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静かに正確に燃やすこと

先日、あまりピアノを練習してこなかった言い訳に
オリンピックマスコットを学校から
持ち帰ったから、という子がいた。


フリジア帽からできたフリージュ

マスコットって、フリージュのぬいぐるみ?
で、何してたの、そのマスコットと?

と聞くと
それはもういろいろ、と
さぞ大変だったという様子で彼女は話し出した。
一緒におやつを食べたりブランコに乗ったり‥。

あまりにオリジナルな言い訳に
私は笑い出してしまった。

白血球みたい、などと周りの友人達には
不評のフリージュだけど
子供達には人気なのかしらん。

娘も、だんだん可愛く見えてきた、と言っている。


オリンピックにはそこまで興味はないけれど
ものすごく感動したことがあった。 
2008年の夏、私はたまたま帰省していて
実家でのんびりとテレビを見ていた。
その時に金メダルを得た水泳の北島康介選手が
「勇気を持って、ゆっくり行け」と
コーチから言われたと話していたのだ。
スピード勝負の競技で
ゆっくり行けとは興味深い。

勝てる自信がなくては
かけられない言葉だ。

さて今日は、私が伴奏を務める
クラリネットクラスの試験だった。
リハーサルを重ねた甲斐あり
皆なかなか立派に演奏をした。
そのあとに外部からいらしていた審査員の先生が
生徒たちにこう言った。

目標を掲げて闘志を燃やすのは良いことです。
でも、メラメラと怒りのように燃やすのではなく
静かに落ち着いて正確でいることが大切です。
そのためにはゆっくりゆっくり、
自分と向き合って練習する必要があります。

良いこと言うなあと頷きながら
とつぜん北島選手のことを思い出したのだった。

音楽もスポーツも
一回勝負の体験だ。
その一回に今までの全てが出る。

悩んでぶつかって転んで泣いて
それからスクっと立ち上がって
急に冷静になることがある。

自分に足りなかったことを理解して対策を練る。

足りなかったのはスピードではなく
体と頭の使い方、そこについていく熱い感情と
冷静な判断。

失敗が怖くて
ひたすらスピードを上げて練習していた時には
見えなかったことが
転んだ後ではよく見える。

そしたらきっと

勇気を持ってゆっくり行ける、かもしれない。


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