賑やかで
常に喋っている2人だから
冗談の絶えない夫も混じると
リハーサルはコントのようだ。

ノリノリの3人は気性も似ている?!


翌日、今度はクラリネット試験のリハーサルで会った
オディールは
来年はあれをやろう!これをやろうと
疲れも見せずに張り切っていた。
大人だって
まだまだ出会いたい音楽が
果てしなくあるのだ。

様々な人との出会いで人生はどんどん変わっていく。
音楽も変わっていく。
いつか時間を取ってソロの勉強を再びするようになっても
今友人達から教わっていることが
きっと生きてくるだろう。

思いがけず来てくれた友人から
素敵な薔薇のブーケをいただいた







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